2016.05 やる気があれば進歩もある

わーくすてーしょんのあるくらし (279)

2016-5 大橋 克洋

今月のタイトルは「やる気があれば進歩もある」。74歳になっても長距離ウオーキング少しずつ距離を延ばしてきました。大切なのは肉体年齢より精神年齢。もちろん肉体は年齢相応に変化していきますが、多くの人が見るからに年寄りになるのは精神的なものによる方が大きいのではないでしょうか。「もう歳だから」と思う気持ちに勝ってトライしてみることも必要。やってみれば案外できるのに、、

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◯ 今月の歩術

2年前にチャレンジした「自宅から神奈川県平塚まで50キロの中原街道制覇」は、早々に思いっきり足に豆を作り中間地点でリタイア。どうにもシャクで数日後、電車でリタイア地点から残りの行程を自宅まで歩き2日間をかけて終わりました。

失敗した原因は「余りにも準備不足の無謀なチャレンジ」だったこと。初めての長距離に備え靴下を二重に履いたことと普段の散歩で履きなれたとはいえウオーキング用シューズのサイズにやや余裕があったこと。靴の中で足が遊んでしまい10キロそこそこで早くも豆を作ってしまいました。そして最も大きな原因は50キロの長距離に備えた充分な歩き込みがされていなかったこと。オリンピック選手はじめ色々なアスリートのやることを見ていて、このようなことを反省しました。

今年の目標は「自宅の平塚橋から平塚駅まで50キロを一日で歩ききること」。ここ2ヶ月にわたる準備ウオーキングを経て、特に福生までの47キロを達成し、いよいよ平塚までの歩きに挑戦することにしました。これ以上後に延ばすと暑い季節に入ってしまいます。前回は始発電車で平塚まで行き、そこから自宅へ帰ってくるコースをとりました。これだと平塚出発が早くても7時ころになってしまいます。今回は出発を早くするため自宅から平塚へと逆方向にしました。前回は初めての長距離とあって少しでもモチベーションを上げるべく自宅へ向け帰ってくるコースをとりましたが、長距離に自信をつけてきた今回、むしろ早い時刻に出発し日の高いうちに到着する方を選びました。

「グレート・トラバース:二百名山一筆書き」の田中陽希さんを見ていても、朝5時か6時に出発し、早い時は午後3時や4時に帰着しています。早出・早帰りのメリットとして、予期せぬトラブルにも時間的余裕を持つということも大きいですが、気温の上がらぬ早朝に行程の多くをこなしてしまうメリット、そして朝の清々しい空気を吸い、次第に昇る朝日を浴び、とても気持ちよく歩けるということがあります。

◯ 平塚から平塚へ53キロを歩ききる

5月1日、やや肌寒い朝ではありましたが本日から5月ということもあり半袖シャツで朝5時20分に品川区平塚橋の自宅を出発。中原街道を下り多摩川の丸子橋までは通い慣れた散歩コース。丸子橋を渡り神奈川県に入ると、イザ!と気持ちが引き締まります。

