2002.12 (a) 純白のクラゲ「液晶iMac」がやってきた

わーくすてーしょんのあるくらし (60)

2002-12(a) 大橋克洋

この連載もとうとう60回(5年)になるとともに何となくイヤな予感 がしていたのですが、雑誌「医療とコンピュータ」が今回をもって 休刊となりました。 またどこからかお座敷がかかるまでは、 再び私の Web 上の連載だけになります。

< 2002.11 MacOS X 10.2(Jaguar) がやってきた | 2002.12 (b) 歴代マシーンの価値を比較する >

先月号で予告したように、診療デスクで使うマシーンをiMac 17 inch に換えました。1年ちょっと前までは、診療デスクで使うには G4 Cube がぴったりと思っていたのですが、残念ながら Cube は製 造中止になってしまいました。 そうなるとPowerMac に 17 inch StudioDisplay かなと思ってい たのですが、今年初めに液晶タイプの iMac が出たので、これこそ 診療デスクに使うにぴったりと喜んだものです。しかし幸か不幸か 財政状況と折り合いがつかず、指をくわえて眺めているうちに夏に なり、思いがけず iMac 17 inch が登場、OS も Jaguar にグレード アップということで、今がその時とばかりに iMac 17 inch を AppleStore の Web Site で注文しました。

外来の診療デスクのマシーンは以前タワー型ベージュの初代 PowerMacG3 を使っていましたが、これが Web サーバ専用マシーンに移 行するとともに、PowerBookG4に液晶デイスプレイとキーボードを接 続して今まで使ってきました。

外来では電子カルテ NOA で診療を行っているので、なるべく広い 画面が欲しいところです。タワー型に 17 inch の StudioDisplayと いう組み合わせも選択肢だったのですが、秋葉原で実際に比較して みると 17 inch StudioDisplay は存在感があり過ぎ逆に適当ではな い感じがしました。そこへ行くと横長の iMac 17 inch の方が控え 目でピッタリという感じがしたのです。iMac 17 inch は発売したば かりということで2週間位は待たされることを覚悟していましたが 、AppleStore へオーダーして丁度1週間目に届きました。

○ iMac 17 inch 印象記

お供え餅のような台座部分が意外に大きいことは前にも書きまし たが、届いてみるとあの特徴的なネック部分がこれまた意外な太さ であることに気がつきました。17 inch の液晶を支えるのですから 当然のことなのでしょう。持ち運びには首を持てとのことですが、 結構な重さなのであのステンレスの首を持って運ぶうちに汗でズル ズルと滑りそうです。もう片手を台座のお尻に添えるほうが安全の ようですね。

次に印象に残ったことは、左右にワイドな画面は広くて仕事に使 うにはとても具合が良いのですが、解像度が上がったため文字が今 まで使っていたどのマシーンより精細になり、人によっては文字が 読みにくいと感ずるかも知れません。アルファベットですとそれほ どでもないのですが、日本語の場合はそんな感じがします。 そのため今までは電子カルテを画面の右端に置いて仕事をしてい たのですが、今度は自分に近い中央部に置くようになりました。広 大な画面と精細な文字はこのようによく使うアプリケーションを置 く位置まで左右することがわかりました。

速さについては結構速いはずですが、今まで使っていたPowerBoo kG4 と比較して特に速いという実感はないようです。 さて、ひとつとまどったことがあります。今まではノートブック ならフタを閉める、タワー型ならデイスプレイの電源を落として席 を離れればよかったのですが、iMac ではどうすれば良いのかな?

液晶の電源だけ落とすようにはなっていないので、とりあえずス リープにしてみました。ところが机の上に置いたマウスが掃除など でちょっと動くと液晶に灯が入ってしまいます。仕方なく現在は一 番暗めのスクリーンセイバーを立ち上げて席を離れるようにしてい ます。しかし、もっと良い方法がありそうですね。

○ 患者さんの反応は

iMac は診療デスクの左側に置いてありますが、その脇に診察室入 口ドアがありますので、患者さんが入ってくるとまず iMac の真っ 白な姿が横向きに目に飛び込むことになります。現在のところはそ こで凍ってしまう人はさすがにいないようですが、診察中私と話を しながら目は 17 inch デイスプレイに向いている人は何人かあるよ うで、横長デイスプレイはかなり目を引くようですね。

画面のバックグラウンドに、NASA 提供の美しい青い地球と宇宙の 真っ暗やみを置き、その上に電子カルテ NOA の美しいパネルが浮い ているので、女性の目は結構引きつけられるようです。本当は患者 さんの意識は私の話の方に向いてくれなければ困るのですが、私自 身が美しい画面の中で仕事をしたいということがあるもので、ここ のところはどうしたものかと思っているところです。

それにしても本体やキーボードなどの白は奇麗ですね。 昔々の A pple IIe がこんな白色だったような気がします。 使い込むうち汚れ がどの程度つくようになるのかちょっと気になります。

○ ネットワークの一員となった純白のマシーン

昔々の UNIX 時代から、マシーンにはすべて名前をつけてネット ワーク上で区別してきました。最初は Sun workstationを2台入れ 、一台は診察室にもう一台は13Fの自宅に置いてその間を Ether net で接続したのが本格的 LAN の始まりでした。16年ほど前のこ とで、これが「わーくすてーしょんのあるくらし」の由来です。1F のマシーンには sunset 自宅のマシーンにはsunrise とネーミング しました。さて今度の iMac には何とつけたものか。私のところの ドメイン名が OCEAN なので、マシーン名は原則として海洋に関連し たものにしています。

