2005.11 長距離歩行における強力な武器

わーくすてーしょんのあるくらし (98) 

2005-11 大橋克洋

まずは最近 恒例の健康ネタから

そろそろ やや肌寒くなり、これからが歩くには絶好のシーズンです。 そんなことで先週はかなりよく歩きました (今年は 真夏の暑い時期にもよく歩きましたが)。

土曜の夕方から某医師会の祝賀会があったのですが、 家から会場の帝国ホテルまで 8km ほど、 2時間あれば悠々歩いていけることに気がつきました。 ゆったりと巡航速度で1時間半で到着しました。 それでも到着すると結構汗をかきます、もっと寒くならないと駄目ですね。

会場到着後も まったく疲労が残らなかったのに勇気を得て、 2日後には自宅から御茶の水の東京都医師会へ挑戦。 都医から徒歩で帰宅することは年に何回もあるのですが、 自宅から往路を行くのは初めての試みです。 行程は10km強、この日の作業部会が午後3時半からなので 1時に家を出れば悠々の計算です。

以前は PowerBook の入ったスーツケースのような重いものを手に提げ 長時間歩くことは考えられず、ディパックに入れ背中に背負ったものです。 しかし、ここ2、3年の筋トレ効果で肩の筋肉がしっかりしたため、 手に提げて歩いてもほとんど苦になりませんでした。

その後、品川駅近辺での会合が3日続けてあり、品川駅と自宅の間もよく歩きました。 坂道の昇降を含む 3km 位で 約40分の手頃な行程です。 一週間にこれだけ歩くと、 さすがに身体のこわばりを感じました。 従来の歩き方ですと、ふくらはぎのあたりがかなり痛むところですが、 そちらは全く何ともありません。 影響があったのは腰の外側の筋肉です。

○ 「みなとみらい」から自宅 20Km に挑戦

今月の総集編として、 パシフィコ横浜で開催された医療情報連合大会の最終日 「みなとみらい」から自宅まで徒歩帰宅に挑戦。 Google map で見るとほぼ 20Km の行程です。 行程4時間前後を予想。 明るいうちにたどり着こうと午後1時パシフィコ横浜を出発しました。 いつも朝食はヨーグルトと紅茶程度しか摂らないのですが、 今朝はホテルで比較的しっかり食事を摂ったので昼食は省略。 帰着まで空腹感はありませんでした。

ホテル客室の窓から見た「みなとみらい」の夜明け

コースは第2京浜をひたすら真っすぐ歩くだけですが、 この国道はトラックの排気ガスばかりで、景色もまったく面白くありません。 おまけに「あのコースは結構起伏が多いですよ」とのアドバイスも受けました。 予想通り排気ガスはシコタマ吸い込みましたが、 起伏は気になりませんでした。 遠方はるかの丘や高いビルをめざし歩くうち、 いつの間にか通過してしまうのがちょっと不思議な感じでもありました (「目に見える所までなら絶対に歩いて行ける」と感じているのですが、 では「富士山まで一気に歩けるのか」「月だって目に見えるぞ」「太陽も」と言われると、 うーむ)。

強いて出来事といえば、意外とトイレがなかったことです。 公園のトイレなどがあるだろうと思っていたのですが、 最初の頃見かけただけで、その時はまだ用なく通り過ぎました。 しかしそろそろ必要性を感ずるようになっても、なかなかありません。 ガソリンスタンドにお願いし使わせてもらおうかとも思いましたが、 結局途中のレストランでトイレ休憩、オレンジジュースを一杯補給しました。

その後止まったのは、もう一度スーパーのトイレを使わせてもらったのと、 自販機で飲物を補給しただけです。 しかし、その飲物がどうも失敗だったようです。 「飲んで歩くだけでダイエット」と CM でやっているやつを 試しに飲んでみたのですが、とたんに歩きに力が入らなくなってきました。 歩き始めて4時間近くになり疲労もあったのでしょうが、 本当に痩せる効果があるとすれば 運動の足を引っ張ることになるのも理屈に合っているのかな、 などと考えながら歩きました。

そんなことで、都内に入り最後の1時間くらいが結構きつかったですね。 このコラムを読んでいる方々へ「横浜から自宅まで歩いて帰るぞー」と 公言してしまった手前もあり、 最後まで完歩できたということでしょう。

「みなとみらい」から自宅までちょうど4時間半で到着しましたが、 トイレや飲み物等で停止した時間を差し引けば4時間の行程で、 時速 5Km という計算になります。通常は時速 6Km 程度ですが、 やはり長距離となると低下しますね。 丁度1年前の「医師と歩こう」イベントも 20Km コースと銘打ってありましたが、 3時間10分で踏破できました。 堤防上が多く信号が無かったとは言え、 要した時間といい疲労感といい、どう考えてもあれは 20 Km はなかったと思われます。

翌日は足の痛みなど身体のつらいことはありませんでしたが、 背中の筋肉が背負ったパソコンのため、ややこわばっていました。 東洋式歩法の威力大です。 西洋式なら翌日は身体中が痛んだことでしょう。

○ 会得した歩法のコツ

現時点で会得した「歩法」のポイントをご紹介します。

○ 強い競走馬はナンバ走り?

