抽象世界

2019年05月25日~08月04日

国立国際美術館


2019/8/3

 すでに古めかしい形式となってしまったタブローとしての抽象絵画の現況を伝える企画である。一般にはほとんどなじみのない作家名で、まったく知らないと自己嫌悪にさえ陥ってしまう。これを日本人の作家にあてはめれば、どのようなランキングになるのかさえわからない。ハードエッジやカラーフィールドペインティングという名でひとくくりにするのが、適切かどうかもわからない。一作家につき数点のセレクションである、できるだけ傾向の異なるものを集めたようで、それがかえって作風をわかりにくくしているような気もする。

 何人か日本の作家が混じると、導入という意味では、意義深かったと思う。同じ傾向を示す日本人作家に心当たりはある。壁面に絵画を掛けるという現代では古典的となった展示法を温存して、ここでは絵画という小宇宙の自律性を認めなければならないだろう。その場限りのインスタレーションが隆盛の今日的な制作動向と比べると、地味な印象が否めない。小さくまとまってしまっていて、現在各地で行われている芸術祭向きの作品とは、一線を画している。しかし芸術が打ち上げ花火ではないという、まじめくさったスタンスはきっと必要なはずで、それが現代アートを支える支柱となるものだろう。たぶん入場者は限定的だったと思うが、エールを送っておきたい。


by Masaaki KAMBARA