ティーマン頂(チヂ)の遺念火

ティーマン頂(チヂ)の遺念火

ある夫婦がマヤーガーに住んでいた。妻は毎日ティーマン頂の麓を通って名護に野菜を売りに行き、帰るのはいつも夜になった。

ある日、妻があんまり遅いので、夫は妻に'情夫がいるに違いないと疑い、いつもと違う服装でティーマン頂の麓で妻を待った。そこに妻が帰ってきたので、夫は妻の前に飛び出した。妻はびっくりして、変な男が現れたと思って、いきなりジーファー(かんざし)でその男を刺して、急いで家に帰った。帰ってみたが夫はいない。「はっ」と思って、急いでティーマン頂の麓まで戻ってみると、ジーファーで刺され死んでいるのは自分の夫だった。妻は悲しみ、その場で自分の喉を突いて自害した。

それから毎晩のように、遣念火がそのティーマン頂の麓を行ったりきたりするようになったという。

(勝山:昭和61年民話調査より)

昔、ティーマン頂という山にとても仲のいい夫婦が住んでいた。夫は村役場に勤めていたが、いつも帰りが遅く、妻は心配して途中まで迎えに行くこともあった。

ある日、あんまりいつも遅いので、妻は「他に女がいるんじゃないか」と思い、その晩は男に変装して、夫の帰りを待った。遅くなった夫は、何か胸騒ぎを感じながら帰宅を急いでいると、途中でいきなり男が飛び出してきた。強盗かと思った夫は持っていた小刀でその男を刺し、急いで家に帰った。妻にそのことを告げようとしたが、妻はいない。変に思って今きた道を戻ってみると、男に変装した妻がそこに倒れていた。夫は「自分の妻を殺してしまった」と悲しみ、その場で自害した。

その二人の魂が遺念火となってテイーマン頂に見えるという。

(旭川:昭和56年民話調査より)

出典:「わがまちわがむら