利休生誕五百年記念 利休と織部

2022年06月18日~12月11日

古田織部美術館


2022/10/1

 ここでは古田織部が主役である。茶道具だけでなく書も展示されている。千利休から織部に宛てた書状が掛軸になっていて、それが利休からきたものだとわかると値打ちが増す。しかも何でもない内容であるほどよい。秀吉が来たようでめでたいといいながら、大変だよと伝えている。利休の署名がはっきりと読み取れるので、さらにありがたみを増す。

 利休の茶人としての聖性と商人としての俗性が重なり合うような肖像の隣りに織部の武将姿の肖像画が並んでいる。利休の発案になる備前焼の花器が興味深い。口が大きく、広がりすぎていて、形を崩している。口は円形ではなく三角形に近いが、歪んでいるわけではない。織部の歪みに至る接点になるものだろう。織部がバロックなら、利休はルネサンスにあたるのだろうが、ルネサンスにもすでにバロックの萌芽はあるということだ。

 行動論から言えば一輪の朝顔を活かすのに庭の朝顔をすべて切り落とすというショッキングな美意識には、すでにバロックの情念を兆している。茶論に対応させると茶碗の名品をさらに格を上げるには、それを割って現代で言えばアロンアロファでくっつけて用いれぱよいという発想につながるものだろう。どんな理屈を展開させていったか、茶論の機知から学ぶことは多い。


by Masaaki Kambara