話題の三冠馬「ディープインパクト」のドキュメンタリー番組を見ました。 馬術部出身で馬好きの私も、競馬にはトンと興味がないので知らなかったのですが、 この馬は昨年デビューしてあっという間に三冠をとった稀にみる素晴らしい馬だそうです。

馬術部出身ということで馬自体には非常に興味があります。 入場前に曳き馬されている姿を見て、 後肢の素晴らしい踏み込みと柔軟さに「さもありなん」と納得してしまいました。 「馬の優劣は後肢にあり」と言ってよいでしょう。 馬は後輪駆動ですから、後肢は駆動輪なのです。

レースを見て これまた感激。 先頭から十馬身ほどの差でついていたディープインパクトが ゴール前に一旦スパートを掛けると、 まさに「ターボチャージャー」か「ブースターロケット」を作動させたように、 素晴らしい加速で他の馬を外側からゴボウ抜きにしてゴールします。

ディープインパクトの強さの秘訣として 「天性の走り好き」 「走行後心拍数の平常化までの時間が他の1/2から1/3」に加え 「後肢の蹄が最後まで着地しており、それを上げた後の踏み込みが他の馬よりずっと深い」 という解説がありました。 これこそ、まさに「歩法」のコツと同じではないですか。 柔軟な後肢の動きにより、 運動エネルギーのほとんどが上下動ではなく前進力に注がれるのです。

○ 長距離歩行における強力な武器

長距離歩行における「強力な武器」を内緒でお教えしましょう。 それは iPod シャッフルです。

こいつで音楽を聞きながら歩くと、 自然にリズムがとれるため歩行速度も上がり、とても楽しく歩けます。 今のところ私が一番強力に感ずるのはロック系で、 大黒摩季あたりのノリノリのやつが良いですね。 黙っていても身体が元気に動いてしまいます。

iPod で唯一 困ることは、 上着の内ポケットから出したイヤホーン・コードが スパゲッティ状になること。 何とかならないものか と思っていましたが、 良いアクセサリーを見つけました。

透明なプラスチックを「コの字型」に折ったもので、 その間に iPod シャッフルを挟みます。 コの字の片方が延長されており、 そこへイヤホーン・コードを巻き付けるようになっています。 私はステレオのイヤホーンでも片方しか耳にささないので、 もう片方が邪魔でした。これも巻き付けた中にうまくおさまります。 こいつは具合が良いです。今までの悩みも解決されました。

うちの近くにもLAOXがあります。 残念ながら Apple 社の製品はまったく置いてくれないのですが、 何と最近 iPod だけは置くようになりました。

、、、と思っていたら、近所のセブンイレブンの陳列棚にも iPod が。衝動買いは さらに加速されるでしょうねえ、、、

○ 家を建てています

今、家を一軒建てています、、、というと格好いいんですが、 家を建てる資金はもう生きている間には到底無理そうです 、、、ということで、バーチャルな家を建てています。 以前も書いたように 3Dで設計していたのですが、とうとうそれでは満足できなくなりました 、、、と言って実際に建てる資金もないので、 ベニヤ板の土台に割り箸を主な建材とした普請です。

うーん、「普請」なんて最近は聞かない懐かしい言葉ですね。 祖母がよく「普請」という言葉を使っていました。 私が小さい頃、 祖母は「男は一生の間に何軒か家を建てなくちゃ」 と言っていました。

私が独り立ちするとともに急速に時代は変って、 良き時代は終ってしまいました。 かろうじて私が建てたと言えるのは、 現在住んでいる等価交換方式のマンションと 別荘(留守の間に何者かの不審火で焼失してしまい、 その後は別荘など持てる身分でなくなりました) の2軒ですね。改装や改築、あるいは勤務していた病院の基礎レイアウト だとか、乗馬クラブのクラブハウスの設計(建ったものの一度も見ずじまいでした) などは幾つかあるんですが。

忙しい仕事の合間の息抜きの工事現場ですので、 実際に大工さんが一人で建築する場合より、やや早いかなという程度の進行速度です。 工具は現在のところ彫刻刀だけですが、最初は粗かった木組みも慣れるうちに 多少は見られるようになってきました。 これでも結構楽しいですね。 窓からのぞいた景色がどうなるかなどと、 楽しく確認しながら少しずつ進めています。

