舟を編む


舟を編む

辞書作りを題材にした映画と言えば「博士と狂人」があったけど、あっちに比べるとこっちはちまっとお行儀がいい。殺人事件も起こらない(←?)。1995年、玄武書房の辞書編集部では「大渡海」発行に向け、長い道のりが始まろうとしていた。10年以上かかるから、今の時代に即したものを・・と思っても、できた頃には古くなっていそう。家庭の事情でやめる荒木(小林薫氏)の代わりに馬締(松田龍平氏)が入り・・。この馬締が住んでいるのは早雲荘という古びた下宿。木造で洗面所とかタイルが使われているし、階段脇にはねじ巻き式の古時計とレトロな雰囲気。馬締の部屋だけでなく廊下にも本が山積みで、まるで古本屋のよう。木造だから本の重みでゆがんだり傾いたりするはずだが・・。おまけに茶色の猫トラがそこらをウロウロしているじゃありませんか!本と猫のダブルパンチ!もう内容なんかどーでもいい!このトラ君かなり大人しくて抱っこされてもずっとそのまま。く~!!下宿やってるタケ(渡辺美佐子さん)は一緒にご飯食べようと馬締を誘ってくれたりする。おかずは買ってきたもののようで、まあその方が楽だもんね。何だかリアル。馬締の単調な日々が一変したの香具矢(宮崎あおいさん)の出現。一目ぼれして仕事も手につかない。一方辞書は中止の噂も。時間かかるし、そんなにたくさん売れるってものでもないしね。そのうち2008年に一気に飛んで、そのわりには皆さん体形も変わらずうらやましいこって。タとトラは亡くなり、馬締と香具矢は結婚し、妻をくした荒木が戻って来、松本(加藤剛氏)は完成を待たずに病死する。この松本の妻役が八千草薫さんで、二人とももう故人なんだよなあ・・。馬締とは対照的な性格の西岡(オダギリジョー氏)は結婚して子供もいるが、馬締の方は板前の香具矢が店を持ったくらいで変わりなし。文庫にしろ単行本にしろ誤字や誤植は驚くほど多いけど、辞書は絶対に間違いは許されないから何度もチェックする。それなのにミスが見つかったり。大変な作業なんだな。「博士と狂人」ではちょっとわかりにくかった用例採集も、こちらではわかりやすかったし、紙質のこだわりも興味深かった。又吉直樹氏が出ていたらしいけど気がつかなかった。装丁のところで出ていたらしい。

舟を編む~私、辞書つくります~(NHK)1

若い女性が海辺で朝日を見ながら泣いている。その2ケ月前、玄武書房のファッション誌VIVIANの編集部で働くみどり(池田エライザさん)は忙しい日々を送っていた。一緒に暮らしている昇平(鈴木伸之氏)はまだ芽の出ない写真家で、後でわかるが生活費の多くはみどりが出している。その代わり朝食を作るなど家事は彼がやっているのか。その日みどりは編集長の凛子からVIVIANが廃刊になると告げられ驚く。2ヶ月後異動した先は辞書編集部。今までとは全く違う環境で、とまどうことばかり。何よりもみどりは辞書になんて全く興味がない。主任の馬締(野田洋次郎氏)はチリチリ頭にメガネのさえない男。みどりには素質があるとしきりにほめてくれるが、彼女には思いあたることもなく。歓迎会で本音を言ったら、学生アルバイトの天童(前田旺志郎氏)が怒り出し、気まずい雰囲気に。でも監修担当の松本(柴田恭兵氏)の一言が頭に残って・・。家に帰ったら昇がいない。電話をくれたと思ったら「距離を置きたい」。松本の言ってた「なんて」を辞書で引いてみたら・・。自分は何とひんぱんに「なんて」を使っていたことか。それも軽視の意味で。で、冒頭のシーン。軽視されまくって嫌気がさした昇が家を出ていくのもわかる。いくら温厚な彼でもがまんの限界。それ以外にもみどりは友人達からなぜか仲間はずれにされたり、なぜか過去の出来事が頭をよぎったり。映画と違いこちらはみどりが主人公らしい。あっちでは馬締が辞書編集部に異動になって・・という設定で、みどりが出てくるのはだいぶ後だったと思う。今は字幕があるので助かる。池田さんのセリフ、何を言ってるのかよくわからないことが多いから。野田氏は真っ直ぐでいい感じ。猫はいつ出てくるのかな。

