2010.03 長年の習慣を変えるのは容易ではない

わーくすてーしょんのあるくらし ( 205 )

2010-3大橋克洋

毎年この季節の表紙にはお雛さまを飾っています

ことしは種切れかと思いきや 帝国ホテルでみつけました

iPhone での室内撮影 ややぼけてますね

< 2010.02 機能維持に必要な適度のストレス | 2010.04 まず自分の環境を整えることから >

時間つぶしに寄った書店で「古代文明と気候大変動(ブライアン・ヘイガン)」 「人類が消えた世界(アラン・ワイズマン)」を衝動買いしました。 しばらく積んであったのですが、読んでみるとなかなか面白い。 「人類が発生してから、地球は氷河期、乾燥した気候、温暖な気候を繰り返してきた。 食べられる動植物を追って移動していた頃は 干ばつや洪水など劣悪な状況へ柔軟に対応できたが、 耕作を覚え、それに伴い人口増加が起こると、 土地に縛られ環境悪化に極めて脆弱になった。 良好な環境により大都市が栄華を誇り、それが突如放棄されたのも 地球環境の変化によるものが多い」。

「現代の人間社会は(自動操縦の)巨大タンカーのようなもの。 操舵室に海図や天気図をもつものは誰もおらず、機関室に目を配る者は一握り。 救命ボートが10人に1人分も用意されていないことを気にとめる人もいない」 「長い尺度で見ると 20世紀は地球歴史上まれにみる恵まれた気候。 膨れ上がった人類がこのまま開発・発展を続けたらどうなるのだろう。 グリーンランドの氷床が解け大量の融解水が北大西洋に流れ込めば 海のベルトコンベアーと呼ばれる巨大な海流が停止し、 ヨーロッパは極地に近い気候になると予想される」。 過去に繰り返されてきた地球上の大きな気候の変化に 人類は極めて無防備になっていることを告げ本は終わっていました。

もう一冊の方も興味深い 「疫病、宇宙からやってきた何か、などにより突如人類が消えたとしたら、 その後の地上はどうなるか」というもの。 「都市が原野に戻るのは意外に早いかもしれない。 急速な劣化を進めるのは水。 風に舞ったゴミやビニール袋などが下水に詰まり 汚水があふれると、 建物は土台から傷んでくる。メンテナンスされなくなった地下鉄は 壁のひびから水が吹き出すようになり、あっという間に水浸しになる。 崩落した地下道は地上のビルを傾かせ、屋根や壁から染み込んだ水が 建物を蝕む。崩れた高層ビルの後には、風や鳥が運んだ雑草が生い茂る、、」 ふーん、なるほどねえ「都市というものは、 たゆまざる人間のメンテナンスにより原型を保っている」ことを 実感しました。

地球環境を大きく変化させてきた人類がいなくなれば、 地球はあっという間に人類発生前の景色に戻る、ということのようです。 そのようなことを描いた「猿の惑星」とか、いろいろありましたね。

○ 今月の歩術

ここ数年、3月1日を期してコートをすっぱり脱ぎすてるのですが、 今年はそうもいきませんでした。 2月下旬にはコート無しで過ごせた日があったかと思えば、 何と3月下旬まで「流石にコートを着て行くかな」 という寒い日がありました。「三寒四温」と言われるこの季節、 今年は特に寒暖の差が激しいようです。

ここのところ歩術に そう大きな進展はありませんが、 「平起平落」すなわち「後足を平らに抜いて前方に平らに着地」が かなり無理なくできるようになってきました。 「後足の踵が上がり土踏まずより前方で離陸、踵で着地」するのが普通ですが、 これを「水平のまま離陸、水平のまま着地」しようということです。

理屈ではわかっていても、長年の身体的習慣を変えるのはなかなか容易なことではありません。 立ったままなら踵に大きな角度を与えることができても、 歩きながらですと どうしても踵が上がってしまいます。 ここに到るまで2、3年かかったでしょうか。 まさに「換骨奪胎ができてきた」ということ。 それでもまだ、意識しないと後足の踵が上がります。 これが習慣になるまで、あと1,2年はかかるのでしょうね。

意識せず「平起平落」で歩けるようになれば、 「アクセルとブレーキを交互に踏む」歩き方ではなくなるので、 歩行速度も上がるはず。もうひとつ歩行速度に大きな影響があるのは 「(自称)伸股法」。ベリーダンスと中国武術の伸肩法にヒントを得たものです。 腰を固定したまま両足を前後させるのではなく、 腰を柔軟に「腰から歩く」ものです。 なかなか文字で伝えにくいものなのですが、 この感じがわかると 普通に歩いているように見えても 歩幅が広がるため、歩行速度がかなり上がるようです。

