Viva Video! 久保田成子展

2021年06月29日~09月23日

国立国際美術館


 ヴィデオ彫刻という不思議なジャンルをまとめて見る機会をえた。夫であるナムジュンパイクのヴィデオ作品は、これまでもよくみていた。ただものではないという実験映像のルーツを確認したという思いだ。「セクシャルヒーリング」と題したパイクが脳梗塞でたおれ、車椅子生活のようすを写したヴィデオ作品がある。カメラの角度や移動を通して、深刻ではない回復へと向かう安堵が、ユーモラスにとらえられている。パイクがちょっかいを出すいたずらは、今ではセクハラで大騒ぎになる証拠映像だが、おおらかな伴侶の目を通して、単なるリハビリの記録を超えるものになっている。

 マルセルデュシャンとジョンケージがチェスをしている。写し出された顔を見ているだけで、教祖たるオーラを感じる。パイクも同じだけ伝説的名称だが、人懐っこい、とぼけた東洋人のおおらかさは西洋の哲人とは対極にあるものだ。

 女性のアーティストの発掘は、21世紀の課題だろう。半数が女性だという限りでは、同じだけの作家がいるはずだ。オノヨーコにしても、ジョンレノンが長生きしていれば、その背後に隠れていたかもしれない。少なくとも今どきの女性よりも古いタイプの人だっただろう。久保田成子もナムジュンパイクとのユニットだとすれば、クリストのように単一名からなるユニットであるべきだっただろう。


by Masaaki Kambara