幸喜の一本松

幸喜の一本松 (こうきのいっぽんまつ)

リュウキユウマツ 枯死

形態 樹高 14.0m

樹冠面積 59.4㎡

胸高直径 80cm

胸高周囲 2.50m

推定樹齢 100年

特徴

根は島の上面を覆うようにのび、幹に近い部分は踏圧はげしく上面表皮がほとんどなく腐朽、一部切断もある。幹は南西に約 30度傾く、西面地際部が少し腐朽しているだけで空洞化していない。6m高まで中小径枝が切断あるいは折損、ひどい腐朽はない。6m高から上部枝は南~西に残存し,北東枝が途中で南にわん曲する。東枝はほとんど枯死。二段樹冠を作り,下段は盆形,上段は楕円形状をなす。北に根元が接した中径木マツが 1981年腐朽して弱っていたところへ台風にあい枯死した。活力3。

立地

国道58号から北西約100m砂浜が連続するやや孤立した海岸小島の、約10m高の頂上,約70㎡面の南西部の90° 崖上縁に生育する。景観がよいため人の往来が多く路圧はげしい。周辺はシャリンバイ、ススキ、トベラ、クサトベラなどより成る0,3~1.5m高の風衝地植生をなす。北から東に本部半島の八重、嘉津宇岳、名護市街地、名護岳、七曲りを望み学生時代に詠んだ拙歌が思い出された。南西には幸喜の砂浜と山地、遠く恩納岳を望むことができる。

名護湾の青く澄みよしその彼方 砂の真白に街の居並ぶ

幸喜の浜に突き出た岩の土に、通称「一本松」でよく知られている松が見え、どことはなしに趣きが感ぜられておもしろい。それは、松という木が,誰もが知っていて昔から親しまれてきた象徴的な木であるせいもあるだろうが、ここの松を近寄って見ると、過去の多くの試練に耐えてきた様子がわかるのである。岩の上のまるっきり肥えていない土壌に根を精一杯張り、潮風を受け、白蟻の侵入 や幾度となく襲ったであろう台風など、決してよい環境とはいえない所に,、どうして根をつけることになったのか。実はこの「一本松」は、根元のくっついた二本の松で,下枝のように見える小さい方の松は、今度の台風で致命的な状態になっている。

この松は、空と山を背景に、黒岩の上で、曇った冬の日、春の明け方、緑葉の燃える夏、夕映えの美しい秋に、いろんな表情で、なにか私たちに声をかけている気がするのである。国道58号線を通って名護を出る人に「運転に気をつけて行ってこいよ!」とか、浜辺で遊ぶ子供達の移り変わるのを見て、「良い子になれよ、力強く生きなさい!」とかいっているのだろう。

決して大きく、枝を立派に広げているという訳ではないが、大事にしたい親しみのもてる木である。 『市民のひろば』昭和56年12月 森田 猛

出典:「名護市の名木」