人、神、自然—ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界—

2019年11月06日~2020年02月09日 

東京国立博物館


2019/11/30

 古代のもつ神秘に満ちた驚異をまるごとモノが実証してくれる。黄金に彩られている限りは、人間の果てしない欲望しか見えてはこないが、それを加工して細部にまで人智を響かせることで、人類の存在証明とする。エジプトやギリシャは見慣れた感があるが、改めて見直すと驚異に満ちている。それらと決して引けを取らない中南米やアフリカの造形が、見るのも忌み嫌うように、畏敬の念をもって迫ってくるのが印象的だ。

 併設の正倉院展を凌駕するエネルギーの源は、カタールという王国のもつ神秘に由来するものかもしれない。もちろん王のコレクションだから、財力を注ぎ込んだという側面はある。石油王なら石油が黄金やダイヤや美術品に化けたということになるだろう。しかしここには単なる道楽を超えた格調があるように見える。そこには地域や時代は異なっても、人類の文化に対する敬意の姿勢がうかがわれる。

 ギリシャと同等にアフリカの古代が並ぶ。そこには優劣はなく、これまで教え込まれてきた西洋流の教科書的知識を嘲笑うような確信の響きがある。たぶんこれらは民族学博物館の領域になるのだろうが、それは美術館以上に芸術的だ。ポスターや掲示物で仮面のように並べられた顔は、実際には彫刻である場合が多いが、オリジナルを超えて生々しく、民族の顔に刻み込まれた威厳を伝えている。


by Masaaki KAMBARA