2006.06 Seagaia meeting 2006 こぼれ話

わーくすてーしょんのあるくらし ( 160 )

2006-6 大橋克洋

先月訪れた札幌の時計台

先月書いた「気の持ちよう」のひとつですが、 立ち方のコツをまた新しく会得しました。 1年ほど前から足腰の鍛錬のため、 ノートブックの入った 3Kg ほどのアタッシュケースを片手にさげ、 30分ほどの都医通勤電車の中を 何もつかまらずに立つ訓練をしています。

最初の頃は電車の揺れに抵抗し踏ん張ったり、 揺れを予測しようと努力したりしていました。 しかし、これも3月に書いた「站椿(たんとう)」のコツで立つことにより 大分安定してきました。 それでも時々は、揺れに乗り切れず足を踏み出してしまうこともあります。 それに明らかな站椿の姿勢は一般の人から見て 余り格好の良いものではありません。 やはり、スッと立っていたいものです。

先日のこと電車の中で、 サーファーがサーフボードに乗った感覚を想像してみたりしていました。 そのうちふと、両膝の間に柔らかいボールが軽く挟まっているような感覚を覚え、 電車の揺れに身体が自然に順応することを発見しました。 この「膝に挟んだ柔らかいボール感覚」により、 動揺する電車の中での自立がかなり無意識にできるようになったのです。 このボールというのは、 アバウトな重心をイメージしているのだろうと思います。

「膝にはさんだ柔らかいボール感覚(おそらくこれは、 人により表現方法が異なるのだと思います)」を、 今度は歩きながら試してみています。 歩きをもっと上下動少なく滑らかに、かつ疲労を少なくしたいのです。 工夫と努力により日々新しい感覚を発見するというのは、 実に充実感があって楽しいものですね。 こりゃあ、まだまだ人生を楽しめそうだわい、、、

○ Apple 社としてよみがえった NeXT 社

MacBook を愛用しています。 先月も書いたように、この黒い艶消し筐体はまさに NeXT マシーン。 ついに NeXT が Apple として完全によみがえったのです。 NeXT 社が Apple 社に吸収合併になったのは 10年前1996年暮れのことでした。 それから半年後、このコラムで私が書いた文章を読み返してみました。 1997.06 帰ってきた NeXT です。 われながら的確に「NeXT 社の吸収合併は悲観的な内容どころか、 むしろ Apple を再生させるに違いない」ことを自信をもって予測しています。 Jobs 健在な限り これは続くでしょう。

Jobs と言えば、面白いものをみつけました。 Apple 本社のある クパティーノ市議会でのスピーチです。 Jobs ファンは必見、、、 と書いたのですが、あれ? 昨日見られたところで今日は見られなくなっていて、別のところで見つけました。 また時間が経つと見られなくなるかも知れません。 ついでですが、今回見つけた www.youtube.com は米国の画像配信サービスで、 日本からも200万人以上のユーザが利用しているのだそうです。

市議会だというのに、Jobs はいつもの ヨレヨレの黒いトレーナーにジーンズ姿。 しかしさすが Jobs のトーク、市議にもかなり受けていたようです。 内容は「Apple 本社ビルは築約20年。 社員増加にともないビルが増え、 シリコンバレーだけで30ものオフィスが散在。 そこで約50エーカーの土地に新しいキャンパスを建てたい」とのことでした。 これから本社のデザインをし、完成には5年近くかかるとか。 Jobs が関与する社屋のデザインとあっては、 デザイン史に名を留めるものになるのでしょうね。

先月 NY5番街にオープンした AppleStore (ガラスキューブが入口の地下店舗)などから見ても、とても楽しみですね。 往年の SONY も製品と社屋とのイメージに非常に共通性がありました。 シンプルでクリアな SONY のデザインは、 Apple のデザイン・センスに通じます。 HONDA も SONY も、 昔のオリジナリティーや元気がなくなってしまったのはとても残念です (私は本当は国粋主義者)。

○ Seagaia meeting 2006 こぼれ話

先月書いた Seagaia meeting in SAPPORO のこぼれ話です。

羽田から同行した鈴木君・小塚先生と 札幌駅ビルの「ラーメン共和国」で昼食をしましたが、 その看板をデジカメに収め急遽プレゼンに追加することになりました。 「長年 皆が医療データ相互利用をめざしてきたが、未だに実現されない。 原因は『コードやシステムを全国統一すべき』という方向性にあるのではないか。 相手の個性を尊重しつつ、コミュニケーションをはかる。 統一国家をめざすより合衆国をめざすべき」 というプレゼンを予定していたのです。

会場についてデジカメの写真をプレゼンに追加しようとすると、 データ移行手段がありません。キワムさんのメモリーカード・リーダーを借用。 翌日、札幌駅のビッグカメラまで徒歩20分ほど。買い出しに行きました。 メモリーカード・リーダ、コンパクトなイーサ・ケーブル、 テーブル・タップ、カメラのソフトケースなど買い込みました。 「これで何でもコイ」と、 再び会場のコンベンション・センターまで45分ほど歩きました。 札幌にしてはやや暑い日だったようですが、 空気が冷たく歩くにはとても気持ちのよい気候でした。

