2004.11 プログラミング能力復活す

わーくすてーしょんのあるくらし (86)

2004-11 大橋克洋

< 2004.10 還暦過ぎたプログラマー | 2004.12 携帯電話を替えました >

今月は、ちょっとコンピュータとは関係ないところからはじまります。 最近「カラシニコフ」という本を読んで、 2つほど「なるほど」と思うことがありました。 これはロシアのカラシニコフが設計した突撃銃AK47のことですが、 構造が簡単で頑丈なためどんな過酷な条件でも、 どんな未熟な人間でも取り扱える機関銃 ということから、アジアやアフリカの紛争国に 膨大な量が流れ込み、大きな悲劇を生んでいます。 設計者のカラシニコフがこれを作ったのは、 ナチスドイツから自国を守りたいということでしたが、 その優秀さは後年、地球上に思わぬ規模で悲劇を生んでいるのです。

○ カラシニコフ AK47 の物語から得た2つの教訓

    1. シンプル・イズ・ベスト

      1. これについては、このコラムでも度々唱えてきたことですが、 AK47はまさにその典型と言えます。 現在各国の軍隊で使われている機関銃は、 かなり精巧にできていますが、 カラシニコフはその機関部をスカスカで余裕あるものとし、 部品数も最小限で、頑丈に作りました。

      2. そのため、砂漠で少々の砂が入っても機能に問題ありませんし、 ベトナムのような湿地帯でも問題ありませんでした。 わざと靴で踏みつぶした薬莢を入れても、 何の問題もなく発射できます。 取り扱いに特別な知識や 頻繁な分解整備が要らないので、 まったくの新兵や少年兵でも取り扱えます。

      3. つまり本当に実用的で広く普及するものは、「シンプル」で 「取り扱いがやさしく」「頑丈」でなければならないのです。 ソフトウエアもまったく同じですね。

    2. 威力ある武器を一般人に与えるのは大間違い

      1. このことは、後に重大な現象を引き起こします。 すなわちアフリカなどの紛争地域に膨大な量の AK47が出回ることになります。 ところが威力ある武器を手にした人間は、 自分が偉くなったような気がするとともに、 ルールをも無視するようになります。 軍隊のように規律に守られることもないからです。

      2. 威力ある武器は必ずしっかりとルールを守るだけの 訓練と自覚を持った人間にしか与えるべきではないことを 明白にした事象と思います。 昔の武士は、武道の鍛錬とともに精神の鍛錬も 怠らなかったということですが、 昔の人は現代の人間より賢かったなと思います。

      3. 現代の「何でも公平」という流れは、 その本質の見えない人間達を大きな過ちの道へと 導いていくだろうと危惧しています。 本当に「公平」に近づこうとするなら、 物事の本質をしっかり見ることのできる人が どこかで大きな「不公平」を行なわなければならないのですが、 「何でも公平」は「大きな不公平」を生むことになります。

      4. 安易な「規制緩和」も同じと思います。 人間生活を営むには最低限の「お作法」は大切です。 私は「既成概念にとらわれず」「自由」を大切に考える人間です。 しかし「枠は何でもはずしてしまえばよい」という考えは、 急速に日本人を駄目にしているように思います。 駅のホームにべったりお尻をつけ人前で食べ物をほうばる男の子。 みるからに薄汚い若い女の子。 どう考えても日本の将来を良くすると私には思えません。

○ プログラミング能力復活

「健康ノート」は東京都医師会の地域医療連携システム「HOT project」 の中で実現したい概念のひとつです。 しかし概念だけでは、実際にはどんなものになるのか、 また実現性などについてもわかりません。 9月頃から試作版を作りはじめたことを先月書きました。

気がついてみると、 以前のように毎日少しずつ改良を加えながら 2ヶ月近くになります。 還暦を過ぎ、飯より好きなプログラミングでさえ 億劫になっていたのですが、 「おー、プログラミング能力が復活したぞ」。

頭はほぼ以前の状態に復帰したようです。 最近の頭の中にクモの巣の張ったようだった原因は、 間違いなく高脂血症による脳循環の低下 によるものだったと考えています。 軽いダイエットと筋肉トレーニングを始めて 1年半、ついに脳循環の改善効果が明らかに なったようです。 このような面では若返りを果たしたようですが、 まあ、老化は間違いなく進むものなので、 しばし引き延ばしたということでしょうね。

筋肉トレーニングの効果は大したものです。 鉄棒をやって逆三角形の体型だった高校生の頃と同様、 上半身の筋肉がついて寒さにも強くなったようです。 還暦過ぎても鍛えれば筋肉はつくんだなと実感しました。 さて、何才までこのような効果はあるんでしょうか。 おそらくどこかの時点で、 上昇カーブはなくなるはずと考えているのですが。 挑戦してみましょう。 11月半ばというのに薄掛け一枚で就寝してきましたが、 さすがにそろそろ毛布が必要かなと。

○ 健康イベント「医師と歩こう」で20Km 踏破

ついでに、もうひとつ健康ネタですみません。 11月23日の祭日に葛西臨海公園で 「医師と歩こう! 健康日本21 ウオーキングフェスタえどがわ2004」 というイベントが行なわれました。 10年以上前から一度参加してみたいと思っていましたが、 今回は東京都医師会共催ということで、 唐澤会長はじめ何人か理事が参加することになりました。

