つながる琳派スピリット 神坂雪佳

2022年10月29日(土)~12月18日(日)

パナソニック汐留美術館


2022/10/31

カタツムリをじっと見つめている子犬がいる。かわいいはずだが、見ようを変えれば、大きな口を開けたモンスターに見えてくる。空を飛ぶ金魚が、真正面からとらえられた縦長の軸装がある。金魚はみごとに空中を浮遊している。旧来の日本画の見かけはとるが、あっと驚くしかけがなされている。この日本画家はグラフィックデザインの仕事からはじめるが、そこで培われた装飾の過多は、美術史を先行させると、京都に根づいた琳派の意匠を継承しているようにみえる。

 神坂雪佳(1866-1942)の作品だけではなく、宗達、光琳、抱一から中村芳中、鈴木其一に続く琳派が展示されて、驚嘆の系譜をたどろうとするが、私たちはもっと雪佳の作品をみたいと思う。ある一定の数がそろわないと一流の画家とはみなされない。展覧会を成立させるのがその条件となる。神坂雪佳について詳しいことは知らないが、気になるひとりとなった。

近年、鈴木其一や中村芳中をおもしろく思いはじめた流れに属するのだろうが、琳派のもつ普遍性と現代性のゆえなのだろう。江戸時代に先立つ時代から一貫して流れる美意識であり、文人画の世捨人的性格とは異なった庶民の洒脱な気楽さを背景にした気やすさに、ふと生きがいを感じるためなのだろう。その意味では後者は死にがいを感じさせるものだったのかもしれない。


by Masaaki Kambara