倉敷・大原家伝来 浦上玉堂コレクション 受贈記念特別展示

2022年7月16日〜8月28日

岡山県立美術館


2022/08/27

 浦上玉堂のコレクションがまとめて大原家から県立美術館に寄贈されたのを記念しての、お披露目の展覧会である。本来なら大原美術館で定期的に展示替えをして見せるのがすじだろうが、玉堂だけを洋画と並べるわけにもいかず、近世絵画の充実している県美が引き継ぐという結果をみたのだと予想される。一堂に会するとさすがに地元ならではの充実したコレクションだと関心する。地元が生んだ巨匠の作品を流出させずにとどめ置くのは、地元のコレクターと公立美術館の使命なのだろう。

 しかも競合しあって価格を釣り上げないように、縄張りを築くのも生活の知恵で、暗黙の了解事項となっているようだ。成功した企業グループがこの縄張りに分け入って棲み分けようとする。美術品はかつての茶道具と同じで、文化に向ける趣味人の風格を付加して、ステータスとして権力者を印象づけてくれるものだ。岡山でいえば竹久夢二は両備グループが、国吉康雄は福武グループが一手に引き受けている。西洋に目が向いていたはずの大原家のもうひとつの本音が見えてくる。

 パトロンではなく作家の側から見てみると、これからもパトロンを得たがるアーティストは、伝統的な美術工芸の分野だけでなく、現代アートでも一対一対応が繰り返されていくにちがいない。同郷のよしみというのが、最も自然なつながりを築く、無理のない選択肢だろう。でも本当はもっとリベラルなものであってほしい。後期高齢者のなかには履歴をみると、まだ満州生まれという記載が残っている。彼らは故郷を喪失していることで、どこの県立美術館も目を向けてくれなかったが、確実にインターナショナルな視点を勝ち取ることができた。


by Masaaki Kambara