ゼロ戦の撃墜王「坂井三郎」氏が負傷による視力障碍のため、 硫黄島上空で数十機の米戦闘機に囲まれてしまった時 「そうだ、自分を撃てるのは一度に一機しかいない」と気づき、 後の敵機が「撃ったな」と思ったタイミングで 微妙に機を滑らせて射弾を回避。これを際限なく繰り返し、 ついに危機を脱した話を読んだことがあります。 「腰で歩く」も「機をすべらす」と同様、 普通に歩いているように見えて速度を上げる技とも言えましょうか。

○ 長年の習慣を変えるのは容易ではない

女子バレー「栗原めぐみ」と「大山加奈」は「メグ・カナ」コンビと呼ばれ、 大いに活躍した時代がありました。 先日、大山加奈の故障との戦いを TV で特集していました。 大柄な身体から打ち出される速射砲のようなスパイクで 期待される新人でしたが、大柄な身体であれだけ大きな技は どうしても身体に無理がいくのでしょうね。 長身の栗原も、腰の故障で1年以上競技に出られない時期がありました。 栗原は その後 戦線復帰したのですが、大山は腰椎手術後も完全復帰に至りません。

腰椎に無理をかける「強く捻るようなフォーム」を矯正しようと 新しいフォームに挑戦していますが、 なかなか転換できず大いに悩み苦しんでいる様子です。 何とか彼女が「換骨奪胎」できるよう、陰ながら応援しています。 本当は、中国武術の「力を入れないからこその、スピードと強力な威力」 を伝授できるとよいのですけれど、私もまだ修行中の身。 誰か日本のバレーボールチームに伝授できると良いんですけどね。

○ 今月の脳トレ

先月はコラムの更新が、少々滞りました。理由は例によって ソフト開発作業に入れ込んでいたためです。電子カルテ NOA のレイアウト設定ツール NOADesigner ですが、とりあえず自分が使えればよいということで、 やっつけ仕事に近かったシロモノです。 しかし、自分でカスタマイズしたいというユーザの方の 戸惑う姿をみて「そろそろ何とかせにゃ」という気になったのです。

NOADesigner での属性設定には NOA で直接設定できた方が便利なものも幾つかあることに気がつきました。 そこで、まずそれらの設定機能を NOA へ 移動。 メニューバーは完全に NOA 側で設定できるよう改良しました。 ここで思いがけぬ拾い物。 懸案の「独立アプリとしての周辺ツールを 自由に組み込むための API」を確立しました。 他の方が開発し最小限の API を備えた周辺ツールが インターネット上に公開されていたとして、誰でも容易に 自分の電子カルテに取り込めるようになりました。

レイアウト属性は、ひとつの JSON 形式ファイルとして保存していましたが、 今度はすべて DB に保存します。 ユーザがほぼワンタッチで レイアウト設定ファイルをコンバートし、 DB に保存できるツールを作りこんでいます。 さて次は、このレイアウト属性を読み込み NOA が立ち上がる部分 にかからねばなりません。ここも結構 集中力と根性を必要としそうで、 4月初めの日医会長選挙に向け忙しくなる中、 大改装になってしまった新しい NOA のリリースには まだちょっと日数がかかりそうです。

そんなことで冬季オリンピックを横目でにらみながら、 こちらも脳トレに励んだ2月でした。

○ 今月の iPhone

4年前の日医会長選挙では 各地区の(結構年配の)会長先生達が携帯電話を駆使されている姿を見て 感心するとともに、自分も非常に有難味を感じたものでした。 4年も経つと、もうそれは当たり前になってしまいましたね。 以前も地図を見たり 乗換案内などの恩恵に預かったのですが、今回は iPhone がお供なので、さらに強力です。

知らなかったのですが、 標準搭載のメモ帳に住所や電話番号を書いておくと、 そこに自動的にアンカーが振られ、 指で電話番号に触れれば電話をかけ始めますし、 住所に触れると Google map が立ち上がって ちゃんとその住所をポイントしてくれます。 初めての所を何箇所も回るには、 とても強力な道具となりました。 タクシーに乗っていても GPS つき地図で 目的地までどの位の距離にいるかが分かります。