もともとは医師でなく建築家になりたかった願望が、 加齢ととともに強く花開いてきたのかも知れません。 「やはり、こんなことを一生の仕事にしておけば楽しかったはずだなあ」 と思いつつ。物心ついた頃、疎開先の埼玉県の農家の縁先で、 積み木がわりの薪で家を造っては崩れてしまい、 カンシャクを起こしていた幼い頃の私でした。

○ 新しい Web browser "Flock"

どうしても Mac 標準の web ブラウザー Safari では使えない Web Application (東京都医師会の理事会で使う文書閲覧システム)があり、 やむを得ず Firefox を使ってきました。 動きから見ても標準の JAVA の使い方で問題ないと思うのに、 このような反則的な JAVA の使い方をするのは、 本来の Web Application の目的(OS などの環境に依存しない)に反していると、 少し怒っています。 まあ、このあたりがソフト屋さんの「腕の善し悪し」の一つと言えるところでしょう。

Firefox は最近人気のブラウザーで、色々な OS へインストールされています。 しかし Safari ほどサクサク動かないのと、 ボタンなどコントロール類のデザインが 古い UNIX (というか JAVA ?) の GUI でどうも気に入りません。 都医の文書閲覧システムでは、書類のほとんどが PDF 形式です。 Safari ではそれがブラウザー内で表示できるのに対し、 Firefox では desktop 上などに一旦ダウンロードされ、 それをプレビューで見るので、 閲覧だけのためのファイルがどんどん desktop 上に溜まり、 後で全て廃棄する操作が必要になります。

Firefox から派生し、Web2.0 対応のブラウザー Flock が数日前リリースされたということで、早速 

FireFox の Web site へ行ってみました。 「おー、ちゃんと MacOSX 対応版もある」 ということで早速 down load 。 こいつのデザインは上図のように Aqua 風で、デザイン的に私好みです (何といっても、デザインが好みだと楽しく使えます)。 ちゃんと都医の Web Application も使えます。 Firefox 同様、立ち上がりはかなり遅いですが、 今度から都医での文書閲覧はこちらにしましよう。

先ほど MacOS X が10.4.3 に上がるとともに、 Safari のマイナーアップデートがあり ver.2.0.2 になりました。 このアップデートにより Safari はウエブ標準互換テスト「Acid2」に合格しているそうです。 「もしかして、、、」と思い いそいそと試してみましたが、 やはり都医の文書閲覧システムの方は駄目でした。くっそー。

○ 第25回医療情報連合大会から

パシフィコ横浜で11月23日から26日まで開催され、最終日にかけ1泊しました。 最近は「へえー」とか「ほおー」とか感心する発表が見当たらず、 面白みが減少しています。自分が年を経たためなんでしょうか。

EHR のセッションです

看護関連のセッションが予想以上の参加で急遽そちらの狭い会議室にスワップ

座長から「ウーマンパワーに負けました」とのアナウンスあり

EHR は電子カルテと同義と思っていましたが、 最近では電子カルテは EMR (Electronic Medical Record)であって、 EHR は地域医療連携における医療データの集積や共有を示すために使われるようです。 東京都医師会の「HOT プロジェクト」も、まさに EHR をめざしているというわけです。 長年の間に思考が擦り合わされ、皆がほぼ同じ方向へ向かっているようですが、 同時に「ちょっと、それは違うよなー」と感ずることもあります。

「EHR では医療データを蓄積し共有する仕組みを行政などで用意すべき」 という意見が見られましたが、私の考えは少し違います。 データは個人が自分の「医療データバンク」に「健康ノート」として保管し、 必要に応じて「個人の管理下に再利用」する方がハッピーという考えです。

相変わらず「標準化電子カルテ」や「医療情報の標準化」が唱えられていますが、 ここもちょっと違います。 「色々な電子カルテがあってよい」 「医療情報は地域やグループごとに異なる標準のものを相互乗入れ」 の方が現実的と思っています。

「全体を一つの方式に統一」は一見効率的ですが、 個人にとって快適でなく実現困難です(成功しているのは共産・独裁政権だけ?)。 「個を認めつつ、それらがコラボレートできるような仕組み」こそが現実的で、 結局は効率的との確信を強めています。 地域医療連携の成功例は、 こじんまりまとまった地域やグループによるものばかりです。 このようなグループをハーネスする形で 「ほっとライン」を構成すべきと考えるようになりました。

生物は個々の独立したユニット(細胞など)で出来上がっているため、 一部に不具合があっても他への影響が少ない、 結果としてかなり頑丈な仕組みです。 システムもそのようにあるべきです。

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遠方に二重橋。数日後この道を紀宮様が帝国ホテルの結婚式場へ向かわれた