ノートブックは surfside とか cliffside など海浜を表す名前に していますが、据え置き型は dolphin や swordfishなど魚の名前が 多いので、iMac は jellyfish と命名しました。つまりクラゲです ね。あの白いお椀を伏せたような形、液晶がフワフワと宙に浮いて いる感じにピッタリでしょう。

空冷ファンは上に向かって風を吹き出しますが、かなり静かです 。キーボードやマウスも真っ白なデザインで、まさに医療機関にピ ッタリという感じですね。ただマウスについては何度も書いたよう にスクロール用ホイールのついたヤツが手放せないので、Windows用 のものを接続して使っています。キーボードは以前のものと比べ横 幅が長くなってしまったのは残念です。文字キーとテンキーの間に 矢印キーなどが3列ほど割り込んでしまったためです。もう少しコ ンパクトなキーボードも純正で出してくれませんかね。そして、ホ イール付きのマウスも。

○ スケジュール管理に iCal ついに登場

前評判は高かったものの、Jaguar には間に合わずバンドルされて いなかったカレンダーソフト iCal が遂にリリースされました。 これまでスケジュール管理は自作の Calendar というアプリケー ションで行ってきました。UNIX 時代に作成した文字ベースのものを NeXT に移植する際 GUI をかぶせたものです。

私は産婦人科医会などの役職で出歩くことが多く、毎日の食事の 要・不要を逐一家内に伝えなければなりません。そんなことから、 ネットワークでデータを共有できるよう機能アップし、家族からも 見られるようにしなければならないと思っていました。院内の Web site で見られるようにしていたのが、システムが変わって使えな くなり新たに作る必要があったのです。

iCal は Apple 社の .Mac というネットワークサービスに加入す ればデータを Apple 社のサーバ上に置き、それを Web browser で 見ることができます。 どんな仕組みで同期をとるのか興味があったのですが、結構シン プルです。iCal は変更されたデータを自動的にセーブしてくれます ので通常はセーブの操作は必要ありませんが、セーブ操作と同様の ワンタッチで.Mac へデータを upload できるのです。

グラフィカルなインタフェースはなかなか凝ったものですが、私 の自作アプリに備わっていて、iCal にはない不便な機能がいくつか あります。 まずイベント記入欄はひとつしかありませんが、イベント名と 場所名に別れていた方が便利です。自作アプリではイベント名や 場所名を登録しておいて、メニューから選択できるようにして いますがこれがないのでいちいち手で入力しなければなりません。

Mail 用に AddressBook があるように、イベント名や場所名を 登録できるメニューが欲しいですね。 それから祝祭日もカラーで表示して欲しいのですが、ざっと見たと ころではそのような設定機能はなさそうです。あとは、手帳用に小 さくプリントアウトする機能も欲しいですね。これらが整えば、私 のスケジュール管理を全面的に iCal へ移せるのですが、まだしば らくは平行して使うことになるのかなと思っています。 きっとそのうちにユーザからの要望がフィードバックされて、こ のような機能がついてくるのでしょう、楽しみです。ネットワーク 共有機能だけでも花マルをあげてよいでしょう。

○ 外付け脳としてのノートブック

昨日、千葉の幕張プリンスで会議がありました。あらかじめ Web の乗り換え案内で時間を調べ、30分以上余裕をもって到着する よう家をでました。やがて目的地に近くなる頃「はてな?」とイヤ な予感。電車の昇降口上にある経路図を見ます。「しまった。また 、やってしまった」。幕張メッセや幕張プリンスは実際には幕張駅 ではなく海浜幕張駅にあることを思い出したのです。

私が向かっていたのは幕張だったのです。以前もこの失敗をやり 、幕張から海浜幕張まで歩いたことがあります。隣かと思ったらと んでもない、歩くのが趣味の私にしてもかなりの距離を歩いたこと を思い出しました。この日の会議は遅刻する訳には行きません。 次の駅で電車を降り乗り換えようとしましたが、駅構内にはどこ で乗り換えたらよいか案内情報がありません。そこで出番です。 PowerBook を取り出し、PHS カードをさしてWeb で路線検索。無事 経路を確認して乗り継ぎ、時間ぎりぎりに間に合うことができまし た。やー、冷や汗をかきましたが、まさにモバイル様々でした。

先日も Windows の薄いノートブックを使っている企業の人が言っ ていました。今やこれが完全に自分の外部脳で、これをなくすとえ らいことになるということでした。私の場合も本当にその通りなの で、ノートブックに載っているのはあくまでも情報のコピーでしか ありません。オリジナル情報はネットワーク上のファイルサーバに 置いて、万一ノートブックをなくしてもパニックにはならないよう にしています。 将来はこれがもっと徹底して、情報のすべてはネットワークの彼 方のファイルサーバ上にあり、手元の極めて身軽な携帯端末からそ れを読み書きすることになると思います。

< 2002.11 MacOS X 10.2(Jaguar) がやってきた | 2002.12 (b) 歴代マシーンの価値を比較する >