詩情の画家 西田眞人 一の宮をえがく~こころの旅 第一章

神戸ゆかりの美術館


2018/12/1

 風景画を中心とした萌えるような空気感が素晴らしい。それは陽のあたる場所だけではない。夜の闇から浮かび上がる幻影のような建築物からも、空気感は立ち上がってくる。一の宮シリーズは、立ち込める気配といってもよいのだろうが、目に見えない何かがあり、それを肌で感じ取っている絵だと思う。チラシに使われた神社のたたずまいも大作ではないが、妙に惹かれる光景だ。千と千尋の湯屋に通じるような、生暖かい温もりが宿っている。

 このチラシに誘われての訪問だったが、来てみてはじめて日本画なのだと知った。イギリス風景も多く、繰り返して旅立ち、描き続けてきたようだ。東山魁夷のドイツに対応するかもしれないが、この西洋的感性が一の宮シリーズによって、比較民俗学を深めることができたのだと思う。

 横長画面のパノラマ的な視覚が、風景画を先導するが、神戸の画家にふさわしい構図に見える。神戸市の地図の縦横の比率がこの画面に反映している。それはハーバーランドの夜景に凝縮されてもいるし、対岸からみたニューヨークにもどことなく似ている。同じ視覚で陸から海に目を向けると、鳥居の上半分を横長に切り取るという斬新な一の宮が誕生する。水平線の高さが瀬戸内の同質性を伝え、誰もがその場所を言い当てることができる。

 極め付けは何といっても杉戸絵だろう。樹齢を重ねる杉の地肌をかき分けて神の社が誕生してくる。杉木立の奥に神の気配を感じるのは、余白と化した杉の年輪のせいに違いない。宗達の実験がなければこの効果は生まれない。その意味からは琳派の末裔でもあって、日本画にとってのメインストリームとなっている。


by Masaaki KAMBARA