鷹野隆大 毎日写真1999-2021

2021年06月29日~09月23日

国立国際美術館


 東京タワーのシリーズは、毎日写されるなかでは気づかないが、20年も続けると、東京タワー以外のさま変わりに驚く。逆にいうと、東京タワーは変わらないということだ。そして写している写真家も変わらない。同じ場所を同じアングルで写すためには、カメラを設置している場所が変わらないという条件があるが、保証の限りではない。目の前にビルでも建つと、その時点で終了する。東京タワーと写真家との見えない糸を見せる交信の記録が、息づいて見えたとき、ただのスナップ写真がアートになる。東京タワーと結ぶ線上にビルが建ちはじめるとヒヤヒヤする。低層で終わってしまうとほっとする。高層ビルだとすっぽりとタワーを隠してしまう。いつなんどき何が起こるかわからない。

 人物と影を写して上下逆さに展示するとシュルレアリスムの風景画となる。バゼリッツでは実現できない写真の持ち味だろうか。影がひとり歩きをして人間がそれについて行くというのが、写真の本体だと思いはじめる。ストロボ写真で壁に自分の影が定着するのを見て、はっとする。影が自分のあとをついてくるのを当たり前だと思っていた常識がくつがえされる。

by Masaaki Kambara