シモーヌシニョレ

a sentimental diary of the movie

第22回 2022年11月12

肉体の冠1952

 アランドロンの種が尽きたので、次に「燃えつきた納屋」1973で共演をしていたシモーヌ・シニョレをいくつか見ることにした。最初は「肉体の冠」1952、シニョレ主演の映画。ヤクザの女に恋した大工の悲劇。女が誘いをかけ男がその気になる。力に自信があることからひとりで組織にいどむ。最後は悲惨な最後となるが、セルジュレジアニは美男ではないが、存在感が際立っている。冒険者たちでも謎めいた男を演じていた。美女に出会ったが最後という話である。

 名監督は名優によって育てられることがよくある。もちろん監督が育て上げた場合が多いのだが、ときに夢中になると女優の場合は妻となる。日本の場合も典型的なのが松竹ヌーヴェルバーグで知られる三監督で、ともに生涯連れ添うことになる。離婚をしてしまう場合のほうが多いように思うので、この場合稀有な例かもしれない。男の場合は黒澤明と三船敏郎は、ときに仲違いをするが密接に関係している。マルセルカルネの映画に接してシモーヌシニョレに魅了された。銀幕の美女は時代を超えて、今も若いままだ。

 映画は監督で見るものと決めていたが、このところ銀幕の美女に恋をしている。若い頃に夢中になったのが、ネバダスミスドクトルジバゴわらの犬俺たちに明日はないなどで一目惚れをした女優さんたちだった。なんていう名前なのかを調べて他の出演作を物色した覚えがある。今のようにビデオのある時代ではなかったので、初恋のままやがて忘れてしまった。今ではなんとかビデオを見つけだして会いたいと思ってしまう。こちらは手の届きそうな年齢だが、それでも年齢差をこえている。シニョレだけなくバーグマンやガルボもまとめて見てゆきたい。私の親の世代の美女たちである。

第23回 2022年11月13

嘆きのテレーズ1952

 ゾラ原作マルセルカルネ監督。怖い話だった。そしてよくできた映画だった。主役のシモーヌシニョレの演技がきわだっている。日本に置き直せば、左幸子に当たりそうだ。男に言い寄られるが、夫を裏切れない。無表情な冷たい女だが、病弱の夫の家には恩があり、愛されて嫁ぎ、愛はないまま夫婦生活を送っていた。そこに夫の知り合いのトラック運転手が現れ、言い寄ってくる。その情熱を受け入れていつの間にか恋に発展する。暴走して夫を列車から突き落とし殺人者となってしまう。そこまでしなくてもという女に対して、男は同犯だと言って亀裂が生じるが、反抗を見ていたという退役軍人の登場で、ふたりは団結する。夫の死が事故で処理されまとまった金が手に入り、ゆすっていた軍人に渡した直後、交通事故でこの男は死んでしまう。男は逆に殺されることを恐れて、手紙を宿の女に託していた。自分が帰ってこなかったら投函してくれという約束どおり、ポストに向かい集配に間に合ったところで映画は終わる。この余韻はアメリカにはない、ヨーロッパ映画の装いとなるものだろう。

第24回 2022年11月15

悪魔のような女1955

 現代のフランス語では複数になっているので、正確には女たちである。二人の女が共謀して人殺しをするのだが、プールに沈めたはずの死体が消えてしまった。スリラーだが最後にどんでん返しもあり楽しめる。ここでもシモーヌシニョレの演技がいい。


輪舞1950

 ここでもシモーヌシニョレが出ているので見たが、まだ主役ではない。脇役だが娼婦役で輝きを示していた。この数年後に主役として大成するが、輪舞での役柄に映画監督が目をつけたということになる。肉体の冠1952、嘆きのテレーズ1953、悪魔のような女1955と続く。


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