フィンランド陶芸 芸術家たちのユートピア —コレクション・カッコネン

2019年07月13日~10月14日

大阪市立東洋陶磁美術館


2019/8/3

 以前に東京の目黒区立美術館で見た記憶がある。マリメッコも併設されて並んでいたので、デザイン展のような受け止めをしていたように思う。今日改めて見直してみると、作家性の強いものが目に留まり、陶芸のもつ多様性に改めて気づくことになる。もちろん壺や皿として、生活に埋没させることも可能だが、ひとりでにアートとして立ち上がってくるものも少なくない。

 ミハエル・シルキンの動物の陶彫は、現代各地で開かれている動物園を冠した展覧会としても、十分独立できるだけの力量を示している。子犬もいいが、ラクダのとぼけた表情が、何とも言えない。単体だけではなく、壺の口に細工した熊と狩人の組み合わせもいい。壺を柱に見立てて、互いに相手のようすをうかがっている。現実には食うか食われるかの死闘であるのだろうが、ここではユーモラスに見える。

 マリメッコはオシャレだ。フィンランド陶芸とどこかで通底するが、目に飛び込むインパクトは強いので、切り離す方がよいだろう。ただ国力のアピールとしてセットにしたいという戦略はよくわかる。今回は仮設の茶室まで登場した。ケバケバしいように見えるが、千利休なら大喜びしたに違いない。陶磁美術館にはふさわしい試みといってよい。楽しく見ることができたが、できればその狭い内部空間を体感してみたかった。


by Masaaki KAMBARA