1978年
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第866回 2025年10月9日
リチャード・ドナー監督作品、アメリカ・イギリス映画、ジョン・ウィリアムズ音楽、クリストファー・リーヴ主演、マーゴット・キダー、マーロン・ブランド、ジーン・ハックマン共演、アカデミー賞特別業績賞・作曲賞・音響賞・編集賞、ヒューゴー賞最優秀映像作品賞受賞、144分。
爆破した惑星(クリプトン)から地球にやってきた赤ちゃん(カル・エル)の成長の物語。アメリカの荒野に飛来したのを目撃した老夫婦が、裸の赤ん坊がいるのを連れ帰った。幼児なのにトラックを持ち上げている。夫婦には子どもがいなくて、自分たちの子(クラーク・ケント)として育てた。
かけ離れた能力をもっているが、父親(ジョナサン・ケント)は、力を発揮することで仲間から孤立することを恐れている。機関車よりも早く走ることができたし、地球にやってくる間に、実の父親(ジョー・エル)の準備したプログラムを通じて、あらゆる知識を身につけていた。
何かの目的があって、地球にやってきたのだろうと推測したが、父は何も聞かずに黙って受け入れていた。ときおり送り出した実の父の声が聞こえて、惑星ただひとりの生き残りであることを伝えている。
心臓の悪かった父親が急に亡くなると、どんな超能力があっても命を救うことはできないのだと思い知ることになる。母親(マーサ)と二人になったが、運命に導かれるようにいなか町(スモールヴィル)を離れ、徒歩で北に向かう。氷に閉じ込められた世界に身を置いたあと、空を飛んで大都会(メトロポリス)にやってきた。
通信社(デイリー・プラネット社)に新入社員として勤めることになった。メガネをかけて目立たないようにしているが、編集長(ペリー・ホワイト)の評価は高く、タイプライターを打つ速度に驚きを示している。
気になる女性記者(ロイス・レーン)がいて話しかけるが、風采の上がらない姿であることから、相手にしてもらえない。それでも声をかけエスコートして歩いていると、強盗に出くわした。
銃を突きつけられ、女が勇気を見せたことから発砲された。発射した瞬間に弾を手でつかんでいたので無事だったが、もちろん女の目にはとまっていなかった。強盗は引き金を引いたとき、しまったと思い恐れをなして、逃げ去っていった。
女性記者のことが気になっていて、その後も惹かれて目を向けている。ヘリコプターで取材に出かけるとき、事故でビルの屋上で宙吊りになったのを助けることになる。
このときにはじめて赤いマントの衣装で登場する。地上では通行人がハラハラとしてながめている。飛んできて救い出されると、拍手が起こっていた。このときから彼女が名づけた、スーパーマンの名で知られるようになっていく。
記者は助けられたとき、約束をしてインタビューをしようと思った。スーパーマンは応じて、彼女との待ち合わせの場所に現れた。着飾っていて別のパーティでもあるのかと躊躇したが、自分のためだったのを喜んだ。
質問されて、身長は190センチ、体重は100キロと答えたあとに、生まれた惑星の名を伝えた。運動能力を語り、空を飛ぶことに触れられると、飛んでみようと誘った。
自由の女神を眼下に見ながら、二人で遊泳をする。手が離れると真っ逆さまに落下するスリルも味わって、ロマンチックな気分になっていた。次の日の新聞には一面にその体験談が掲載されていた。
陰謀を企てる悪の組織が、この町を拠点に動いている。首領(レックス・ルーサー)はミサイルを手に入れて世界制覇を企てている。アジトは地下鉄の線路沿いから、さらに地下に伸びる入り口があり広がっていた。
地下組織に乗り込むのに、スーパーマンは錐揉みのようにして、回転しながら地中に入り込んだ。首領は惑星の爆破のことも調べていた。スーパーマンの唯一の弱点である隕石を手に入れて対抗したが、仲間の女の裏切りにあって、警察に引き渡されることになる。
女性記者は情熱を燃やして、事件の究明に向かうが、爆破に巻き込まれて、命を落としてしまう。スーパーマンが駆けつけたときには、埋まった車のなかで絶命していた。このときにも父親の声が聞こえて、どんな能力をもってしても死者を救うことはできないのだと言う。
スーパーマンは、父のことばを制して、娘を生き返らそうと、地球の自転とは逆方向に飛びはじめる。時間がさかのぼり、女は車を走らせていて、顔を合わせることができた。女は最後に新入社員がひょっとすると、スーパーマンではなかったのかと気づくことになった。
第867回 2025年10月10日
