名都美術館名品展 優艶なる日本画

20201017日~20201213

笠岡市立竹喬美術館


 上村松園がずらりと並んでいる。「人生の花」を先頭にして一人立ち美人図が続く。花嫁とその母のようだが、私の目には男女の道行のように見えてしまう。娘の伏し目が哀しみを宿しているように思えるからだ。花嫁姿は必ずしも喜ばしいことではない。ことに花嫁になりそびれた松園が描くと、真実味を増してくる。


 美人画だけかとみくびっていた展覧会だが、ひとまとまりの風景画が続き、ほっとする。風景画は網羅的で作家の数を増やしてバラエティに飛んでいる。美人画から風景画に推移するのを見ると、江戸で終わったはずの浮世絵の展開と見えなくもない。清楚な響きの中に、肉筆画のもつ濃厚な蘭潤が匂い立つ。


 美人画は作家を四人に絞り込んでボリュームを感じさせる。上村松園、伊藤小坡、伊東深水、鏑木清方。男の描く美人画と女の描く美人画の違い。京女と江戸の女の比較などに思いを馳せるよい機会となった。個人的な好みでは鈴木春信から小村雪岱に続く初々しさをよしとする。


 宮尾登美子が描く松園をはじめとした女主人公たちと比較してみたくなる。先般、東京国立近代美術館で見た鏑木清方の「築地明石町」は、きりりとしたたたずまいを残し、確かに江戸情緒の女だった。松園の描くりりしさとは少し異なるようだ。どちらが気が強いだろうかなどと考えてみる。それが江戸と京の違いなのか、男女の目線の差なのかは定かでない。



by Masaaki Kambara