青空ですが日差しはそう強くはなく、ひんやりとした空気が気持ち良い。最初の10キロまで半袖ではうすら寒かったものの、それ以後は半袖を選択して良かったという感じ。

丸子橋:多摩川を渡って本格的にいざ出発

多摩川を渡ってしばらくすると道は小さくクランク状に曲がる。武蔵中原駅を過ぎ街道は第三京浜に沿い、やがてその下をくぐる。中原街道を作るにあたり狼煙をあげながら直線をめざしたというだけあって多くは真っ直ぐな道だが、大きな丘陵が幾つもあるので、長い坂道を何度も昇り降りしながら越えて行くことになる。仲町で道は大きなクランク状に屈曲。このあたりには巨大な団地群、第三京浜を越したあたりの丘陵から遠方遥かに望めていた大きな建物がこれだったのか。やがて街道は狭くなり、歩道も幅50センチもなく脇を通り過ぎる車から身を引きながら。しばらく行くと緑産業道路に合流し幅広く立派な道になる。ここで行程の約3分の1距離17キロほど。鶴見川を渡り横浜線を越し、再び大きな丘陵を登る。確か2年前この上から遠方に武蔵小杉のビル群が見えたよなあ、と振り返ると見えた見えた、遠方遥かにビル群が。2年前これを眺めて「あそこを越えればもう東京」と元気がでたものです。しかし、あそこまで20キロもあるんだなあと。この丘陵の頂上には長坂谷公園という大きな緑地があり、一休みして持参のスポーツドリンクを一口。よこはま動物園ズーランドの看板あり、ここで行程の丁度半分。脚の方はまだ大丈夫。やがて2年前に途中リタイアした相模鉄道の三ツ境。前回、ここにたどり着くまでの10キロほど、豆は痛むし脚はくたびれ切って這うように三ツ境駅までたどり着いたものですが、今回はまだ余裕十分。そろそろ昼食の時間になり、前回昼食をとったサイゼリア大和代官店に11時半到着。ハンバーグ・ライスと生ビールで一服。店を出ると海上自衛隊の厚木航空基地のフェンスに沿った道。前回は自衛隊の航空機が駐機しているのが見えたが、今回はほとんど居ないようだ。30キロを越えると、そろそろ脚にも来はじめる。バス停のベンチや生け垣の縁石に腰をおろしては水分補給や iPhone で行程や時刻を確認して時間を過ごす。やっと寒川町に入る「ここまで来れば平塚はすぐ隣」と思いつつ、寒川町の表示は結構続く(元気な時ならあっという間に通り過ぎるのに、歩度が落ちたということ)。やがて相模川の土手の道を行く。相模川では数台のウォーターバイクが、派手に水しぶきを上げている。相模川にかかる橋を越え平塚市に入る。ここで縁石に腰掛け一休み、事前に調べておいた平塚駅前の居酒屋が開く16:45に居酒屋到着。ついに念願の中原街道制覇。やったね。ここで食事をして電車で帰宅予定。新鮮な刺身をふんだんに食べられると期待して入ったが、いわゆる居酒屋チェーン店、楽しみにしていたカツオの叩きもマグロ丼もはっきり言って不味い、ジョッキの生ビールで喉を潤せたのだけが幸いだった。途中スポーツドリンクで水分補給してきたが、脱水状態だったのか帰宅してもやたら喉が乾く。昼食や休憩時間を除く所要時間は10時間ほど距離53キロ。生涯の長距離記録を更新。

◯ 長距離の目的を達成して

これで長距離ウオーキングはひとまず終了とします。「江戸時代の人のように歩けるようになりたい」という動機で始めた長距離ウオーキング。しっかり準備し慎重に実行すれば、長距離も案外苦労せず達成できることを実感しました。

長距離のコツを会得するまでは、やたら気ばかりせいて結局疲労を招いていたのですが、脚を疲れさせないコツと長距離のペースを掴んだことにより目的を達成できました。翌日、脚の疲れは皆無でしたが、腰のあたりがやや強張っていました。現状で会得している脚を疲れさせないコツは「脚や踵は脱力し腰で歩く」でしょうか。操り人形の下肢をイメージしてもらえば良いと思います。「腰で歩く」のイメージは、歩術の研究を始めた頃、坂を登っている時に会得したものです。

帰りに平塚から乗車した東海道線は藤沢で湘南新宿ラインに変身、乗り換えは武蔵小杉の1回だけ。便利になりましたねえ。たったの1時間12分で地元の武蔵小山に到着してしまいました。江戸時代の人には、とても信じてもらえないでしょうね。ドラえもんの「どこでもドア」みたいなもの。

中原街道はほとんど一本の直線とはいえ、ところどころにクランク状や二股に別れるところがあります。そんな時 iPhone の Google map で経路確認することが何度かありました。家内から「気温が上がってきたので水分補給を忘れないように」と LINE でメッセージが来ることもありました。何キロ歩いてきたか確かめることもできますし、考えてみれば iPhone がなければこれほどスムースには行かなかったはず。便利な時代になりましたねえ、、

