蜷川実花写真展 UTAGE 京都花街の夢

2018年4月14日(土)~ 5月13日(月)

美術館「えき」KYOTO


2018/5/11

 京都らしく花街を写すというのは、京都にとっても、写真家にとっても、必要不可欠なもので、両者の利便が折り合ったところに「うたげ」が誕生した。ここでしか見られないものでありながら、一般の観光客では足を踏み込めない世界を写し出す。写真というメディアにしかできない特性を精一杯発揮したという点で、この企画ははじめからすでに成功は予想できている。

 個々の作品を超えて、会場構成が際立っている。メリハリのある色彩の変化は四季に対応している。写真である限りは、そこに至るまでに一年以上はかけているということだ。壁面全体を壁紙のように引き伸ばされたイメージカラーが、四季の移ろいを表現する。紅葉の秋の色調が、雪の散らつく冬の京都へと変化する。それに伴ってクローズアップされた舞妓さんの顔の表情に、微妙な変化がもたらされている。夏ならば眩しいような蒸し暑い光を遮ろうとするまなざしであってもいい。ともに京の風物詩を語るものだ。昔ながらの日本の四季を観光写真のような世俗的感覚と、強烈なアーティストとしての個性がぶつかることによって視覚化してみせる。

 前回高松で見た蜷川実花展の分類で言えば、有名女優をめざす新人の野望に属している。可憐さとしたたかさがみなぎって接しあい、大女優なら野暮になるはずがところを、無名性が見事に美に結晶している。


by Masaaki KAMBARA