ヒルコ、奇談

ヒルコ 妖怪ハンター

これを見たのは沢田研二氏が出ているらしいからだ。彼の映画というと「魔界転生」しか見ていない。テレビドラマだと「悪魔のようなあいつ」。わけわかんない感じだけど、ジュリーが出ているだけでムード満点、うつってるだけでステキだった。破滅的あるいは退廃的な美。歌・・時の過ぎゆくままに・・がまたムード盛り上げていて。でも一番印象に残ってるのは篠ひろ子さんが死ぬところ。死んだのに首のあたりで脈がピクピク数十年前の記憶なので間違ってるかもしれんが)話を戻してこちらはコミックがもとになっているのか。評価はまっぷたつに分かれていて、それはどの映画でもそうなんだけど、こういう原作のあるものって特に・・。熱心なファンはイメージぶち壊したとか言って怒ってるみたい。でも私は前知識ゼロ、ジュリーがこういう映画に出てることすら知らずに今まで生きてきましたので。考古学者の稗田礼郎(沢田氏)・・いや、別に稗田阿礼でも・・は今日も発掘現場にいる。妙な機械を発明するのが趣味なのか。彼は妖怪は実在すると主張して学会を追われ、おまけに発掘に連れていった妻茜が死んだようで。現場では楽しそうにマイペースでやっているが、紙袋(レジ袋じゃないんだ)を抱え、アパートへ帰る彼の姿は哀愁が漂っている。たぶんアパートは西日がたり、夕暮れ時は暑くて大変なんだろうな。いいな、この感じ。原作のイメージとかけ離れていたってジュリーファンには気にならないと思う。たいていの女性客はジュリーさえステキにうつっていればそれでオッケー。奥さんが生きていた時もこのアパートに住んでいたのかしら。ゴキブリが出て・・キンチョールをかけるけど、でも殺虫剤ではなかなか死なないんだよな。新聞紙丸めて・・なんてやってるとどこかへ行っちゃうし、新聞紙やスリッパで潰すとが面倒だし。と言って、見つけた以上は殺さないと。私はこれを”仁義なき戦い”と呼んでおります。どっちかがくたばるまでやめるわけにはいかない。一番ありがたいのは流しの中にいてくれること。洗剤をピューッとかけるとイチコロです。熱湯でもいいけど、お湯がいてるとは限らない。まあこの二つがベストです(何のこっちゃ)。一方自転車を漕ぐ中学生令子(上野めぐみさん)。坂道を下る時は両足広げて「ヒャ~」なんて言ってる。楽しそう。彼女は洞窟を調べる八部(竹中直人氏)のところへ。帰れと言われても聞かない。

ヒルコ 妖怪ハンター2

その八部は稗田に手紙を出していた。古墳を見つけたが、墓ではなく悪霊を鎮めるためのものらしいと。で、田舎へやってきた稗田。ダボッとした感じの服に帽子、手には大きなトランク、もう片方にはお土産らしい包み。ここでも哀愁が漂っていますな。洋装だけど私には金田一耕助に見える。浅見光彦でもいいけど、彼だったらトボトボ歩いてきたりしない。しゃれた車に乗ってるはず。茜を死なせたというので、ここへは来にくかっただろうな。お土産一つじゃ少なすぎる気も・・。でもあのお土産プラプラでもうつかみは十分なわけですな。ジュリーは若い頃に比べるとちょっと太っていて、次に出てくる工藤正貴氏と並んだりすると顔の大きさや昔風体形が目立つ。いや、別にいいんですよ。清潔感は失われていないし。さて、八部と令子は家に帰って来ず、それでいてまだ警察には届けていない。常識で考えると、令子が現われた時点で八部は調査を中止すべきだった。何もやましいことはないとは言え、中学教師と女生徒、しかも洞窟の中。今は夏休みで校舎にはひとけがない。三人の男子生徒がフラフラ歩き回るが、二回目見ていて気がついた。八部と令子を捜しているのだ。そのうちの一人は八部の息子まさお(工藤氏)、あとの二人は友人の青井と片桐。そう、二回見たのだ。最初見た時、まさおは令子のことばかり気にしていて、父親のことはちっとも・・と、違和感あったけど、河野に聞かれた令子が八部は家に帰ったと言っていて、それを聞いたからなんだな・・とわかった。三人はここんとこ人が変わったように気が荒くなった用務員の渡辺(室田日出夫氏)に脅かされたりする。私は何となく「デビルスピーク」思い出した。小道具に「古事記」が使われているのが珍しい。最初の方で、生まれたものの、海に流されてしまうのがヒルコ(蛭子)。その変わった名前の響き、なぜ流されてしまうのかという疑問。映画は夏休みの夜の学校校舎イコール大きなお化け屋敷と言った感じ。「学校の怪談」を引き合いに出している人が多いけど、私は見たことなし。あれこれあるのだが、残念なことに暗いシーンが多く、何が何だかさっぱりわからない。二回目は慣れたのか少しはわかったけど。途中で急に暗くなるシーンがあるけど、意味があるのかな。

