開館20周年記念展 

黄昏の絵画たち 近代絵画に描かれた夕日・夕景

2019年09月04日~11月04日

島根県立美術館


2019/10/7

 宍道湖を望む美術館にぴったりの企画展だった。セレクションもよくできている。解説も通り一遍ではなく、夕日に関連した事項を盛り込んでいる。油彩画がそろわないのを版画で間に合わせるのは、苦肉の策としては致し方ない。バルビゾン派に先立って、クロードロランとターナー、コンスタブルを加えるのは適切だ。ロランの夕景は古代ローマのノスタルジーを下敷きにして、西洋絵画のルーツとなるものだ。山梨県立美術館がたまたまロランを所蔵していたのが功を奏した。国内を探し回ると、意外と見つかるものだ。国内だけでこのテーマを組み立てるのはパズルゲームのようなおもしろさがある。

 西洋の系譜をたどることは、日本の美意識形成にとっても必須のことだ。ことにバルビゾン派、ことにミレー好きの日本人にとって、牧歌のイメージは敬虔な信仰心があるわけでもないのに、白樺派以来疑いもなく受容してきた。落穂拾いや晩鐘の夕景は、祈りに仮託して西洋への憧憬を加速してきた。日本の西洋画のはじまりがフォンタネージからだということは、明治初年から西洋との同一化を、国をあげて推進してきたあかしでもあった。

 フォンタネージが今回の展示ではバルビゾン派に並べられていた。確かにこのイタリア画家の作風は、バルビゾン派に一致している。並んでいても違和感がないのでよくわかった。ふつうはこんなところにフォンタネージは並ばないので、比べることなどほとんどないだろう。小山正太郎の夕景にしても、この師から来るものだろうし、日本の近代西洋画の起点でもあるのだ。ミレー好きの日本人につながるものだろうと思う。


by Masaaki KAMBARA