デンマーク・デザイン

2019年07月06日~09月01日

三重県立美術館


2019/8/6

 デンマークのデザインを紹介するが、主には家具、とりわけ椅子のデザインが中心だった。はじめにロイヤルコペンハーゲンが並ぶが、文脈上はあまり結びつかないように思える。一連の磁器になじみがあったので所蔵先を見ると塩川コレクションとあり、デンマークから来たのではないのかとがっかりする。先日見たばかりだ。加えてコペンハーゲンのデザイン博物館にどれほどの磁器コレクションが所蔵されているのかが、気になってくる。

 椅子へのこだわりは西欧では共通した思考法であり、王侯貴族の権力の座から、庶民の生活に根ざした家族の和へと、視点を移していく。さすがに布や皮や木の製品は、年代を感じさせる。椅子が座ってこそ意味をなすのだとすれば、絵画が見られて視線を浴びる以上に、劣化は著しい。ロイヤルコペンハーゲンが、いつまでもみずみずしいのとは対照的だ。陶芸ではその代わり劣化の代償のように、ひびと割れを怖れている。椅子は権力の崩壊と運命をともにするということか。権力者が陶芸を憧れてコレクションするのも、わかる気がした。

 最後には体感コーナーを設け、椅子の試着によって、デザインは見るだけのものではないという定義を実践している。確かに生活空間に引き下げて、お尻で鑑賞するのでなければ、椅子の評価は下せない。展示台上にあったのに、思わず腰をおろしたくなる椅子があったが、それは優れているという証拠だ。そこにいる家族の肖像を思い浮かべることができれば、食卓は完成度を高める。王室の上質の趣味から庶民の生活文化に名は変えるが、「レゴ」の誕生に至っても、品格だけは備え続けているように思える。子どもの教育玩具にも国の品位というものはあるようだ。


by Masaaki KAMBARA