モダンデザインが結ぶ暮らしの夢

2020年01月11日~03月22日

パナソニック汐留美術館


 これまで親しんできたアーティストの脈絡が、ひとつの糸に結びつき、納得のいくものとなった。人脈というあまりありがたくはない悪しき風習が、見えない糸で結び付けられていたという事実を前に、人脈に頼らずに大成する策はないのかと自問する。

 一枚の集合写真がある。そこに誰が写っているかという話である。ブルーノタウトがナチに追われて日本にたどりついたとき、それをもてなした文化人がいる。イサムノグチが自己の血のありかを探ろうと日本に来た時、手を貸した文化人がいる。以前高崎に行った時の体験と、高松での散策が、私の中でひとつに結びついたのである。

 ジョージナカシマの自伝を読んで、感銘を受けたのは、ずいぶんと前のことだが、ナカシマ記念館が高松近郊にあって、訪れたことがある。なぜここにあるのかという疑問は、イサムノグチの美術館がなぜ香川県にあるのかという問いとも連動している。つまり呼び寄せた人脈があるということだ。そこに見え隠れするのは、画家の猪熊弦一郎であったり、建築家の丹下健三であったりした。あるいは、集合写真には魯山人の顔が加わったりもしている。

 交友録が形づくるアートの歴史は、友達の輪を広げて、意外な結晶を実らせることになる。岡本太郎や横尾忠則や瀬戸内寂聴などは、交友の達人のように見える。輪でつながるジャンルを超えた交友史が、日本のおもてなし文化の底流をなすようだ。住宅メイカーでもあるパナソニックにふさわしい企画展であり、庶民の美意識を体現するポリシーのありかを、タウトからはじまりそれをもてなした高崎の井上房一郎、建築家レーモンドと剣持勇、ノグチとナカシマを通して探ろうとしている。それぞれは一続きとなって日本のインテリア空間を作り替えていった。キーワードは椅子にあるような気がするのだが、それは和の空間を鍛える必須のアイテムでもあった。「あかり」と題した照明器具もまたしかり、和と洋をとりもつものだった。


By Masaaki Kambara