舟を編む~私、辞書つくります~

冒頭他社の辞書の第5版が出たのを利用していろんなことが説明される。それにしてもすべて人力。それでなくてもいろんな辞書が出ているし、今更大渡海作って売れますかね・・ってそれを言っちゃあおしまいか。作り始めて13年ということで、映画では辞書作りと共に重要なパートだった馬締と香具矢(美村里江さん)のあれこれはもうすんじゃってる。香具矢は奥さんにおさまっちゃってるし、早雲荘の大家でもある・・と言ってもみどりが引越すまで下宿人誰もいないが。前回は「なんて」だったが、今回は「恋愛」。みどりが「恋愛」の語釈に感じた強い違和感。そりゃね、恋愛に縁のない私も感じましたよ、何で異性間なの?男女なの?でも辞書を作るにはそういう難しいところもあるんだな・・というのはわかった。辞書を引く時って意味を知ること以外には何も考えてないしな。作り手の苦労なんて全然・・。ページをめくる時のぬめり感も感じたことなし。うちにある辞書はどれもこれも数ページずつめくれちゃうもんで。まあどれもこれも数十年前に買ったものだしな。恋愛の語釈をずっと考えていたみどりは、ある時気づく。自分が昇平に抱いていたのは愛じゃなかったんだ・・って。心残りがないと言えばウソになるけど、結局は別れることに。向こうも同じような感じだったらしいし。

舟を編む~私、辞書つくります~3

早雲荘に引越したみどり。仕事がファッション誌だったせいで給料は服につぎ込み、貯金なんかないから大家の香具矢の好意はうれしい。とにかくいよいよ本、本、本・・本の洪水、本の重みで傾いた・・いや、結婚してすでに13年たっているから、その間も本は増え続け、本の重みで地盤沈下起こした状態のはず。しかしその描写が・・ないッ!!本がちょっと多いかなって部屋が一つ、ちょろっとうつるだけ。だ、だめですこれじゃあ!・・と、心の中怨嗟の声をあげたのは私だけでしょうか。何だこの手抜きは・・。猫のことも説明されない。初代が写真でちょろっと。そう、今いるのは二代目。大量の本とかわいい猫がこの作品の肝なのに。辞書なんかどーでも(あッ、言っちゃった!)。今回は水木しげる騒動。いつもはちゃんと規定内におさめてくれる秋野教授(勝村政信氏)がとんでもなく長い語釈書いてきた。数行に削ったら怒り爆発。あいにく馬締は学会、佐々木(渡辺真起子さん)有給休暇を取り、天童は試験編集部にはみどりしかいない。困り果てていると以前ここにいた宮岡(向井理氏)がひょっこり現われ・・。見終わってから気がついたけど、そう言えば向井氏は「ゲゲゲの女房」で水木氏役やってたな。あれはほぼ毎日ちゃんと見てた向井氏目当てで。

舟を編む~私、辞書つくります~4

みどりは大渡海に使う紙を担当することになり、製紙会社の宮本との接触も多くなる。彼は仕事熱心で、裏表のない善人。でも現実にこういう人いるかね。いい人すぎる。演じている矢本悠馬氏は「明治開化 新十郎探偵帖」に出ていたな。みどりは彼を香具矢の店へ連れて行く。馬締の妻だと知って驚く宮本。今回は大渡海に使う図版の話がメイン。印刷技術が発達したとは言え、白黒写真では何がうつっているのかわからないことは多い。まして辞書はスペースが小さい。どうしてもイラストの方が・・となる。以前西岡が大渡海のために用意してくれていたイラストの何枚かを書き直すことになったが、それを描いた夏川は2年前に死亡していた。言葉にはうるさい馬締だが、絵は苦手で、後回しにしていたツケが回ってきた。幸い息子の颯太(戸塚純貴氏)もイラストレーターで、すぐ描き直してくれてことなきを得たが、彼の父親に対するさめた物言いがみどりには気になって。で、この後決してそんなことはない、父親は息子を愛していたし、仕事にも誇りを持っていたという、お約束の・・見ている者を感動させ、ウルウルさせるという流れに。うまいですなあ、持っていき方が・・。夏川を演じている肥後克氏のちょっとしょぼくれた感じがまたぴったりはまってて。安い仕事を次から次へとこなし、変更の電話が入っても文句言うでもなく描き直し、妻には逃げられ・・。辞書に使われるイラストについての馬締の見解が興味深かった。馬締役の野田氏は無表情でたんたんとした話し方をする。どことなく演技が素人っぽいんだけど、そこがまたいい。こんな人いるよなあという気にさせられる。