大抵のタクシーはカーナビ搭載ですが 高速道路で渋滞に巻き込まれ、 iPhone の GPS による位置確認の方が便利だったこともありました。 GPS を使っていると見る見るうちにバッテリーが消耗するのは難点。 今回は予備バッテリー eneloop 持参だったので、そんな時も安心でした。 こいつは iPhone を2回分充電できますから。

別件ですが、優れものの iPhone アプリを見つけました。 WorldCard Mobile という名刺読込アプリ。 立ち上げるとカメラが開きます。 名刺を撮影し解析させると結果が住所録に入るのですが、 これがなかなかお利口に解析してくれるのです。 初めてやった名刺ではほとんど修正の必要なく読み込んでくれました。 レイアウトや文字、撮影条件などによっては多少解読不十分なこともあるようですが、 極めて少ない修正で済むことが多いので便利です。

コンピュータのソフトウエアには、 どんどんこのように「お利口なもの」が増えてきつつあるのは、 また一段 時代が変わりつつあることを感じさせます。 そうそう今朝、うちの看護師さんも iPhone を使っているのを知りました。 電車の中でみかける iPhone は非常に増えましたが、 女性にも徐々に広がっているようです。

○ AMAZON Kindle for Mac

電子カルテ NOA ユーザの S 先生に「iPhone 用 Kindle なかなかですよ」と聞いて 早速 download したものの、イザ 読もうとしたら US AMAZON の書籍しか無いので断念していました。 そこへ「 Kindle Mac 版」リリースのニュース。 懲りずに早速 Mac 版を download してみました。英語に堪能でない私でも 好きなグラフィックデザインなどの本なら大丈夫かなと、 今度は少し根性入れて US AMAZON の中を探してみました。 Photographing Yosemite Digital Field Guide というのを見つけ download 。ヨセミテ公園のガイドブックです。

ところどころに挿入された綺麗な景色を 眺めているだけでも楽しめそうです。 「うーむ、なるほどね、digital book ってこんな感じか」 これで日本語書籍がそろえば、なかなか使えそうですね (後日、soryubooks と検索すると、太宰治や宮沢賢治など パフリックドメインとなった書籍を日本語でも 読めることがわかりましたが、まだまだ数が少ない)。 以前落としておいた iPhone の方でも眺めてみました。

そこで 久々に iPhone のマガストアを開いてみました。 「おっ、Mac Fan があるぞ」ということで早速 download 。本屋で買うと730円のところが 600円、高いか安いかは考えどころ。500円以下になると嬉しいですが、 そうなると雑誌社の利益が上がらないんでしょうね。 これから Mac Fan は iPhone で購読するのが主になり、 永久保存版的な記事がある場合のみ実体を購入することになりそうです。 iPhone では画面が狭く雑誌を眺めるのは ちょっと苦しいですが、 iPad になれば快適でしょうからね。

○ Pocket WiFi

日本でも来月末あたり発売の iPad 。 WiFi だけにするか 3GS にするか。 色々な人の意見をきくと「それは 3GS でしょ」という方もあれば 「WiFi だけで良いんじゃないの?その方が安いし」という意見も。 e-mobile から発売されている Pocket WiFi は 無線 LAN 基地局の機能を持ち MacBook にも iPad にも iPod touch などにも繋がります。 3GS つき iPad なら単体でどこでも使えるのが魅力ですが、 迷った挙句 Pocket WiFi をネットで購入することにしました。

1週間後、宅急便で到着。 予想よりコンパクトで軽いです。つるっとしたシンプルな形状も気に入りました。 シルバーの MacBook Pro によく似合います。使い方は簡単で、 付属の簡単な接続マニュアルでただちに接続。 電源を入れちょっと待つと、ホンダのロボット「アシモ」の顔のような 部分にインジケータが灯ります。あとは通常の無線 LAN として接続。 Pocket WiFi はポケットへ放り込んでしまいます。 使っていると、ちょっと熱を持ちますね。

忙しくてメールを大分貯めてしまったのですが、 水戸での講演の帰り、列車の中でまとまった時間ができました。 Pocket WiFi に電源を入れ MacBook Pro を接続。 おー、走っている列車の中でも快適にメールを読み書きできます。 貯まったメールをゆっくりと処理することができました。 Pocket WiFi はスグレモノに分類して良いでしょうね、、

< 2010.02 機能維持に必要な適度のストレス | 2010.04 まず自分の環境を整えることから >

これは日々の生活で感じたことを書きとどめる私の備忘録です