地球・爆—10人の画家による大共作展 Earth Attack
2019年11月01日~12月15日
愛知県美術館
2019/11/28
シンプルな線描が大画面になった。これまであまり見たことのない展覧会だった。規模の大きさは、この美術館の大規模な展示面積にフィットするように、計算されている。回遊式の京都の庭を巡るように淡白で、解釈の自力を求められている。鍵となる語は地球(アース)と爆(アタック)にある。
爆破や爆発というには、静かでおとなしく感じるが、手を取り合って輪を広げていく「連帯」という語が思い浮かぶ。同じサイズのパネルが、これでもかこれでもかと続いている。味のあるグラフィックの線描が、余白を残したまま、うねるように順路を複雑に蛇行している。個の主張よりも、全体の統一感が先立っていて、「地球・爆」というタイトルに収斂しようとする。
ときにエルンスト流の非現実の世界に誘われると、版画世界は拡大して、絵巻の仮想に入り込んでいるような錯覚がいだかれる。移動のための矢印を追いかけながらも、落ち着きなく視線はさまよっていく。目うつりの体感を楽しみ、散策という限りでは、絵は壁紙として作用する。色彩はほとんどない。細微な線描に出くわすと足を止め、しばしの対話を試みるが、多くは禅問答のように、自身の内面に出会うだけのことなのだろう。
岡本信次郎と山口啓介の名にはなじみがあったが、これまでの個性のある自我を、全面に出すものではなく、和の中に一体化しようとする志向が読み取れる。全体を一元化して、一個の人格が形成され、個の主張と見えた時、驚くほどの連作の膨大に気づくことになるのだ。これまであまり体験したことのない感情の機微を味わいながら、戦争や地球環境の変化に思いを馳せてみた。大上段に構えるレジスタンスではなくて、切々と繰り返される呪文のような響きに聴き耳を立てる、そんな展覧会だった。