◯ そろそろ怪しくなってきた外来の iMac

ゴールデン・ウイークが終わり、朝の診療を始めようと外来デスクの iMac のスリーブを解くと「あれ?」画面中央辺りに大きな矩形の影が、、液晶がそろそろやばくなってきたようです。マシーンを reboot してみましたが影は消えません。しばらく時間が立つうち、幸いに影は薄くなってきましたが、液晶がやばくなってきたことは確かなようです。このマシーンの履歴をしらべてみると購入して丁度7年目を過ぎるところ。私の経験によればマシーンの平均実働寿命は5年程度ですが、この38年間に使ってきた50台以上のマシーンの中でもこの iMac は5番目の寿命。まだピカピカのマシーンですが、長寿命の部類に入ります。

さあーて、修理に出すか、思い切ってリプレースするか。修理に出す場合、以前の白い iMac がそうだったように意外と高い修理代になったりすると結局新しい iMac を購入することになります。一方新しい iMac を購入する場合、現在使っている24インチは外来診療に使うには丁度良い大きさなのですが、現在販売されている iMac は21.5インチか27インチのみで24インチのサイズは消滅しています。27インチは書斎で使っていますが外来にはこれほど大きい必要はありません。かと言って21インチにダウン・サイジングすると患者さんにエコーの写真をプレゼンする時などちょっと迫力に欠けそうですし、文字が小さくなるのも心配です。しかし実際には21インチでも精細な画素をもつ Retina 4K ディスプレイを選択すれば問題は無いのかなあ、などと、、ちょっと悩みどころ。

、、などと書いているうち、画面中央を覆っていた大きな四角い影は消えてきました。まだ本格対応まで、ちょっと間がありそうです。もうちょっと悩んでみることにしましょう。悩んでいる間に iMac のアップグレードがあるととても嬉しいのですが、アップグレードがあるとしてもこの秋以降でしょうから、それまで液晶がもってくれるか、それが問題だ。

◯ やっちまったい キーボードにコーヒー飲ませる

昨日、キーボードのそばに置いてあったアイスコーヒーのグラスを倒してしまいました。「あっ」と思いグラスを起こして、すぐキーボードをティッシュペーパーで拭き、しばらく経ってからキーを叩いてみました。反応しなかったり・変な文字が出たり・キーを打っていないのに勝手に文字列が連続して入力されたり、となかなか正常に戻りません。

そこで荒療治、エイヤッとキーボードを水道水で洗い、裏返しにして一晩干しておきました。翌朝、キーボードを接続してみると同じような症状。ネット上で情報をあさってみました。砂糖の入った飲み物をこぼした場合、中でショートしたり時間を経てから錆びてしまうなどの症状がでるらしい。基盤交換する必要ありという結論のようです。以前も飲み物をこぼした経験はありますが、幸い上記の処置で正常にもどってくれたのですが、最近の薄くコンパクトになったキーボードと昔のラフな作りのキーボードとの違いもあるのか。

AppleStore から Magic Keyboard をポチりました。今回は書斎のキーボード、つい先日、外来のキーボードが bluetooth に繋がらなくなってリプレースしたばかりなのに、、

◯ Apple 製品の数 そろそろ整理しては?

こまごまと雑多な機種が乱立しカオス状態だった Apple 社に Steve Jobs が復帰し、まずやったことは既存の雑多な製品群をバッサリ廃止。コンピュータをデスクトップとノートブックに分け、アマ用にはインターネットの i を冠した iMac、iBook、プロ用には Power を冠した PowerMac、PowerBook の四製品とし、綺麗な田の字形で表せるようにしたことでした。Jobs のふるった大鉈は大成功で、Jobs の返り咲いた後の Apple 社は大躍進をすることになります。しかし Jobs 亡きあとの Apple はどうでしょう、製品の種類はカオスとなりつつあり、駄目だった Apple にどんどん向かいつつある気がしてなりません。

この秋には MacBook Pro が薄くなって登場、順位も MacBook Air が下位、MacBook が中位、MacBook Pro が上位の位置づけになるという噂。これら3種類に分ける必要があるのでしょうか? 3種類の良いところをひとつにまとめ MacBook だけとし、サイズだけで製品を分けるべきと思います。iPad や iPhone などもそうですね。いずれの製品も筐体に依存しないメモリーやストレージなどの部分は購入時に選択できるのですから。

