アルディッティ弦楽四重奏団×小尻健太(ダンス)

音楽堂ヴィルトゥオーゾ・シリーズ 25

2019年12月01日

神奈川県立音楽堂


2019/12/01

 久しぶりの音楽会だった。現代音楽とコンテンポラリーダンスのコラボレーションであるが、興味は舞踊のほうにあった。現代といっても弦楽四重奏というクラシックなスタイルは温存しているし、小尻健太のダンスもバレエの基礎を学んでからの展開なので、基本的には前衛的とはいえ、西洋の伝統上にあることは確かだ。時折見せる華麗なバレエの身のこなしにほっとするが、それよりも私の連想は忍者のような身のこなしにあった。黒ずくめの衣装と地下足袋を思わせる摺足と忍足、さらには腰の低さと、屈伸の強さは、鍛え上げられた日本の武道のそれのようにも見える。西洋で評価されるためには、おのずと無意識のうちに形成された日本のエキゾチズムが売り物になったかもしれない。

 オランダのネザーランドダンスシアターについては、私なりに曲解し、日本美の特性を見つけ出したことがあった。同じく小尻がジリキリアンのもとで評価されたという限りでは、この日本びいきの振付家が、日本人の所作をしっかりと東洋の神秘として受け止めていたことが予想される。キリアンには「かぐや姫」に取材した魅力的な作品がある。

 この日の舞台は音楽堂と名づけられた古風な響きをもち、能楽堂を想起させるものだった。コンサートホールという名称よりも、前衛芸術との出会いには、フィット感が得られたような気がした。もっと言えば能舞台との出会いも、コンテンポラリーダンスの前衛を考えた場合、あながち不自然ではないような気がする。東西の枠組みを超えた、ダンスの可能性に思いを馳せてみた。


by Masaaki KAMBARA