現代絵画の図像学

by Masaaki Kambara

 ここで取り上げる作家は、自然のさまざまな営みと対応している。自然の恵みはリンゴを実らせたが、一方でセザンヌという画家を生んだ。ゴッホも同じでオランダの土からスタートして光を求めて南下し、はては炎となったのである。この系譜は図像学として定着し現代アートにまで引き継がれている。風景画から始まって静物画で終わる絵画理念の歴史として、ゴッホから始まってセザンヌに続く同時代史として、太陽から始まってリンゴで終わる大自然の恵みと循環の話でもあり、四大元素から陰陽五行道、七つの惑星をめぐる占星術の運行にもなっている。その場合「壁」や「窓」といった建築的要素は重要である。それらが自然との接点を持つからである。そして絵画とは原始の洞窟壁画以来、ルネサンスの遠近法を経由して、近現代の絵画を通じてまさに壁や窓であった。ときには窓や壁そのものを描こうとさえした。ものに託されたイメージ表現の意味をさぐりたい。

1 :風景の変容

2 :フィンセント・ファン・ゴッホの「太陽」…Vincent van Gogh(1853-90)

3 :ゲルハルト・リヒターの「光」…Gerhard Richter(1932-)

4 :サイ・コッキョウの「火」…蔡國強(1957-)

5 :ビル・ヴィオラの「水」…Bill Viola(1951-)

6 :マーク・ロスコの「靄(もや)」…Mark Rothko(1903-70)

7 :ジェームス・タレルの「空」…James Turrell(1943-)

8 :カワマタ・タダシの「板」…川俣 正(1953-)

9 :リーウーハンの「鉄」と「石」…李 禹煥(1936-)

10:デレク・ジャーマンの「庭」…Derek Jarman(1942-94)

11:フランシス・ベーコンの「部屋」…Francis Bacon(1909-92)

12:ルネ・マグリットの「窓」…René Magritte(1898-1967)

13:ダミアン・ハーストの「剥製」…Damien Hirst(1965-)

14:クリストの「梱包」…Christo(1935-2020)

15:ポール・セザンヌの「リンゴ」…Paul Cézanne(1839-1906)