Apple 登場時から Apple 製品を愛用してきた私でさえ、どの製品を選択するべきかでかなり悩みます。製品が多種にわたるということはコストの面でも非効率なはず。ユーザにとっても Apple 社にとっても決して良いことではありません。どんどん面白みのない会社へと凋落していきそうで悲しい、、

・・・

ちなみに、スバルの歴史でも似たような話があったので書いておきます。1966年に富士重工から初めて発売された本格的乗用車「スバル1000」は検討の結果、水平対向エンジンとなりました。地上高が低く振動が少ないという利点がある一方、横幅が広いためエンジンルームに余裕がないという欠点もありましたが、水平対向とともに当時まだ珍しかった前輪駆動を取り入れ、人気車種となりました(私も当時、車を買い換えるに当たり試乗してみましたが、全体の仕上がりが何となくちゃちく選択肢からはずしました)。

スバルはそれから現在に至るまで、50年間も水平対抗を貫いています。水平対向エンジンを積んでいるのはスバルとポルシェくらいのもの。スバルが水平対向にこだわった理由は、会社の規模が小さいため全ての乗用車のプラットフォームを共通化する必要があり、多種エンジンを提供する余裕がなかったからだそうです。最近まで同社の収益ははかばかしいものではなく、2012年に売り物のひとつだった軽自動車をやめてダイハツからの OEM とし、乗用車に集中することにしました。これが見事に功を奏して北米で販売数が飛躍的に伸び(私は世界のラリーを何度も制覇したスバル・インプレッサなどの活躍もあるのではないかと思うのですが)、社名を最近「富士重工」から「スバル」に替えました。

このようにスバルが歴史ある軽自動車をバッサリ切捨て、水平対向エンジンを積んだ乗用車の選択と集中により大いに息を吹き返した点、Apple も見習うべきものがあるのではないかと思うわけです。

◯ 企業にも寿命がある

2006年1月のエッセイで SONY が米国人の社長になるに伴い AIBO や QRIO などのエンターテイメント・ロボット事業から撤退したことを聞いて「SONY の経営立て直しの大鉈の中にあっても、 ロボット事業くらいの夢は会社のアイデンティティーとして 残しておいて欲しかった」「これから当分の間、SONY はつまらない会社であり続けるのでしょう」と書きました。あれから10年 SONY はその特徴たる VAIO まで手放してしまい、やはり思った通りの経過をたどっています。

プレイステイションを世に放ちソニー・コンピュータエンタテイメント会長などを歴任した丸山氏が「AIBO の本質は AI:人工知能と、それを駆動するためのメカトロニクスにあり今後のハードウエア製品の頭脳となるもの。ここは強化すべきだった」「これらはデジタル家電のようにすぐ真似されるようなものではない。同じことを今 Google など米国企業がやってしまっている」「ソニーは AIBO を捨てた時点で終わった」と語っているのを読みました。私が当時感じたことそのものですね。

また丸山氏は「企業にも寿命がある」と述べています。「その寿命を延ばすには体質を変化させていかなければならない」という意味でも AIBO の路線を伸ばすべきだったと。なるほどね、私達が盛り上げてきた juice や NeXus などのユーザ会も一定のところで寿命がきて自然消滅しました。何事もそうなのでしょう。

電子カルテ NOA についても考えなければ。以前のものに固執することなく、大胆な変身が必要なのだと思います。テキスト・エディターからグラフィカル・ユーザ・インタフェースを備えたアプリへ、そして更に Web アプリケーションへと大きく転身することにより27年もの寿命を保ってきました。しかしこの後、なかなか新しいアイデアが浮かばない。言うは易く行うは難し、、

◯ STAP細胞その後

2014年4月のこのコラムで、マスコミによる STAP 細胞騒ぎへの感想として「普通なら世の中から注目を浴びずに終わったであろうものが、たまたまマスコミからネタになると思われ、飛んでもない事態になった。学問の世界では『こんなこともあるかも』と先進的な報告があり、それを追試することにより『確かに、これは大発見だ』とか『やってみたけど、それはないみたい』ということになるわけで、そのような試行錯誤の繰り返しの中から、本当に人類の役に立つ発見が見つかってくる」「今回のようなことがあればちょっとでも失敗があれば『寄ってたかって袋叩きにあうから発表するのはやめよう』ということで、大発見の芽を摘んでしまうことになるでしょう」と書きました。

