川内倫子 M/E 球体の上 無限の連なり

2022年10月8日(土)~12月18日(日)

東京オペラシティ アートギャラリー


2022/10/29

 ハレーションを起こしているような、明るい光に包まれて、幸福感に満たされている。それは胎内から出たときのはじめての地球の印象にぴったりと対応する。まぶしいほどの光は、母体の洞窟では感じることのできないものだ。生命体が母親から地球へとよりどころを変えるときである。

 写真家はM/Eという魅力的な展覧会名をつけている。説明をしてもらわないとこのままでは何のことかはわからない。Mはマザー、Eはアースの頭文字で、両者は背中合わせに抱き合わされている。そして隔たりをなくすとM E、つまり私となるというのである。

 このコンセプトが先にあったのか、写された写真を並べてみてときに思いついたのかは定かではない。そこに通底するものの存在は、並んだ写真群からひしひしと伝わってくる。光に満ちたおぼろげな自然は、暗がりを手さぐりする不安を宿しているが、確実な手ざわりを示すものだ。手のひらにくるまった白い人形のかしらがある。手のひらに握られた小石がある。何かを握りしめながら小道をひとり歩いている少女がいる。手のひらをあてて球体の影をとらえようとしている。それぞれは他愛のない一瞬だが、手の動きは宇宙と共鳴しあって、ちゃんと絵になっている。


by Masaaki Kambarta