おしゃれ泥棒(1966)

おしゃれ泥棒(1966)

これは確か映画館で見ていると思う。でも印象は薄かった。ストーリーがさっぱり飲み込めなくて。後にピーター・オトゥールのファンになって「ローズバッド」とか「パワープレイ」とか見に行ったけど、この時は全然。こんなに若くてステキなのにボネ(ヒュー・グリフィス)のコレクションが今回もオークションで高値をつける。でも娘の二コル(オードリー・ヘップバーン)はいつニセモノとばれるか気が気じゃない。ボネは絵の才能を贋作作りに使っている。今回チェリーニのヴィーナス像を展示会へ貸し出すが、これも二コルの祖父が祖母をモデルに作ったニセモノ。ある晩二コルは男がゴッホの絵を持ち出そうとしているのに気づくが、ニセモノだから警察に通報するわけにもいかない。この男・・実は探偵のデルモット(オトゥール)を泥棒と思い込んだ二コルは、科学鑑定にかけられることになった像を盗むよう頼む。しかし警備は厳重で・・。少し前「シャレード」を見たばかりなので、どうしてもオトゥールとグラントを比べてしまう。オトゥールの何と軽妙ですっとぼけていることよ。彼のブルーの目は大うつしになるけど、ヘップバーンの方は一定の距離より近くには寄らない。きっとシワが見えるからだろう。それにしても困ったオヤジだ。ラスト、もう引退するようデルモットに釘をされるが、すぐ変心する。盗み出した像はアメリカ人のコレクター、リーランド(イーライ・ウォーラック)の手に。これで彼がだまされたりしたのでは後味が悪いが、ちゃんと彼に渡ったのでホッとした。彼が二コルに贈ったダイヤの婚約指輪も返される。像を一人じめしたい彼から秘密が漏れることはない。美術館はボネから無料で貸し出してもらっていたから、金銭的な損害はなし。また、盗まれたのが保険の効力発生以前なので、保険会社も支払いの義務なし。ボネは刑務所行きを免れたし、二コルとデルモットは結ばれた。警備の連中だって、防犯装置の誤作動が続いたせい・・と言い訳できる。まあスイッチを切ったのなら誰か一人その場に残して見張らせるのが常識だが、たぶんフランス人はそんな想定外の仕事なんてしないだろう。何でこんなこと書くかと言うと、ほとんど誰も筋違いの金銭的被害、非難をこうむることのないような設定になっているってこと。だから後味がいい。