その後の米国研究者による実験の結果 STAP 現象と同じものが確認されたそうです。また小保方氏が研究不正の認定を受けた論文は、学位論文そのものではなく論文の下書きで、コピペ・盗用を多用と報道されたものも誤って提出した論文の下書きであり、コピペと称されるものも自分の論文からのコピペだとか。今回の記事でも「大切なのは発見であり、その可能性へのチャレンジだ。メディアを含めた世間は、細かな書類上のミスにこだわり、発見や可能性への出発点を握り潰していたのではないだろうか」と結んでいます。

もしこれが正しいとしたら、彼女の色々な業績、そして何より損なわれた彼女の誇りを誰が償ってくれるのでしょうか、、

◯ 女子バレー オリンピック選考最終予選

以下はバレーボールに興味のない人にとっては冗長なものでしかありません。このコラムは私の備忘録であり「ああ、あの頃は、あんなことに感動したり、考えていたんだな」と振り返るためのものでもありますので、興味ない方は読み飛ばして頂いて結構です。

昨年8月に開催されたワールド・カップ2015で2位以内に入れば、リオ・オリンピックの出場権を得られたのですが、残念ながら日本女子バレー・チームは善戦したものの最後に米国に破れ2位には残れませんでした。前回のロンドン・オリンピックでも同じ展開で、ワールドカップでは切符を獲得できず、翌年の最終予選で勝ち残り見事オリンピック出場権を獲得。今回もこのパターンに期待するところです。

今回のメンバーは、まずキャプテン木村沙織、山口舞、出産を経て復活した荒木絵里香、迫田さおりなどのベテラン勢。さらに、宮下遥、長岡望悠、石井優希、鍋谷友理枝、島村春世、座安琴希、佐藤あり紗。これに古賀紗理那、丸山亜季、田代佳奈美などの比較的新しいメンバーが加わりました。

故障がまだ回復しないのか江畑幸子、そして大竹里歩・内瀬戸真実・田中瑞穂が今回のメンバーから外れました。私が期待する高田ありさなども外れています。観客席から見守る彼女達の寂しい表情が気になりました。数年前の栗原恵などもそうでした。それを察した木村沙織キャプテン、試合後の円陣に彼女達を呼び込んで一緒に気合を入れるところなどキャプテンのきめ細かな心遣いが見られ、心潤むものでした。逆の見方をすれば、彼女達のように得点力を持つ選手を外さねばならないほど若い選手が育ったということかな、とも思ったのですが、江畑・内瀬戸・田中はいずれもウイングスパイカー、大竹はミドルブロッカー。眞鍋監督の考える選手構成の中でウイングスパイカーやミドルブロッカーの人数がはみ出してしまい、やむを得ずというところかも知れません。一昨年の MB1 (ミドルブロッカーを2人から1人に減らす)、昨年のハイブリッド6(ミドルブロッカーをまったく置かず攻撃に集中)など監督は色々と試行錯誤しているようですが、以前もこのようなことで外され悔しい思いをしたメンバーがあったけなあと、、

5月14日東京体育館での第1戦はペルー。第1セット、日本チームのエンジンが暖まらずちょっとやきもきさせられましたが、第2セット・第3セットで圧勝し、まず緒戦はストレート勝ち。期待された古賀は重圧におされたのか、スパイクがパンチに欠け敵のブロックに捕まることが多かったですが、木村や長岡が胸のすくようなスパイクを何度も決めました。特に長岡は落ち着いた的確な攻撃で20得点も独りで稼ぐなど光りました。メンバーに返り咲いた荒木の力強いブロック・速攻なども素晴らしかった。

