ジブリパークとジブリ展

2023年04月15日~06月25日(予約制)

神戸市立博物館


2023/5/9

 ジブリパークが名古屋にできたので、そのデモンストレーションを兼ねた展覧会である。しばしば目にする「ルーヴル美術館展」がパリに行くかわりのデモンストレーションとみれば、同じようなものととらえることができるかもしれない。展覧会の成功は、ルーヴル美術館に行ってみたくなるかどうかにある。展覧会が充実しすぎていると、これでもうルーヴル美術館には行かなくてもよいと思わせることになってしまうので、展覧会としては失敗だということだ。しかしこれはスポンサー側に立った思惑であって、観客にとっては逆の場合がありがたい。もちろんさらに逆にこんな程度のものなら、わざわざルーヴルまで行かなくてもいいと思わせることもあるだろうから、そのへんの匙加減は難しい。

 映画会社がつくる遊園地では東映が映画村をつくったのが、先行していただろうか。ただし規模がちがう。映画産業が下火になってきた頃に、頭をひねって、撮影現場を見せて人をあつめられないかと考えることはあるだろう。アニメの映像世界で満足できなくなって、手に触れる確実な手ごたえを求めたということも言える。ディズニーのアニメとディズニーランドの関係を考えるのが、規模の点からも、成功例という点でもふさわしいものだ。そしてそれは当然の帰結だと思える。

 アニメーションをつくるのと、実際の建築物を作るのとが、対比をなしている。そして実在感、つまりは手で触れることを称賛するというのもよくわかる。しかし、展示ではコンピュータを駆使してアニメーションをつくる制作過程を、舞台裏としてこと細かにとらえていたが、この緻密な作業の高度な技術のほうが、圧倒的に建築学をうわまわっているようにみえた。映像制作の現場が思っていることと、一般観客が感じていることとは、必ずしも一致しない。映像制作のはてにいくらつくっても、たかが絵空事とため息をついて、ワンダーランド建設の夢がはじまっていく。ほんとうはもっと絵空事にちがいないのだが、それはとてつもなく予算のかかるものだという意味ででもある。ユートピアの実現と言ってもいい。

 かつてジブリのつくる建造物に焦点を当てた展覧会があった。アニメ制作とは思えない木材への執着、木目へのこだわりに驚いた。その当然の帰結がジブリパークの建設だったのだろう。行きたくなった。かつて名古屋であった博覧会の跡地に建設されている。名古屋からは少し距離があるようだ。第一期の工事がすんで第二期の工事がはしまっている。とりあえず行ってみようか。もう少しできてからとも思う。いつ行っても拡張中で、工事が続いているというのは魅力的だ。資金がいつまで続くかという話になるが、一度行ってああこんなものかと思われてはならない。つねに新しいしかけを提案し続けること。今まで多くのテーマパークが建設され、倒産していった。その轍を踏まないためには、どうすればいいか。つねに走り続けることはできない。息抜きをするのに立ち止まる。

 教訓となるのはリピーターを呼び込む秘訣だろう。ディズニーランドはその教訓となるものだが、古くはガウディのサクラダファミリアだろうか。私はこれまでに四度ほど行ったが、いつ行っても工事中だった。つねに新しくなっていたのである。完成までに何百年もかかる中世の大聖堂が、それに先立っている。

 リニューアルし続けることは重要だが、ここで逆に「老舗の味」を思い起こすことも意味があるだろう。同じ味なのにまた行きたくなるのだ。ここでは変わらないことが重要だ。ジブリパークははたしてアニメの実現、完結、完成なのだろうか、あるいは逆にアニメのためのサンプルなのか。大人は一度で飽きてしまうことが多いが、子どもは同じアニメを何度も見る。終わってすぐにもう一度とせがんでいるのである。


by Masaaki Kambara