舟を編む~私、辞書つくります~5

今回は正直言って見ているのがアレだった。同じウルウルさせるにしても前回はうまく配分してあったけど、今回はモロに、ダブルで、要するに過度。子供を辞書に親しませる催しでみどりの興味を引いたのは愛斗とその母。愛斗は「うむん」という言葉を捜している。でもどの辞書にも載ってない。そのうちみどりは母親が無意識につぶやいてしまった「産むんじゃなかった」という言葉を愛斗が聞いてしまったのではと気づく。少年の心を傷つけず解決するにはどうしたらいいんだろう。みどりの両親は離婚している。姉さつきは母若葉に引き取られ、自分は父親に引き取られた。母親には自由に会うことができたが、ある思い出をずっと引きずっていて。山から久しぶりに出てきた母と姉。今こそずっと心に引っかかっていた疑問を聞くチャンスなのだが、なかなか言い出せない。みどりの場合は「からかう」だった。山の方言では「工夫する」の意味だが、子供だった彼女にはわかるはずもなく・・。関係ないけど私の住んでいるところでは「○○しない」は本来の意味の他に、「○○しなさい」の意味で使うことがある。「そうしない」は「そうしなさい」だし、「やめない」は「やめなさい」という意味だ。話を戻してみどりはこの悩みをわりとすんなり宮本に打ち明ける。彼がみどりに好意持ってるのは明らかだが、この先どうなるのだろう。彼とくっつくのか昇平とよりを戻すのか。何の悩みもないように見える宮本だが、親のことでは苦労させられたらしく、そこは意外だった。

舟を編む~私、辞書つくります~

今回みどり達にとって最大のピンチが訪れる。出版界はどこも不況。新社長五十嵐(堤真一氏)は財政立て直しのため大ナタをふるい、死神とあだ名されるほど。役員会に呼び出された西岡と馬締が告げられたのは・・。大渡海中止とまではいかないけど、デジタル一本化の方が、作る側にも利用する側にも便利だと。確かに紙の辞書はスペースが限られるし、情報が古くなっても直せない。その場は西岡がうまくおさめる。有名なブックデザイナーに装丁を頼んであるとかはったりをかまして。最近西岡の出番が多いな。喜ばしいこっちゃ。その分馬締がかすんじゃってるけど。デジタル化に猛反対なのが荒木(岩松了氏)。大渡海のような中型辞書の出版にこぎつけるには30年かかったらしい。そこから13年たってるから全部で43年!他にみどりが読者モデルをしていた頃炎上の被害にあったこと、天童が辞書に興味を持つに至ったきっかけなどが描かれる。シリーズも後半に入ったけど何となく迫力に欠けると言うか。ピンチのわりにはのんびりしていると言うか。

