1999.10 モバイルあれこれ

わーくすてーしょんのあるくらし (22)

1999-10 大橋克洋

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皆がモバイルコンピュータを持ち歩いているのを見ると、そのよ うなオモチャが嫌いでない私としては、つい衝動買いしそうなのを ここしばらく、ぐっと押さえてきました。 最後に買ったそれらしきものは3年前の東芝のリブレットでした が、結局キーボードが小さくて文章を打ちにくく最近は殆ど持って 出ることはありません。

さて外に持って出て何に使うかを考えてみると、まず会議などの 議事録をとるための「ワープロ」が主体でしたが、最近は「e- mail」や「Web」などインターネット関係のウエイトが増えてきそ うです。 ワープロだけであれば昨年買った薄型ノートであるシャープのメ ビウス + Emacs で十分なのですが、あれに携帯電話を繋げてメー ルや Web を見るにはちゃんと腰を落ち着けねばなりません。もう 少し手軽に使える携帯端末がないかと色々模索してきました。 そして半年ほど思案したあげく決めたのが今日のお話です。

○ 私がモバイル・マシーンに要求する条件

ミニ・パソコンは、今迄の経験から結局中途半端に終わってしま いそうです。欲ばらずに、どこかで割り切りが必要と思い、自分は どんなものが欲しいのかを考えてみました。

    1. ポケットに入れて携帯できるもの

    2. 最大でもリブレット程度

    3. 片手で持って操作できることが望ましい

    4. 従ってリブレットに携帯電話を繋いで使うのはペケ

    5. e-mail が簡単に読めること

    6. Web も見られればさらにベター

こんな条件を満たすものとして、まず思い浮かぶのはシャープの ザウルスです。シャープの Mebius を持つ私としては、食指が動き そうになるのですが、余り皆が使うものは敬遠するへそ曲がり精神 で、ザウルスはやはり使いたくありません(かなり優れていると思 うのですが)。 カシオから出ている CASIOPEIA E-507 は、デジカメがつけら れ、動画を見たり、MP3 で音楽を再生できるということで、かなり 食指が動きました。一時はこれと IBM から販売している WorkPad のどちらを選ぶかで真剣に悩みました。

しかし CASIOPEIA は、秋葉原で WindowsCE の載った画面を実際 に見て一気に食欲減退してしまいました。残った選択肢は WorkPad でしたが、やはりすっきり踏みきれません。そのユニーク なユーザインタフェースは凄く魅力的なのですが、e-mail を使う には附属のモデムを繋げたりしなくてはならないのが美しくありま せん。本体に携帯電話が内蔵されてていれば、一発で決まりなので すが。

そんな時、iモードの携帯を使っている人に感想を聞く機会があ りました。私の条件をすべて満たしているようです。販売店でたず ねると、今まで使っていた Docomo の携帯の電話番号がそのまま使 え、買い替え料金も15,000 円程度のよし。これで心は決まりでし た。

○ 私のモバイルは携帯電話 iモード できまり

近くの販売店でその日のうちに Docomo の携帯を iモードに機種 変更してもらうことができました。何種類かあるうちのパナソニッ クのものにしました。これが一番軽くてコンパクトと思われたから です(最近は無造作にズボンのポケットに入れて持ち歩いていま す)。色がシルバーしかないのはちょっとイヤです。私は以前使っ ていたブラックが欲しいのに。

電話番号以外の主な操作は、真ん中にあるデベソのような出っ張 りを上下左右に動かして操作します。限られたコントローラを使っ てなかなか使い易くできているのには感心しました。かねがね、日 本のソフトウエアのセンスのないことを嘆いていたのですが、これ はなかなかのものです。そうかあ、、、センスのないのはなまじ本 業のコンピュータ屋さんであって、違う畑には結構良いセンスをし ている人間もいることを知り、やや安心しました。 マニュアルを眺めて、大体の機能に目を通しましたが、自分が使 う機能は10分の1も行けばよい方と思います。

そうそう、面白いのは音声認識機能です。「赤!」と命令すると 赤いバックライトが点灯します。「緑!」で緑のバックライトが、 「消灯!」でバックライトが消えるなど、結構遊べます。自分で登 録する機能も試してみましたが、余り認識率は良くないようです。 もし認識率が良いとしても、道を歩きながら携帯に向かって奇異 な言葉を発するのも恥ずかしいので、私なら「もしもし」とか「ど うも」とかいう言葉に命令を割り当てることになるでしょう。

