ラウル・デュフィ展 —絵画とテキスタイル・デザイン—

2019年10月05日~12月15日

パナソニック汐留美術館


2019/12/1

 ファブリックに着眼したもうひとつのデュフィの魅力が浮き彫りにされている。画家が余技としておこなった装飾の仕事かもしれないが、現代の眼はこちらの方を、おもしろがってみせる。花を大胆に散りばめた服飾デザインは、ポールポワレの力を借りて、ファッショナブルな時代の感性を切り出している。マリメッコに劣らず大胆だが、もちろんこちらの方が早く、1910年代の話である。

 デュフィはフォーヴィスムの画家だが、マチスやルオーやブラマンクの名に隠れて、これまで第二走者に甘んじていたように思う。それがファブリックの分野を加えることて、一躍スターダムに踊り出た。デュフィ独特の躍動するオーケストラのリズム感は、絵画においてもフォーヴを代表するものだが、絵画よりも音楽に近く、音符を散りばめたような装飾的感覚が、服飾の分野で身を結んだということだろう。

 絹地にプリントされた光沢は、絵画では実現できない美のデリケートな一瞬をとらえている。花や昆虫が多い文様の中に、奇妙にも蚕をモチーフにしたパターンがある。美しいとも思えないうごめくような蚕のグロテスクが、ユーモアをともなって思わず納得してしまうのは、絹地の輝きに魅せられた時だ。確かにこのグロテスク文様が、絹糸の美に結晶するのである。


by Masaaki KAMBARA