大堂原貝塚

大堂原貝塚[うふどうばる・かいづか]

名護市字済井出(沖縄貝塚時代早期~後期前半)

大堂原貝塚は、昭和54(1979)年に行われた名護市遺跡分布調査で発見された遺跡。平成10~16(1998~2004)年度にかけて、古宇利大橋建設に伴う緊急発掘調査が行われ、沖縄貝塚時代早期前半(縄文早期相当期、約6500年前)から後期前半(古墳相当期、約1400年前)までの遺構や遺物が見つかった。

貝塚時代早期前半に相当する層から、爪形文土器や県内でも最古級の土器である薄手無文の土器のほか、イノンシの骨やその骨を加工した骨製品が出土した。また、同じ層から埋葬人骨も二体出土しており、約6200年前の人骨であることが分かっている。貝塚時代早期中頃の層(縄文前期相当期)からは、熊本県の曽畑[そばた]貝塚を標識とする曽畑式上器や、条痕文[じょうこんもん]土器、室川[むろかわ]下層式土器が、貝塚時代前期の層(縄文後期相当期)からは伊波式土器や奄美系の土器などが出土している。

貝塚時代後期前半の層(弥生~古墳相当期)からは、イモガイやゴホウラを集めた貝の集積が十数基見つかった。これらの貝は腕輪や貝製品の材料となるもので、九州地方と交易をするときの交易品であり、その見返りとして手に入れたと者えられる九州地方の弥生土器や甕棺[かめかん]の一部も出土している。また、同じ層から新たに埋葬人骨も二体出土したが、これは約900年前のグスク時代の人骨であった。その時代に、貝塚後期の層を掘り込んで埋葬されたものと者えられる。県内でグスク時代の人骨はあまり見つかっておらず、貴重な発見となった。

沖縄諸島で出土するほとんどの形式の土器が出土しているほか、石斧[せきふ]やたたき石などの多様な石器や腕輪、指輪などの貝製品、イノシシの骨以外にクジラの骨を利用した骨製品なども出土しており、沖縄の先史時代を知る上での貴重な資料が得られている。