「慶雲-行く年来る年-

華鴒大塚美術館

コレクション展

「慶雲-行く年来る年-

2020/11/28()2021/2/7()

華鴒大塚美術館


 井原鉄道沿いの三つの美術館は、いつも一日でめぐることにしている。今回は半日しかなく、時刻表をにらみながらそれぞれで一時間の滞在時間を確保するには、あまりにも本数が少ない。唯一の選択となったのはお昼に福山を立ち、子守唄の里高屋から矢掛に向かい井原に引き返して福山に戻るというコースだった。


 見たいと思っていた児玉知己展は終了しており、常設展だけだったが、美術館というよりも家屋といったほうがよい趣きのある展示室と庭園の散策は、日常の装いをとどめて心地よい。絵が絵画として自己主張せず、壁に埋没する一体化は、西洋文化に対抗して、風流を前面に持ち出しての美意識だと気づくことになる。それを季節感と呼ぶことで、今回の「慶雲」を思うセレクションとなり、日本画という茶掛け文化の源流に触れることができた。


 丑年にまつわるコレクションの選択が続くなか目にとまったのが、池田遙邨だった。題名には「春日参道の雪」とあるが、雪のなか七つ並んだ灯籠がいい。頼りなげでしっかりと立っていないのが、必ずひとりはいる。軍隊の行進だとすればピンタに値するが、このリベラリズムが私は好きだ。



by Masaaki Kambara