第2戦はアジア枠のカザフスタン。アジア枠では他に韓国とタイがあり、このアジア枠で1位をとればオリンピック出場権がとれるのため、大事な1戦。

昨日は固くなり実力を発揮できなかった古賀、徐々に本領発揮。その他にも木村・長岡・島村・石井などが公平に点数を獲得。中盤からようやくコートに上げてもらった迫田も本領発揮。昨年は故障をひきづっていた迫田の復調はとても嬉しい。出番は少なかったものの、日本の隠し玉のひとつ山口の忍者のような移動攻撃が見られたのも嬉しいことでした。

この試合では新しいメンバーが活躍してくれたので、木村キャプテン中盤からベンチを暖めることになりましたが、日本チームはコート上の誰もがまんべんなく鋭い攻撃をしかける全員バレー。これこそ真鍋監督の目指したものなのでしょう。守備もリベロ佐藤のファイン・プレーが光りましたが、今回は佐藤のほかにも座安をコートに入れ守備を2枚にするなど、監督の新しい作戦が垣間見えました。結果は日本の順調なストレート勝ち。

第3戦は韓国。お互いこの試合はオリンピック出場権獲得に大事な試合。ロンドンオリンピックの時も韓国とは強い火花を散らしました。第1セット、キム・ヨンギョンが予想通りの威力を発揮し、好調の長岡の頑張りもかなわずセットを落とす。第2セットも同様の展開で、日本にマンネリ化が見られはじめる。心の中で「いくら何でも、もうメンバーチェンジで流れを変える必要あり」とジリジリするも、大きなメンバーチェンジなく、8点差でセットを落とす。第3セット、ようやく監督もメンバーチェンジをする気になったか、木村・古賀を下げ石井・鍋屋を投入。とたんに鍋屋のスパイクが綺麗に決まり、石井の有効打が決まり始める。これで日本チームに流れが呼び戻され、破竹の勢いで8点差でセットを取る。第4セットもこの勢いを期待したが、韓国は再びキム・ヨンギョンその他の攻撃が決まり始め日本は押され気味。心の中で「韓国に強い迫田を」。これが監督に届いたか迫田投入され得意のバックアタックが決まり初めるも、時すでに遅く6点差で押し切られ、日本は第4セットを落とし韓国戦敗退。なぜもっと早くから迫田を投入しなかったのか悔やまれる。動きがマンネリ化してきた時点で、どんどん新しい選手を投入すべきだったと強く思います。

これでアジア枠でのオリンピック出場権獲得はなくなり、ロンドン・オリンピック選考時と同様、あと2勝が必要。苦しい戦いが続きます。

第4戦はタイ。韓国戦で小指を痛めた木村キャプテンがベンチから見守る中、タイの動きは非常に良く日本は第1セットを落とす。第2セット、木村キャプテンがコートに入り少しずつポイントを稼ぎながらチームを力づけるなどで日本が盛り返し取るものの、第3セット再びタイが奪取。第4セット、やはりタイはセーブよし、ブロックよし、いくら打ち込んでもなかなかボールを落とさない。快調な迫田のバックアタックが何度も決まるが、ここでもタイがセットを取る。延長の第5セット、15点先取した方が勝ちとなるが、タイが大差で10点を越えあわやと思われたところで、日本チーム最後のねばりとタイの2度にわたるレッドカードによる2失点もあって、崖っぷちギリギリから連続得点し逆転勝利。選手たちはもちろん、私も久し振りに目が潤みました。涙を出したのは、かつての東京オリンピックで東洋の魔女と歌われた日本女子バレーが金メダルをとって以来。もう後がない絶体絶命の状態から粘りに粘って、最後は迫田のバックアタックで勝ち取った勝利に感動したものです。歳をとって涙腺が緩んできたせいもありますね。

タイは日本にかなり差をつけ先行していたにもかかわらず、執拗に審判に意義を唱えたためのレッドカード。ちょっと欲張りすぎで、大きな敗因を作りました。

第5戦はドミニカ共和国。タイ戦で勝利を収めた迫田・山口・木村・荒木などをスタメンとした第1セット、一時リードを奪われるも無事セット奪取。第2セット、好調ではあるがやや疲れも見えてきたと思われる迫田に替え長岡を投入。ここのところベンチからうずうずしながら見ていたであろう長岡、やる気満々。最初から好調なスパイクを叩き込み絶好調でチームトップの21得点をあげる。第2セット・第3セットを連取しストレート勝ち。

