呪われた城

われた

1844年のコネチカット州、農家のウェルズ家に一通の手紙。遠い親戚のニコラス・ヴァン・ラインからで、娘カトリンの家庭教師として、ウェルズ家の娘一人を招待したいとある。姉妹のうち妹ティビーは恋人がいるので興味を示さないが、姉のミランダは夢見がちな性格で、この申し出に飛びつく。父親エフライムは渋るが、母親は味方してくれた。一家は信心深く、何事も聖書が規範。夫に服従し、ミランダに向かっては反対してるかに思えた母親が、エフライムの前では味方に転じるのが意外。なかなか興味深いキャラ。待ち合わせたのはニューヨークのホテル。現われたニコラスは長身で礼儀正しく、しかも大金持ち。住んでいるドラゴンウィックは城のようにそびえる。ミランダは何度も「たまげたわ」と驚く。城には病気がちの妻ジョハンナ、両親にあまり愛されていないようなカトリン、家政婦のマグダなどがいる。古いチェンバロがあって、その上には曾祖母アジルドの肖像画がかかっている。彼女の結婚は不幸で、息子を産んだものの遠ざけられ、チェンバロのそばで自殺したとか。この映画はアニア・セットンという人のベストセラーの映画化らしいが、雰囲気としては・・ミランダとカトリンのシーンなどまるで「ジェイン・エア」だし、若くてうぶな女性が城へというのは「レベッカ」風味。しかしカトリンはストーリーにほとんど絡んで来ず、そのうち出てこなくなる。マグダも敵か味方かはっきりしない。「来なければよかったと思うはず」なんて思わせぶりなこと言ってたのに。お祭りがあるが、小作人にとっては領主であるニコラスに地代を払わなければならない日でもある。この頃にはどうしていつまでも払い続けなければならないのかという気運が高まっているが、ニコラスには通じない。払えないのなら出て行ってもらうまでだ。ミランダは医師のターナーと知り合う。彼は一目で惹かれたらしいが、ミランダの方はニコラスに惹かれ始めているから、ターナーの気持ちには気づかない。舞踏会でのミランダは「レベッカ」のヒロインとよく似た格好をしている。令嬢達に農家の出身というので見下され、悔しい思いをするが、ニコラスは全く気にかけず、ダンスを申し込んで彼女の気分を晴らしてくれる。この時点では見ている方はニコラスが善人なのか悪人なのか判断つかない。

呪われた城2

小作人達には冷たく横柄だが、ミランダに対しては紳士的で温かい。まあどう見たってミランダにはターナーがお似合いだが。嵐の夜、ジョハンナは風邪で体調が悪いが、ターナーの見立てでは大したことはない。ジョハンナにはお菓子ばかり食べるという習慣がある。それをやめれば治りも早いのだが、彼女は耳を貸さない。ニコラスは彼女の好きな植物オレアンダーの鉢植えを贈ってくれたし、ケーキも勧めてくれたので少しは気分もよくなった気がする。ところが夜中にジョハンナは急死。嵐のため泊まっていたターナーは死因がわからず当惑する。ニコラスはミランダに思いを打ち明けるが、いくら何でも早すぎないか?すぐには返答できず実家へ戻るミランダ。途中ターナーにも求婚されるが、彼のことはいい友人としか思っていないので断る。ニコラスが両親の承諾を得るため実家を訪れると、ミランダはうれしさで天にも昇る心地。父親はニコラスのことは気に入らないが、ミランダがその気になっているので反対もできない。結婚は1846年らしいが式の様子は描かれない。ミランダは足の不自由なペギーを自分きの召使として雇うが、ニコラスは反対する。ミランダにとっては足が悪いのは神様のおぼし召し。ペギーが悪いわけではない。家族の中でははねっ返りだったミランダだが、信心深い両親の教えはちゃんと身についていたようで。彼女と結婚したことでニコラスはパーティに招待しても欠席されるなど交際面で影響を受けているが、全然気にしていない。それにミランダには子供ができた。彼にとってはあとを継ぐ息子がいないことが悩みの種。ジョハンナはもう子供は産めなかったらしいし・・。待望の男の子が生まれるが、心臓に異常があってすぐ死んでしまう。ミランダは何とか悲しみから立ち直ったが、ニコラスは塔の部屋に閉じこもって数週間も姿を見せず、心配した彼女はとうとう上へと上がっていく。秘密の部屋というと「ジェイン・エア」みたいに気の狂った正妻が・・とか連想しちゃうけど、こっちはちゃんと出てきていたし、ちゃんと死んじゃったし。塔の部屋にこもるのは以前からあって、召使も不審に思っていたらしいけど、そこで夫が何をしているのかはジョハンナも知らなかったと思われる。見ている方もどんな秘密が・・と期待するわけだが、ただの薬物中毒。

呪われた城3

しかもミランダから見れば現実逃避。災害があれば農家は打撃を受ける。神への心が離れ、酒やら何やらに逃避する者は周囲にいっぱいいた。だからニコラスのような者は珍しくも何ともない。でも彼女は夫を愛しており、何とか助けてあげたい。その後ターナーはペギーからニコラスがミランダに植物を贈ったこと、彼女が部屋で食事をとっていることを聞いて、ジョハンナの時と同じだと気づく。ところでオレアンダーと言ってもなじみがないが、キョウチクトウ(夾竹桃)のことらしい。猛毒だなんて知らんかった。結局ニコラスの目的は跡継ぎを得ること。だから手紙を出して若い女性がここへ来るよう仕向けた。邪魔なジョハンナを始末したように、ミランダも始末する気だった。彼女ももう子供は産めないらしい。無事に息子が生まれていたとしてもアジルド同様妻から引き離し、自殺に追い込んだだろう。いや、アジルドだってホントに自殺だったかどうか。とにかく息子に土地を相続させ、家を存続させるのだ。農地解放なんてとんでもない。ラスト・・未亡人となったミランダは城を去る。今度こそターナーと結ばれるのか。ミランダ役はジーン・ティアニー。この頃の映画のヒロインはみんなそうだが、真夜中でもお化粧ばっちり。美しく見えるよう慎重にライトがあてられ、涙を浮かべる時は光り輝くよう調節される。エフライム役はウォルター・ヒューストン。「天地創造」などのジョン・ヒューストンは息子。ニコラス役はヴィンセント・プライス。ヒゲを生やした顔しか見たことないが、今回はヒゲなし。ヒゲがないと顔が長いのが目立つが声はいい。ターナー役はグレン・ランガン。知らない人だが目がキラキラしてアラン・ドロンみたい。ペギー役はジェシカ・タンディ。「鳥」や「ドライビングMissデイジー」の人。彼女はティアニーのような凝ったわざとらしいうつし方はしてもらえない。でもそのせいで演技力や個性などで(その場を)持っていってしまう。でも私の印象に残ったのはやはり母親役アン・リヴィアだな。冷たくて堅苦しいように見えるが、すぐ感情的になるエフライムよりよっぽどしっかり者。ということで怖さも何もない映画だけど、それなりに楽しめました。