御茶の水の東京都医師会から荏原の自宅まで歩いて帰ると 10Km ちょっとです。 今回のイベントには 5Km, 7Km, 10Km, 20Km のコースがあります。 最初 10Km でエントリーしたのですが、 「この際だから未知の 20Km に挑戦してみよう。 駄目なら中途リタイアでも良いか」と 20Km に変更しました。

当日は秋晴れでしたが、そろそろ肌寒い気候です。 今までの経験から長距離歩行には体温上昇が大敵です。 ちょっと寒いかなとは思ったものの 薄手の長袖シャツに綿のベストだけにしました。 これは正解でした。 ほとんどの参加者がジャンパーやウインドーブレーカー姿でしたが、 私はこれでも中盤からうっすらと汗をかく状態で、 最後の土手上直線コースではTシャツにベスト姿となりました。

若い女性などもちらほら混じっていましたが、 8割以上は戦前に子供時代を過ごした人々とお見受けしました。 髪の真っ白な老人が足取りもさっそうと歩いておられるのには 感心しました。男女比はほぼ同じ位かな。 小学校3年くらいの男の子も2人ほど見受け、 ちょこちょこと小走りになったり寄り道しながら、 結構バテることなく最後まで付いてきたのも感心です。 当日は電車に乗り間違えてしまい15分遅れで 最後尾に近いスタートでしたが、20分ほどで最後の集団に追いつき、 前半と後半の土手上の直線ではゴボウ抜きを続け、 一人も追い抜かれることなく先頭に近い状態でゴールインできました。

実はこれにはコツがあったのです。 半年前ころから、古武術のナンバ歩きというものを研究しています。 これは言わばアメリカ・インディアンや忍者の歩き方に 似たものだろうと思いますが、 西洋式の歩き方のように体を捻ったり、 つま先で蹴ったりしない歩き方です。

まだまだ完全に習得できたとは言えませんが、 今回の歩きでは「平起平落」すなわち、 足の裏を水平に上げて水平に降ろすような歩き方、 カカトを柔らかくして後足のカカトを上げず水平に足を抜く ような歩き方を心がけました。 それには極力足に力を入れず、球が重力で自然に前に転がるような、 水が自然に流れていくような歩きです。 「岩もあり木の根もあれどさらさらと、 たださらさらと水の流るる」ですね。人生も同じです。

お陰で初めての挑戦 20Km も無事踏破できたということで、 靴がややゆるかったのか片方のカカトに軽い豆ができた程度で 翌日の足の痛みも大したことはありませんでした。 何よりも大きいのは、速度もですが、疲れが少ないことでしょう。 ナンバ歩き恐るべしです。 また研究・トレーニングの結果をレポートしたいと思います。

○ 医療情報連合大会 @ 名古屋

今年の連合大会は名古屋で開催されました。 もう10年ほど前だったでしょうか、 やはり名古屋で開催されたことがあります。 あの時は NeXT がハードウエアから撤退し、 DOS-V機上で動いていた頃です。 高橋先生が父上から借りたベンツにマシーンを載せ、 東名高速を飛ばし同乗して名古屋へ行った覚えがあります。

宿泊は名古屋東急ホテルを鈴木君がとってくれました。 ホテルの位置を Web で見ると、 名古屋駅から30分もあれば歩いて行けそうです。 結局は角ごとに信号に引っかかってしまい、40分ほどかかりました。 ホテルの入り口には見覚えがあります。 前回の連合大会もここに泊まったんですね。

会場の国際会議場も見覚えのあるものでした(当然か)

今年の連合大会も電子カルテの演題が極めて多かったようですが、 何か盛り上がりに欠けているような気が非常にしました。 いつもですと必ず座長のご指名があるのですが、 それもありませんでしたし、 私のところには評議員会の案内もありませんでした。 SeaGaia の仲間を含め、 いつも見かける顔もとても少なく思ったのですが。

都立広尾病院小児科のマックフリーク 山本康仁先生とお話できたのは収穫でした。 山本先生は Medical Mac という web site を開いておられる有名な方で、 ここを訪れればわかるように Mac の世界でも指折りのパワーユーザです。 彼も元 NeXT ユーザ会のメンバーで、 ユーザ会で何度かご一緒したことがありますが、 今度は東京都医師会の HOT project でお世話になる可能性があるのです。 まさか、ここでお会いできるとは思ってもいませんでした。

今回は初日の11月26日(金)夕方から 最終日の11月28日(日)までの参加ですが、 私の出番は最終日午前のオーガナイズドセッションと 午後のワークショップです。 どちらも東京都医師会の HOT project をテーマに指定されたので、 午前・午後と同じ話をするのはちょっと辛いものがありました。 午前中は医師会関連のメンバー、午後は MedXML 関連のメンバー 主体です。各地の地域医療連携システムの8割方が成り行かなくなっている 状況が先日の朝日新聞一面に載りましたが、 それでも頑張っている連携システムがあるのは心強いことです。 「これからはそれらが独自性を保ちつつ、 相互に手を結んで行くべき」というのが私の講演の主旨です。

土曜の夜は鈴木君と、鈴木君の施設の看護婦さん二人と ホテルの近くの沖縄料理、韓国料理をハシゴしました。 どちらも、行き当たりばったりにしては大当たりで、 料理も美味しく皆さん満足の夜だったようです。 私も美味しいお酒も呑め、気持ち良く休めました。

< 2004.10 還暦過ぎたプログラマー | 2004.12 携帯電話を替えました >