第6戦は今回最強のイタリア。第1セット木村キャプテンが絶好調。島村のブロードも決まりリード。しかしイタリアも食い下がり一時嫌な空気も。しかし荒木のブロック・石井のサービスエースなどで流れを取り戻しセットを取る。第2セットではイタリアがリード、木村のスパイクや迫田のバックアタックなどで迫るがセットを取られる。第3セット、木村がチームを引っ張り接戦になるも、イタリアがセットを取る。第4セット、長岡・木村の活躍で日本のペース。苦しみながらセットを取り、日本のリオ五輪出場権を得る。第5セット、イタリアに敗れ、この試合はイタリアに敗退。しかし日本女子バレーは4大会連続でオリンピック出場を決める。やあ、良かった良かった。この試合で木村は31得点。

第7戦はオランダとの最終戦。今回の予選でイタリアに次いで2位のオランダとの1戦はオリンピックへの準備としても是非勝ちたい1戦。すでにオリンピック出場権を獲得したということもあって、残りのメンバーにも試合経験を積ませたいという眞鍋監督の意向もあるのでしょう、これまでスタメンのなかった田代・鍋谷・丸山を起用。今回の予選で出る機会の少なかったうっぷんを晴らすかのように、彼女らの活躍には光るものがありました。第1セット、リードを許し途中から入った長岡の活躍もあったもののセットを落とす。第2セット、宮下とはひと味違ったセッター田代のトス・ワークが光り、木村・鍋谷・島村の活躍で順調にセットをとる。佐藤に劣らないリベロ丸山の働きもありました。第3セットは日本のミスがやや目立ち、シーソーゲームの果てにセットを落とす。第4セット接戦を続け、田代の采配のもと木村の巧妙なスパイクや島村のクイックが何度も決まるが、試合は手に汗握るシーソーで31点獲得まで延長を続け、その最後は長岡が仕留める。最終第5セット、ここでも日本が先行するものの、1点差を保ちながら追い迫るオランダをなかなか振り切れず。何度も島村のクイックが光り、長岡の活躍もあって日本勝利。

今回の予選を振り返ると、ウイングスパイカーとして最も安定した活躍を見せたのは長岡。しかし元気回復した木村キャプテンの硬軟併せた巧妙なスパイクやレシーブも光りました。いつもながら胸のすくような迫田のバックアタックを見られたのは嬉しかったですが、次第にマークされはじめ後半はブロックされることも多くなりました。石井や鍋谷のスパイクも頑張りましたね。新星の古賀ちょっと切れ味が見られず今後の成長に大きく期待。ミドルブロッカーでは、ブロック・クイックとも島村の活躍が何度も苦しい場面を切り開きました。出産を経て復活した荒木のブロックやクイック頼もしかった。山口の忍者のような移動攻撃、隠し玉とあって多くは見られなかったのが残念。セッター、宮下のバラエティに富んだ技も良かったですが、最終戦で登場した田代も一味違いなかなかのもの。リベロ、佐藤・丸山のファインプレーがラリーをつなぐ。今回はレシーバー登録だった座安もリベロとともに2枚でしんがりを守る場面も何度かありました。このように今回のメンバーは本当に粒ぞろいですが、メンバーから外れた江畑・大竹・内瀬戸・田中を交え、リオ五輪出場メンバーを新たに選考しなおすそうです。江畑や大竹の五輪での活躍を見たいもの。

フィギュアスケートの選手が「最近はどんどん優れた新人が登場してきて、とても太刀打ち出来なくなっている」と話していましたが、バレーボールもそうです。どんどん素晴らしい新人が登場してくる。そのスポーツの活躍により競技人口が増える、つまり底辺が広がるからなんでしょうね。これは健全な日本をつくるため非常に良いことと思います。

<2016.04 花を見るなら五分咲き | 2016.06 体験より経験>

これは日々の生活で感じたことを書きとどめる私の備忘録です