ロイヤル コペンハーゲンのアール・ヌーヴォー展

2019年04月20日~08月25日

ヤマザキマザック美術館


2019/6/28

 ロイヤルコペンハーゲンという格調高い音の響きに、軽やかな上質の貴族趣味(ロイヤリティ)を受け止める。硬く白い肌に淡い色彩を施した造形は、多くの共感と支持を得て、その上に子犬が加わることで、陶芸を越えて陶彫へと深化する。庶民性とはかけ離れた上質の趣味への憧れは、ロココを基調にした絵画の収集にも反映する。その後には数多くのアール・ヌーヴォーの家具などのコレクションを通じて、幾分かは庶民性を獲得して、一般市民にも馴染み深いものへと展開していったようだ。

 今回は塩川コレクションに属するなどの小動物を釉下彩によって淡く色付けた陶磁が、数多く紹介されている。釉下彩は江戸時代を通じて、鍋島に結晶するものだ。日本から海外に向けての発信する美の自信作であって、海外が好む歌舞伎や浮世絵のけばけばしい美の基準とは異なる。明治になって板谷波山が、佐賀では今右衛門、京都では楠部弥弌が独自の展開を見せた。

 ぼかしのある風景は、クリアな透明感によって支えられた西洋の遠近法による絵画理念とは一線を画しており、絶妙な陶芸の独自性を主張する。この鈍い明るさを、西洋が気づき出すには、脂ぎったけばけばしさに飽きて、原色を否定することを学ぶ必要があった。彩度を落としても、明度は上がるという陶芸の秘密を、マジックとして受け止めた時、中国が五千年をかけて探求してきた土と火の奇跡が、蘇ってくる。それは色彩を否定して、鮮やかな宇宙の深淵を描写する水墨画の理念とも連動するものだっただろう。陶芸の東西交流を底流としながら、目を宇宙にまで向けてくれる。見る者を優しい気分にさせてくれるひとときだった。


by Masaaki KAMBARA