「この日のために」購入した MacBook

black を持参。 たまには初物を見せびらかすのもよいかなと、、 :-) 登場後まだ10日ということで、結構な関心を集めたようです。 いつも PowerBook が沢山目につく Seagaia meeting の会場でもさすがに MacBook はなかったようです。 札幌ビッグカメラ店頭には、すでに black and white が陳列されていましたが、、

同行した3人の宿泊したジャスマック・プラザ・ホテルには大浴場があります。 初日はバタンキューでしたが、翌日はしっかり入らせてもらいました。 案内図に露天風呂とあります。どういう構造なのかな?と興味がありました。 ホテルは高層で大浴場は3Fにあるのです。 入ってみると窓はなく景色が見えるわけでもありません。 翌日、朝風呂に入って初めてわかりました。前夜は暗くてわかりませんでしたが、 見上げると上方だけが外に解放されています。 井戸の底で風呂に入っている感じでしたが、 札幌の冷たい外気と41度ほどのお湯とのコントラストは なかなか気持ちのよいものでした。

鈴木君が予約してくれた部屋はインターネット・リーチャブル、 もひとつおまけにマッサージ・チェア付きでした。 初めてマッサージ・チェアを経験してみて 「ほおー、うまく出来ているもんだな」と感心。 固い2つのボールが背中をグイ、グイ、グイと押しながら動いていくのには 最初 イテテ、、という感じですが、結構馬鹿にしたものではなさそう。 もう少し歳をとるとクセになるかも、、

以前のホテルと違い LANケーブルが部屋に常備してありません。 帰ってきてまた1Fのフロントまで降りるのも面倒なので、 インターネット接続は翌日にしました。 MacBook を開き作業しようとすると 「AirMacに繋ぎますか?」とメッセージがでます。 半信半疑でやってみると、WEPキーなしであっさり外と繋がってしまいました。 翌朝 切れてしまったところを見ると、誰かのプライベート無線 LAN のようでした。 かく言う私も今回は AirMac basestation 持参で、 プログラマーズ・キャンプではこれを提供し皆でLANをシェアしました。

最終日も札幌は良い天気でしたが、 東京はしっかり雨模様で気温も札幌より低い18度。 雨雲で羽田の到着滑走路は混み合い 10機以上が着陸待ち。10分ほど到着が遅れました。 東京もこの肌寒さで、半袖は私くらいしか見かけませんでした。

○ お札と財布のはなし

Seagaia meeting の HL7 の講演への意見で 「医療データをそんなに細かく分類して書かなければいけないのか。 普段さっと書いているカルテをそんなに細かく 分けて書かなければならないのは、とても嫌だ」という発言がありました。 これは一面、確かに言えることですね。

私も「Google など最近の検索・分析技術を見ていると、 もうデータの粒度を細かくすることに エネルギーを使わなくても良いのではないか。 平文でもかなりお利口に自動解析できつつある。 少なくとも人間が判読できるものは、機械的に判読できるはず」と考えています。 MML についても、 余りにも多い事項を一体化して 必須で詰め込まねばならない構造になっています。 最初からこれが気になっていて、 何とかもっとシンプルな構造にならないかと長年考えてきました。

Seagaia meeting でプレゼンする私

キワムの写真館 から使わせてもらいました

この質問でフトひらめいたものがあります。 以前から MML は「入れ子構造」にして、 機能を奇麗に分けることができるはずと考えてきました。 機能分離のひとつとして、セキュリティーやオーナーシップの層があるな、 と思いつきました。 現在の MML は、紙幣一枚一枚に鍵をかけたり 「誰それのもの」と書き込むような構造です。

お札には所有者を記述することも 鍵をかけることもありません。 記述されているのは、金額と発行者、固有の id 番号くらいです。 金額がコンテンツで、その他はヘッダー情報ですね。 財布に入れることにより所有者が決まります。 「私の財布に入っているのは私の紙幣」で、 財布ごと奥方へ渡せば紙幣も奥方のものになります。 財布を金庫にしまって、安全を確保することもできます。

現実世界では長年の試行錯誤から 「紙幣というコンテンツと、所有権などの運用は別にする」という具合に 機能分離しています。 現在の MML では「コンテンツ」と「運用」とが一体化されています。 ソフトウエア上では紙幣一枚一枚に簡単に鍵をかけられるため、 このような実装になったのだと思います。 両者は分けるべきでしょう。

コンテンツは素朴にコンテンツであり、運用を知る必要はない(というか、 運用はどんどん変わる可能性がある)のです。 一体化されている複数の機能を奇麗に分離し、 シンプルにすべきと確信しました。 そうすれば、コンテンツはデータ記述に特化でき、 所有権やセキュリティーなどの運用は財布に任せ、 格段に扱いやすくなるはずです。

○ break the glass functions

Seagaia meeting でのニュージーランド ORION 社のプレゼンの中で、 「おー、なるほどー。確かにそういう手法はあるな」と思ったものがあります。 これは、よく電車の客席などある「非常時にガラスを割って押す赤い非常ボタン」です。