○ 釣革につかまりながら片手で e-mail が気軽に読める

電車の中でコンピュータのフタを開いて e-mail を読むというの は、どうしても必要以上に他人の目を意識してしまいそうで、私と してはやりたくありません。 しかし携帯電話ではそのようなことを全く意識せずに、電車の中 で気軽にメールをチェックできるのに、驚きました。

デベソをチョイチョイと操作するだけで、あらま、、、勝手に電 話を接続して e-mail を取り寄せてくれるのです。メールが来ると 勝手にあちらから電話を繋いで送ってもくれます。文字数制限があ るので、あまり長いメールは途中で切れてしまいますが、メールの チェックにはこれで十分用が足ります。 買ってすぐ、瀬戸内海の小豆島で会議があり出張することになり ました。最近はいくつかのメーリングリストで話題が盛り上がって いることもあって、一日に80通ものメールが届きます。診療の合間 にどんどん読み捨てていても、しばらくすると沢山たまっているの に驚きます。

そこで出張中も e-mail をチェックできると便利です。私の使っ ている OPENSTEP や MacOS X Server のベースは UNIX ですから、 メールの転送はお手のものです。自分の Home directory に .forward というファイルを置いて、その中に転送先のメールアドレ スを書いておけば勝手に転送してくれます。私宛のメールを iモー ドのアドレスへ転送するよう仕掛けて出かけました。

小豆島の海岸の防波堤に腰掛けて、あるいはバスの中で、次々と 届くメールをチェックすることができました。読むのは天国です が、返事を書くのは地獄です。電話のテンキーからの入力では、せ いぜい頑張っても1行書けばよいところでしょう。返事が必要な メールは、東京へ帰ってからゆっくりと書くことにしました。

○ 欲をいえば

i モードからは画面は小さいものの Web もしっかり見えます し、これは便利です。接続も e-mail と同様、デベソをちょこちょ こっと操作するだけで、あっけなく繋がってしまいます。パソコン ですと iMac がいくら簡単だとは言っても、プロバイダーに接続す るための IP アドレスがどうのこうのという設定だけはやらねばな りません。携帯電話の場合はもう設定されていますので、文字通り 買ったその場からすぐ e-mail や Web に接続して使うことができ ます。

ということで9割以上満足していますが、もしわがままを言わせ てもらえるなら、あとはメールの返信でしょう。テンキーからの文 字入力は耐えるとしても、一旦入力した文字を消したり、移動した りなどの編集操作については使いやすくありません。これも、もう 一工夫で使い物の域に達すると思うのですが。

もう一点、私の買ったパナソニックのものはとても満足していま すが、ひとつだけ直して欲しいのは、私がデベソと称する操作ボタ ンの先が比較的尖っているので、数十通ものメールを削除する操作 をすると、親指の腹がすり切れそうに痛くなるのです。もう少し先 を丸めると同時に、操作を軽くして欲しいと思います。 ということで、現在私はモバイルとして携帯電話 iモードで非常 に満足しています。しかし、それはそれとして前述の WorkPad も 面白そうだと思っていますので、もしオモチャを買う余裕ができた 時には衝動買いしてしまいそうな危険も感じているこの頃です。

余談ですが、香川県には私の次男が勤めています。長男は医者に なりましたが、次男は「どうしても船を作りたい」ということで、 坂出というところの会社に就職して船を作っているのです。次男の ところを訪れたことがないので、帰りに寄って高松・坂出のあたり を案内してもらいました。

で、彼と高松の高速船の乗り場で待ち合わせたのですが、時間が 過ぎてもなかなか現れません。やがて、私の携帯へ電話がかかって きました。船着き場がいくつかあるので、彼は別の所へいるようで す。「おい、港の方を見ると赤いマストのフェリーが入ってくるだ ろう。そちらからは、あれがどの方向に見える?」「こちらからは 右舷が見えている」というような会話をしながら歩いていると、遠 くの方で携帯を耳に当てながら手を振って走ってくる次男が見えま した。やあー、面白い世の中になりましたねえ。ちなみに、次男も 最近 iモードに替えたそうです。私の知らない使い方を教えてもら いました。

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