恥うすい坂

恥うすい坂[はじうすいびら]

源河の男と有銘の娘が恋仲になり、毎晩逢っていた。が、二人は実はいとこ同志であった。ある晩、男が約束の時間になっても来ないので、娘は心配になり、源河の部落に降りていった。その頃部落では祝い事があり、その男も参加していた。男の親戚の策略で、その男の側にわざと女を座らせて、娘の来るのを待った。娘が来ると、外に待っていた者が「今日はあの男の結婚式だ」といった。娘はたいへん悲しんで引き返し、自害した。何も知らない男は、時間に遅れたので急いで約束の場所に行くと、娘がいない。変に思って少し登って行くと、そこに娘が死んでいた。男は悲しみ、そこで自害した。翌日、二人が死んでいるのを見た人は、そのふたりを木の葉で覆ってやったという。

それから、そこを「恥うすい坂」といい、そこを通る時には必ず木の葉を置くようになったそうだ。(昭和60年民話調査より)