THE ドラえもん展 OKAYAMA 2022

2022年04月02日~05月22日

岡山県立美術館


 マンガやアニメの展覧会が増えているので、これもまた同様の指向性をもつものだと思っていたがちがっていた。「あなたのドラえもんを」という問いかけに答えた28人の現代アーティストが、ここでは選ばれている。問いかけに答えてそれぞれのドラえもんを制作しようというのである。選ばれた作家の多くは著名人であり、この人選にはだれもが感じ取ることのできる共通点があるように思われる。ではそれはいったい何なのだろうか。ひとことでいえば、ドラえもんに反応を示したという点だろう。ドラえもん展の前にTHEがついた展覧会であるのに注目すると、それがあるために、ある層の観客をがっかりさせるものにもなっただろう。ここにはホンモノのドラえもんがいないのだ。

 現代アートだけでは集客力が期待できないので、ドラえもんにたよったというみかたもできるだろうが、キャラクターを通じてアートを展開させるネオポップの美術動向ととれば、美術史の時流に乗ったものである。この企画に賛同したアーティストは、荒っぽくいえば、ネオポップの運動でくくることが可能かもしれない。村上隆奈良美智森村泰昌を筆頭に、少し傾向がちがう会田誠山口晃、さらには写真家の蜷川実花梅佳代といった著名作家の一括は、マスコミに浸透した美術界の直木賞作家のつどいのように見えてくる。

 それならばこれとは別に芥川賞作家の一括も可能であり、営利企業ならやりたがらないが、美術の健全な発展には欠かせない使命も存在するはずだ。それはポップとは対局にある新世紀の実験となるもので、ポスト・ネオポップを模索することになる。ドラえもんに見向きもしない作家もアートの世界には多くいたはずだ。世代論でいえばドラえもんはかなり長い時代を築き上げている。別の分類でいえば、ゴジラやウルトラマン、あるいはちびまる子ちゃん、クレヨンしんちゃんに育てられた世代もあるだろうが、それもまた世代の異なったネオポップの予備軍だという点では大差ないだろう。そうではなくそんなキャラクターとは無縁な人がいるということだ。アートを一元化しないためにも、この視点は必要だろう。

 それにしてもドラえもんの完璧なまでの造形性を前にすれば、肩をすかせて逃げるしかないというのが本音かもしれない。ドラえもんをコピーするか、さもなければ後ろ姿を追い続けるか、背景だけを変えて歩かせてみせるか、見て見ぬふりをして悪あがきをするか。ドラえもんにまつわるさまざまなアプローチに接したあと思い起こしてみると、雪に埋もれて顔だけ出してドラえもんの歌をやけくそのようにうたっていた鴻池朋子の映像が、なぜか心に残っていた。


by Masaaki Kambara