入城400年記念 広島浅野家の至宝—よみがえる大名文化—

2019年09月10日~10月20日

広島県立美術館


2019/10/6

 一国一城の大名家が所蔵した美術品の全貌を探ろうとする意欲が伝わってくる。中国絵画の多くは、今見ると無残にも真っ黒だが、コレクションが出発した17世紀でも、すでに数百年経ってもいたはずだ。数多く収集されているのは、最高峰のステータスを持ったものとして、中国絵画が評価されていたことがよくわかる。そんな中で、明るい画面をもった16世紀の雪舟が輝きを放つ。中国に学んだ日本美の結晶であり、当時としては最先端の現代絵画であったはずだ。その後、狩野正信から元信へと、正統派の武家のコレクションが続いていく。

 浅野家の家紋の入った婚礼道具も並ぶが、工芸の粋を感じさせる調度の極みである。先日岡山の吉兆庵で、贅沢をさせて富を蓄えさせない江戸幕府の政策の賢を知った。これまでとは違う衣裳の見方ができるようになり、日本の工芸文化のねじれた構造を、興味深く見直すことになる。浅野家コレクションは、今は散逸している。所蔵先を見ると徳川美術館であったり、MOA美術館であったり、大和文華館であったり、五島、出光、野村、逸翁と続く、日本でも有数の古美術の老舗に収まっている。大名文化の見直しは旧藩を枠組みとして、いま地方美術館のブームとなっているようだ。昨年は松平不昧の名が、島根県を発信地として、全国に轟いていた。広島県では広島だけでなく、福山でも同様の企画がある。


by Masaaki KAMBARA