虫展 —デザインのお手本

2019年07月19日~2019年11月04日

21_21 DESIGN SIGHT


2019/7/21

 夏休み中の企画としては成功している。単純に考えれば、デザインというよりも、自然観察への興味を誘う理系の科学展である。デザインの目を通すことで、科学を学ぶ楽しさが、アートと不可分の関係にあることを知る。昆虫は観察するだけで楽しい。巨大化すると恐ろしくもあるが、生命体のフォルムは、自然と人を惹きつけてやまない。定規とコンパスで描かれたデザインとは対極にあるが、デザインも実はこの生命曲線から出発する必要があるというメッセージが聞こえる。

 虫を裏返して足をバタバタさせて起き上がらせるという、考えようによれば残酷な映像作品があった。下地がざらついている場合、ツルツルに磨かれている場合など、さまざまなシチュエーションを変えての実験報告なのだが、見入ってしまう。コンクリートや布やティッシュペーパーの上など10種類以上の下地が用意され、昆虫が戻るまでの秒数が記録される。人間誰もがもつサディスティックな感情がむき出しにされた側面だろうと思う。

 さまざまな昆虫を標本にしてガラスケースで見せるというオーソドックスな展示もある。いわば死体であるにもかかわらず、目を近づけて見入ってしまう。逆に細部を拡大して壁面いっぱいに投影した映像作品では、動きを伴うことで静止した博物館的世界観から脱して、静から動への変貌を遂げ、知られざる神秘の森へと分入って行く。犬を使った擬態化の作例も、あり得る話として想像力を膨らませることになった。わくわく感のある企画だった。


by Masaaki KAMBARA