舟を編む~私、辞書つくります~

役員会でのプレゼンまであと14日。デジタル化の話は松本には内緒。辞書編集部でSNSを始めた。みどりは読者モデルをしていたから少しは顔も知られている。炎上のトラウマは過去のこと。紙のメリットを伝えるには・・と知恵をしぼる。凛子に会って話を聞くが、逆にWEBのメリットを聞かされる。異動の時はショックだったけど、今は辞書編集部に回してくれて彼女には感謝している。宮本の話を聞くことで紙の知識も深まりつつある。彼は以前剥離紙を作っていたが、捨てられてしまうものなので空しくなり、辞書の紙の方に移ったのだとか。ところがみどりは大のシール好きで、あけぼの製紙の剥離紙を愛用している。それを知った宮本がうれしくて泣きそうになっているところはよかった。一方西岡はブックデザイナーのハルガスミにアポを取ろうと苦労している。彼の装丁ならなかみが白紙でも売れるというくらい売れっ子だが、正体は不明らしい。最初は反応が鈍かったSNSだが、ある時なぜかフォロワーが増え始める。どうもヲタムというインフルエンサーのせいらしい。そのヲタムのつてでハルガスミと会えることになったが、それが役員会の後。思った通り西岡と馬締のプレゼンは難航。もうだめかという時に・・。編集部にひょっこり現われた見るからに怪しげな男。実は彼がハルガスミ(柄本時生氏)。なかみそっちのけで彼の装丁ばかり持てはやされるので、書いた人に申し訳ないと悩んでいる。もう仕事やめたい。それをみどりが説得し、ハルガスミが装丁引き受けたことで(採算取れそうということになって)、大渡海は沈没を免れる。結局紙とデジタル両方ということになるのかな。ヲタムの正体があの秋野教授だったというの意外でよかった。

舟を編む~私、辞書つくります~8

いつ”血潮”の漏れに気づくかと思っていたけどやっと今回。どんなに注意していてもミスってあるんだよな。他には宮本はいつみどりに告白するんだろう・・って。来週あたりかな。松本は映画だと発売待たずに病死するけどそろそろかな・・とか。本で埋まった早雲荘は出てきそうにないので。楽しみ半減しちゃったもんで。辞書用の紙であれこれやってたけど、こちとら興味ないし。いやホントこの先たぶん死ぬまで新しい辞書は買わないと思うし。今持ってるもので間に合わせると思うし。今回膨大な用例集を保管する資料室が出てきたけど、あれもどうなんだろう。スペース取るしそのうちデジタル化されるのでは?大渡海のデジタル版担当する山目役で松田龍平氏がさりげなく出てきたな、サービス?途中で、誰?この夫婦って感じで出てきたのがみどりの父親と若い再婚相手。しかも妊娠中。そうだよね、みどりが若いんだから父親だってまだ若いよね。

舟を編む~私、辞書つくります~9

血潮”が漏れていたことに対し、誰もみどりを責めない。それよりやらなければならないことが山積み。他に漏れがないかどうか全部チェックしなければならない。それも2週間で。見ていて思ったけど、「ここで休憩にしよう」とか中断した時が一番危ないと思うな。一瞬フッと気がゆるむでしょ。この件は他に漏れては大変なので、みどりは宮本にも話せない。仕事以外での初めてのデート・・せっかく花束持って待っていたのにねえ。みんなの努力のおかげでチェックは完了。漏れはなし。喜ぶみんなにいつの間にかハルガスミがまじっていて笑える。柄本氏を見ると志村氏の変なおじさん思い出してしまう。延び延びになっていたデート・・そこで宮本に告白されてとまどうみどり。あれ?断るのかな?でも・・ご安心ください。宮本の思いは通じました、よかったネ。刊行発表会も無事にすんだある日、松本は食道ガンで入院することに。また、世間では新型コロナが流行し始め、あたりまえの日々が続くわけではないことにみどり達は気づかされる。松本は全然悲観してなくて、病院で用例採集ができると前向き。なかなか凡人にはこういう境地は無理ですな。

舟を編む~私、辞書つくります~10

いよいよ最終回。2020年、コロナのため新語が続々。何とか校了までにそれらも入れたい。病院は面会禁止だから松本には会えない。そのまま・・と思ったらあれれ?そうですか、テレビの方は生き延びるのですか。間に合わなくて生前にとったビデオメッセージが流れてジーンと感動させられて・・と思ったらリアルタイム。いや、喜ばしいことですけどさ。反対に馬締と香具矢は数年別れることに。キャンセル続きで香具矢の店は休業せざるをなくなり、苦渋の決断。単身京都の店へ。珍しく馬締は彼女との別れを拒む。まあ何と言うか最終回なので今まであったことの後片づけをして回っているような感じ。死人は出ないし、みんないい人だしでハッピー、ハッピー。見ていてちょっと物足りない。さて次はどんな辞書ができるのでしょ。