カンパニーXY with ラシッド・ウランダン『Möbius/メビウス』

2022年10月27日(木)19:00

愛知県芸術劇場 大ホール


2022/10/27

 円環運動とジャンプを基本とした、ダンスというよりも体操に近いものだったと思う。サーカスというには華やかさと悲哀に欠けるか。エンタメに徹するには道化師に見立てられるキャラクターが必要で、肩透かしの演技や間の取りかたが笑いを誘うものとなっていたはずだ。

 それがサーカスがもつアートとしての側面であり、そこに多くの画家や映画監督が、これまで目をつけてきたものだった。比べると総勢18名のダンサーはみなまじめで、力の限り自身の能力を出し切っている。そのパフォーマンスに打ち込む姿勢は前向きで、感動をよぶものではあるが、何か余裕がなく、教育的すぎて、ものたりなさが残ったかもしれない。

 小学生の団体鑑賞には適しても、アートに潜む毒を求めると冗長に見えるふしもある。サーカスを期待するものと、ヌーヴェルダンスを期待するものをともに抱き込もうとする新基軸ではあるのだが、まだ未分野が整理しきれていないという印象を残した。

 舞踊が体操なのか芸術なのかという既成の問いは、体操に対して新体操が生まれたが、ときに体操のほうが新体操よりも、芸術的な場合もある。多様化する芸術を背景として、新たな方向を模索しているのだとは思うが、今後のさらなるカンパニーの誕生を待って、止揚され活性化されてゆくのだろう。シルクドソレイユは今ではポピュラーになりすぎたが、先行する興味深い事例だっただろう。

 薄暗い舞台上で跳躍するよりも、天空に向けて飛び立つパンフレットのイメージを見ながら芸術美を超えた健康美のことを考えた。地をはうような舞踏の閉鎖性をアートの本質と考えていたものにとって、この跳躍の高さは奇跡として目に映る。かつてニジンスキーはどのくらい跳躍していたのだろうかと、ふと思った。舞踊の王道はたぶんこちらのほうにある。


by Masaaki Kambara