ジョン・ギラーミン監督作品、イギリス映画、アガサ・クリスティ原作、原題はDeath on the Nile、ニーノ・ロータ音楽、ピーター・ユスティノフ主演、ミア・ファロー、デヴィッド・ニーヴン、ジョージ・ケネディ、オリヴィア・ハッセー共演、アカデミー賞衣裳デザイン賞受賞 、140分。
ナイル河クルーズに集まった、乗客たちの間に起こった殺人事件を、名探偵(エルキュール・ポワロ)がみごとに解決する物語。殺されたのは財産家の令嬢(リネット)と、そこで働くメイド(ルイーズ)、さらに犯人を知っていると言った老婦人である。
令嬢は新婚旅行でイギリスからやって来ていた。相手は法律家(サイモン)で好青年だった。ながらく屋敷に出入りしていた旧友(ジャクリーン)のフィアンセであり紹介された日に、たがいが一目ぼれをしてしまった。
はじめての出会いは、友が結婚相手だと言って連れてきていて、法律の知識があるので雇用してほしいと頼んだことからだった。令嬢は責任者として決裁をする立場にあり、経営を任せてある役員(アンドリュー)も、サインをもらう必要もあって、エジプト旅行にまで同行していた。
乗客は観光客が大部分で、新婚旅行の二人とその関係者のほかには、富豪の老婦人(ヴァン・スカイラー)と看護師でもある秘書(ミス・バウアーズ)、女性作家(サロメ)とその娘(ロザリー)、左翼活動家(ファーガスン)、医者(ベスナー)、退役軍人(レイス大佐)と探偵がいた。
横取りをされた女は恨みを抱いて、その後も二人に付きまとって、エジプトにまでもついて来ていた。顔を見せると恨みごとを言い続けている。ピラミッドの頂に二人して登ったときにも、どこからともなく姿を現した。クルーズ船にも隠れて乗り込んだはずが、やはり追いかけて乗船していた。
探偵は著名なベルギー人で、退役軍人とは知り合いだった。フランス語を話すのでフランス人だと言われると、いつも間髪を入れずベルギー人だと訂正している。
観光で訪れて偶然に顔を合わせ、二人して殺人事件を解き明かしていく。事件のはじまりは、嫉妬に狂う女が、興奮して隠し持っていた小銃で、もとフィアンセの足を撃ったことからだった。
発砲音に多くの乗客が駆けつけ、医師が乗り合わせていたので、男の手当てをすることになる。医師の部屋に運び込んで寝かせるが、銃を犯行現場に残していたことが気になり、居合わせたひとりが見に行くと銃はなくなっていた。
妻を部屋に残していることが心配になる。ようすを見に行ってもらうと、頭を至近距離で撃たれて死んでいた。壁には血で文字が書かれて、男を撃った女の頭文字(J)だった。銃弾から使った銃も推定され、先のものと同じ口径だとされた。
女への疑いが増すが、興奮状態を鎮めるのにずっと付き添いがいて、アリバイが成立する。探偵は一人ずつ声をかけていくが、誰もが犯行の動機をもっていた。左翼の活動家も漠然としたものではあるが、資産家への憎しみを口にしていた。
次の犯行は令嬢の身の回りの世話をしていたメイドに起こる。喉を鋭利な刃物で切られて殺害されていた。探偵は医者の使用するメスだと推定する。メイドは恋愛相手と結ばれたいと、女主人に援助を願っていたが聞き遂げられないでいた。
相手の男が妻帯者であったことが理由としてあった。女主人を憎んでいたことから、最初の殺人の犯人とも見られていた。実際は犯行を目撃したことで脅しをかけて、金を要求していたのだった。
さらには犯行を目撃したという老婦人が、名乗りをあげると、窓から狙い撃ちのようにして、狙撃されていて、足元には別の銃が落ちていた。女主人の経営担当者の持ち物だった。
探偵は残った乗客を一室に集めて、自分の推理を語りはじめる。驚きの真実は、フィアンセを奪われたのではなかったということだった。狙いは令嬢が保有する財産にあった。妻が死に夫が受け継いだ財産を、二人して手に入れるという計画のもとに練られた、周到なトリックだったのである。
言い逃れができなくなると観念し、二人は愛を確かめあった。女は男の頭を持っていた小銃で撃ち抜くと、自分にも同じようにして、重なるようにして死んでいった。名探偵の鮮やかな推理に敗北を認めたという結末だった。
一人ひとりの動きを再現しながら、事件を解明していく、探偵の論述は興味深い。足を撃たれた夫が、離れている妻の部屋まで行って、どのようにして殺せたのかというトリックに、このミステリーの醍醐味がある。
あわせてギザのピラミッドからはじまり、ナイル河を遡って、カルナック神殿からアブシンベル神殿に向かう、エジプトの至宝をめぐる旅にも酔いしれることになった。
探偵の推理に感動した女性作家が、もっと聞きたいとリクエストすると、オリエント急行でもおもしろい話があると同シリーズの宣伝もしていた。