ヒルコ 妖怪ハンター3

電話が通じなくなったのは渡辺のせいだが、学校とその周囲がすっぽり異界にはまり込んでしまったとか、そういう感じなのかな。工藤氏は工藤夕貴さんの弟なんだそうな。ひょろっとしていて顔が小さい。彼も令子役の上野さんもとても中学生には見えない。何で高校生にしなかったのだろう。上野さんはラスト近くで笑顔をりまき、作り手はアイドルとして売り出したいのかと思ってしまう。全体的にはホラーでありながら青春物でもあって、同じクラスにいながら言葉もかわしたことのないまさおの、青い青い初恋が描かれる。それはいいのだが、令子への思いが父への思いよりずっと強いように描かれるのは?だ。令子を失うことより父親を失うことの方が重大事なんじゃないの?それとも中学生ならオンナのコの方が大事?違和感と言えば茜の死もそうだ。まさおなんか「叔母を殺した」なんて言ってる。だからてっきり発掘の最中の事故・・土砂崩れとか陥没とかに巻き込まれて・・と思ったら・・何ですかあれは。全く自分の不注意で、稗田全然悪くないじゃないですか。でもきっと彼は弁解いっさいせず、全部自分の責任ということにしたんだろうな。茜は妖怪実在説も信じて励ましてくれたと思うけど、この説に関しては何の説明もなし。なぜ実在を信じるのかくらいは教えて欲しかった。それにしても閉じ込められているはずのヒルコがどうしてああやって動き回るのかね。封印された扉を呪文で開けて中に入ると、細長い岩があちこちに立っていて、たぶん多くの人はこの黄泉の国から逃げ出す時、後ろを振り向いたせいで岩になったのだ・・なんて思うのでは?ここへ入り込んだのが稗田達が最初とは限らないし。人面蜘蛛は「遊星からの物体X」、変身する八部達は「エイリアン」シリーズ、ラスト近くの変なシーンは「アビス」や「ドニー・ダーコ」、冒頭の音楽は「メトロポリス」(現代の音楽つけた方ね)を思い出した。ラストはあんなふうにのどかに終われるはずないんだけど。生徒三人の惨殺死体、教師と女生徒の失踪。でも、全部渡辺の仕業にされるのかな。結局犯人は猟銃自殺とか。てなわけでこの映画、ここまで青春映画してるとは思わなかったけど、ジュリーがステキだったので文句はないです(そればっか)。彼は金田一もイケる!とわかった映画でもある。もう遅いけど。

奇談 キダン

1972年、民俗学を学ぶ大学院生里美は、東北の田舎に預けられていた7歳の時神隠しにあい、2ヶ月ほどの間の記憶が欠落している。16年たった今になって、断片的に記憶が戻り始めている。当時の新聞記事によると、一緒にいた新吉という子供は戻らないまま。その渡戸村は隠れキリシタンの里だが、そこから少し離れた”はなれ”というところは、明治になって禁教令が緩和されてからも伝統を守り続けている。そのため今では本来のカトリックとは違った混成宗教になっているらしい。里美が出会ったのは異端の考古学者稗田礼二郎・・あれ?「ヒルコ」の?こちらは阿部寛氏なので、沢田氏とは全然違うけど。秘密兵器も出てこないし。それはいいけど、見ていてもどうも話がまとまってこないと言うか。里美が全体的に消極的な感じで、物語をぐいぐい引っ張っていくわけでもない。かと言って稗田がど~んと真ん中にというわけでもない。ここはダム建設によって水没するらしいが、そんな気配も伝わってこない。里美役は藤澤恵麻さん。知らない人だが、ちんまりとまとまったかわいらしい顔立ちしてる。村の長老お妙ばあさん(草村礼子さん)も里美と同じ生還組で、一緒に暮らしている静江(ちすんさん)は何と天保7年に神隠しにあっている。神隠しにあっている間は年を取らないらしい。この二人は横溝映画に出てきそうなたたずまい。神父桐島が清水綋治氏だが、こういう役やるの珍しいのでは?こういうキャラはたいてい途中で命落とすものだが・・穴に入った時はてっきり・・と思ったが、生き残ったな。この映画で一番印象的なのは住職。何と言うか古典落語を聞いているみたいな・・重々しくて一語一語がはっきり聞き取れる。こういうしゃべり方をする人は・・できる人は・・なかなかいない。演じているのは一龍齋貞水氏・・講談師?やっぱりねえ。他に土屋嘉男氏、堀内正美氏、白木みのる氏。結局謎の多くは解決せず、謎のまま残される。里美や妙が戻れたのに新吉や妙の兄が戻れなかったのはなぜか。重太が取り残されたのはなぜか。神隠しにあった子供はラスト新吉を除いて帰ってきたけど、戻れたとしてこれからどうすんの?