クリムト展 ウィーンと日本1900

2019年07月23日~10月14日

豊田市美術館


2019/8/6

 朝一番のクリムトだった。意外とさわやかなのに驚く。死や眠りと抱き合わされているはずなのに、覚醒へと向かう希望の光が見えるということか。私生活という展示コーナーが設定されていて、生涯結婚することはなかったが、18人の子どもがいたという衝撃的な説明文が目に飛び込んでくる。スキャンダラスな書き方に辟易とするが、さわやかさはここに原因があるのかと、思いかえす。それはドロドロとした人間関係や訴訟を回避できたということで、ある意味でモラリストの側面を思い浮かべる。

 30歳代なかばで風景にめざめる。人間にちょっと疲れたという頃か。同時代の風景画家たちの作品も並ぶが、クリムトの風景は遠近感がなく近視眼的なのが特徴だ。原始人の空間恐怖にも似て、空白を嫌い、奥ゆきには向かわず、這うようにして四方に拡散して広がっていく。蔓草が壁一面に広がるのと似ている。植物装飾という点では、時代の潮流であるアール・ヌーヴォーの美意識に従っている。


by Masaaki KAMBARA