ハンガリーの写実画家 サンドルフィ展 ー 魂と肉体のリアリズム ー

2019年09月05日~11月17日

ホキ美術館


2019/9/28

 サンドルフィという初めて聞く名に興味を持ったが、大作をまとまって見ることができたのは収穫ではあるが、写実絵画としての質よりも、テーマのもつ衝撃度の方が、目に飛び込んできた。写実性という点では、細部描写にこだわるのではなくて、バロック絵画のぼかしの技法に近く、鑑賞者の想像力に委ねる部分も多い。男性のやせ細った半裸の身体が絵筆やパレットと組み合わされて、現代風の味付けがされているが、基本的には聖セバスティアヌスの殉教図と見てよいだろう。絵筆は不自然に飛び跳ねて、男の胸に突き刺さっている。

 女性美を讃えるものではなく、肉体を裂いばむ自虐美という方がよいもので、痛々しげな中世ゴシックの精神が、バロックの技法を得て、現代に蘇ったように見える。ハンガリー出身ということだが、イタリアやスペイン、ことにカラヴァッジォを彷彿とさせる悲劇性が、歪められた悲痛な表情の端々に顔を出している。


by Masaaki KAMBARA