未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命—人は明日どう生きるのか

2019年11月19日~2020年03月29日

森美術館


2019/12/2

 都市工学と生命科学がアートとどう関わるか。未来を予測して占ってみせる。年齢を重ねると地球の未来にたいした興味はなくなってくる。しかしこの先、人類がどうなるのか、都市がどうなるのかは重要な問題だとは思う。芸術を大上段に構えると、これまで主流をなしてきた絵画や彫刻は崩壊してしまうだろう。

 森美術館という古くさい名は残り続けるが、ここの企画の実に前向きな姿勢に驚く。未来や都市がそんなに明るいものとは思えない。ついつい暗くなってしまう悲観的な世界観を、笑いとばしてくれるパワーに拍手するため、何度52階にまで昇りつめたことだろうか。今回もいい展覧会だった。地に足のつかない高所に恐怖しながら、おそるおそるエレベーターに乗り込む。高層マンションに住む人もいるのだから、年に何回かのことでしかない。よくこんなところに住む人もいるものだと思う者は、六本木ヒルズに住む資格はないだろう。

 森美術館が現代アートの普及に貢献したことは確かで、よく高層ビルでこんな巨大なスペースが取れたものだと感心する。距離的には近いあべのハルカスにはほとんど行かないが、森美術館にはしょっちゅう来る。それはひとえにその企画力のゆえだ。巡回展で見られるのなら、わざわざ高層ビルで見ようとは思わない。

 今回の展示は建築からはじまり、都市へと広がっていく。一方で人間の身体とその延長上でロボットが話題となる。マクロコスモスがミクロコスモスと交差する。かつてはレオナルドが考えたことを、今もまだ考え続けている。パネル解説も多いが、視覚化すると、圧倒的な魅力を発揮する。作家名はほとんど覚えきれないが、目に飛び込んできた体感は、確実に定着している。光に集まるルミナリエに近いものがあるが、本能に根ざしたヒトの習性に違いない。それはただの目だましにすぎないと否定しても仕方がないものだろう。都市や生命の形とはいえ、抽象彫刻を思わせる美のフォルムに変貌すると、意味を抜きにして楽しめるものになっている。教訓めいた解説を度外視しても十分に教訓めくアートの底力に出会うことができた。


by Masaaki Kambara