医療データは十分セキュリティーを配慮して扱わねばならないわけですが、 それでも現場では権限のない医師が情報を見て患者さんの緊急事態に 対応しなければならないこともあり得ます。 そのような時に「ガラスを割って押す非常ボタン」です。

しかし、そんな手段があるということになれば、 当然データ確保の信頼性が落ちるわけですね。 この話を聞いた時、私は「公共施設で非常ボタンを押せば、 非常ベルがけたたましく鳴りわたって 誰かが非常ボタンを押したことは万人に明白になる」、 それと同じにすれば良いではないかと考えました。 はたして、プレゼンを聞いてゆくと 私の考えと同じような対応のようです。 break the glass を行うと 「誰が緊急でガラスを割ったか」が、 管理者その他に緊急で知らされる仕組みです。 これでガラスを割るのは、気軽にできる行為ではないということになります。

これから何十年も後、バーチャルな世界が根付いた後であれば別ですが、 少なくとも現状では 「お札と財布のはなし」と同様、下手に考えをめぐらせるより 「我々の世界で現実にどのように処理されているか」 を考える方が絶対に正解と思います。 前述のように 万人が長い時間をかけ試行錯誤した結果、そのようになっているわけでから、、

○ Mail の分類方法をあらためる

MacOSX 標準の Mail リーダーで IMAP を使っていると、 メールの内容を分類してフォルダーごとに収納することができます。 もちろん設定をしておけば自動分類もできます。 MacOSX10.4 からは、 さらにスマートメールボックスという機能が追加されました。 OS 標準のスポットライトという全文検索機能を利用したものです。 検索条件をつけたメールボックスを作っておくと、 その条件により勝手に整理してくれます。 メール実体は一括保管されていますが、 スマートメールボックスの中に検索されたメールの見出しと 実体へのひも付けだけが収納される仕組みです。

今までのフォルダーの中のメールをすべてひとつの メールボックスに放り込み、スマートフォルダーで整理することにしてみました。 1週間ほど使ってみた感想としては、 かなり快適ですが唯一不便かなと思っているのは、 後で返事を書かなければいけないなど「未決メール」をどう処理するかです。

今までは「SUSPEND」というフォルダーを作って放り込んでおき、 処理が済むと本来のフォルダーへ移していました。 今度はフォルダーを作らない方針なので、 考えた結果「フラッグ」のついたメールだけを「SUSPENDメールボックス」 へ収納するような設定にしてみました。 MacOSX のメールには、一通ごとに (丁度ポストイットを貼るように)「レッド・フラッグ」 のアイコンをつけることができます。

この「レッド・フラッグ」は、今までは「重要なメール」につけてきました。 今度は重要なメールにつける印がなくなってしまったので、 困ったなと思っています。 もう1種類(どうせなら5種類くらい多色の)フラッグが欲しいところです。

、、このような設定でしばらく使ってみました。 やはり「SUSPEND」の処理が不便です。 ということで、「SUSPEND」のみ IMAP フォルダーを作り、 そこへ一時置きする形を併用することにしました。 この中に置いたメールは、処理が済むと一般メールのフォルダーへ戻します。 これで大体メールをうまく処理できるようになりました。

そうそう、 今までは迷惑メールのゴミフォルダーへの自動移動をしていませんでした。 誤判定により正常なメールがそちらへ移動され、 数日後に自動削除されることを心配したからです。 試しに自動移動の設定にしてみました。 その結果、誤判定は結構少ないことがわかりました。 自動処理により、日々かなりの迷惑メールが自動処理され便利になりました。 毎日迷惑メールフォルダーをチェックはしていますが、 誤判定はかなり少ないようです。

○ RemoteDeskTop

Intel Mac mini が出たので早速購入した話を書きました。 現在それを書斎のメインマシーンとして使っています。 初代の Mac mini はワークグループ・サーバとして使うことにしました。 机の下をのぞくと、初代 Mac mini と Intel Mac mini が重なっていますが、 さらにその下に Mac mini とまったく同じデザインの HD があり、 3階建てとなっています。

初代 Mac mini はサーバとして使うので、 ディスプレイやキーボードは余り使いません。 従って通常はディスプレイやキーボードが繋がっていません 、、と言いつつ使えないと不便でもあります。 ということで、Apple 社から RemoteDeskTop というソフトウエアを購入しました。

これをインストールしておくと ディスプレイレスのマシーンを、 別のマシーンの画面やキーボードで操作できます。 以前も同様のフリーウエアを2つほど試してみたことがあるのですが、 いずれも使い勝手が今いちで使わなくなりました。 しかし RemoteDeskTop は優れもので、 これがあればディスプレイレス・マシーンの運用も実用的なものとなります。

○ ビル解体(最終リポート)

2004年12月からリポートしている近所のビル解体、 始めた以上最後までリポートしないとどうも気持ちが悪いので、、

解体後の土地に、ようやく新しいビルが完成しました。 以前よりずっと高いビルが建つとばかり思っていたのですが、 解体前と余り変わらない高さでしたね。 完成は先月か先々月なのですが、どういう訳かまだ入居していないようです。 これにて最終リポートとします。

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