2010.01 道にふたつはなかりけり

わーくすてーしょんのあるくらし ( 203 )

2010-1 大橋克洋

わが家から拝むことのできる最後の「初日の出」

隣地に建つ みずほ銀行ビルにより、あと数カ月で この方角が まったく見えなくなります、と昨年の正月にも書きましたがもう一度だけ初日の出を見られるチャンスを与えられました。今度こそ、これで最後です。左端に見える柱が ビル建設のクレーン支柱。 今年のお正月は各地でかなりの降雪のようですが、 東京の元旦はご覧のように晴天で明けました。

日の出の数分前、東京湾水平線上の雲が金色に輝きはじめ、 やがて遠方のビル上端から後光のさしてくる姿は なかなか清々しいものです。 数十分後これとは反対方角で月に地球の影がかかり、 わずかではありますが月食があったはずです。

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恥ずかしながら明治天皇について深い知識はないのですが、 その御歌から明治天皇の偉大なお人柄がわかるような気がします。 以下は決して古臭いものではなく、 近代的・民主的・平和な現代においても 皆が心に深く留め置くべきものと思います。

国をおもふ道に二つはなかりけり

いくさのにはにたつもたたぬも

銃を取り剣を手にして 国のため戦場に向ふもあろう、また家に留まり 国の富その他公務に勉めて居るものもあろう。 花々しく戦に出て国に尽すのは実に立派で、 それに比べ国で平常の様に仕事をして居るのは不忠の様に見えるが、 決して左様ではない。戦場に立つのも家に居るのも国を思ふ道に二つはない。

「目立つ場で派手に活躍する人間だけが貢献しているのではない。 表から見えない裏方で努力する人の貢献も大切である」というような意味ですね。 「見かけは色々であっても、めざす目的はひとつ」ということでもあります。 これも色々な局面で思い当たる深い言葉です。

国のためあだなす仇はくだくとも

いつくしむべき事な忘れそ

わが国に仇なす敵は打ち砕いても、 その半面その人々に対し残忍な行為を為してはならぬ。 仁徳の心を以て慈愛を垂るゝことを忘れてはならぬぞ、の御意。

「罪を憎んで人を憎まず」と同じような意味ですね。 「国」とは、現代人の考える「社会」であり「家族」であり 「自分自身」でもあるのですが、現代人には そこに思い至らぬ人が多いようです。

よきをとり あしきをすてて外国(とつくに)に

おとらぬ国となすよしもがな

これこそ日本の真骨頂、これからの日本の生きるべき道でもあると思います。 しかし、その日本の特徴がどんどん失われつつあります。 昨年 発足した新政権は、崩壊をさらに助長しつつあるようにも思えます。 退化しつつある日本よ、しばし原点に戻っては?

○ 今年の正月やすみ

正月3日の夕方、家から南西の方角の遠景です。 昼間はよく晴れていたのですが、夕方になって雲が出てきて やや暗目の写真となりました。 墨絵のように幾重にも重なった山並みが望見されます。 こんなに山が幾重にも重なって見えることは滅多にありません。 正月で空気が澄んでいるからでしょう。 Google map で調べてみました。 丹沢山系の方角ですので、大山、丹沢山、御正体山、大室山などが見えているようです。 あの山々の向こう側に山中湖があるはず。 晴れていれば、写真の左側に富士山さらに左に箱根の山々が見える方角です。

2日と3日は お節料理を肴にお酒を傾けながら 箱根駅伝の中継を見て過ごしました。往路、箱根の登りを 東洋大の柏原がゴボウ抜きでトップへ、なかなか痛快でした。 これが勝因で復路も東洋大が余裕の優勝。 2日の夜は地元医師会の休日診療に出動。 11月の休日診療では、5時間に70名弱の患者さんを ひとりで診察しました。 十数年にわたる私の休日診療の最高記録を一挙に二倍以上更新。 新型インフルエンザ騒ぎのピークだったようです。 2日の休日診療も覚悟して出勤しましたが、 正月の休日診療は昭和大学小児科の先生と分担なので、 私の担当した大人の方は17名、通常範囲に戻ってやれやれでした。

当院は5日まで正月休みですが、 4日から東京都医師会の仕事始め、5日は東京都医師会の理事会、 結局 正月らしい休みは元旦と3日のみ。 今年はやたら忙しい年になるということでしょうか

○ 日本よ

産経新聞、石原慎太郎氏のコラム「日本よ」には 時々非常に共感するものがあります。以下は4日のコラムから、、

    • 日本人は何故かくも幼稚になってしまったのか

      • 福田和也氏の論文を引用し「幼稚な人間とは知能指数や知識の多寡の問題ではない。 何が肝心かを考えようとしない、わからない者のことだ」と書いています。 まさにそうかも知れません。

      • 私もここで何度か書いてきた「マニュアル人間を指向する現代」 への危機感にも通ずるものでしょう。「マニュアルに頼る」ということは 「自分の頭で考える能力」を消し去ってしまうことであると私は思っています。

    • 義務と責任への自覚

      • 社会に何かを求め期待することと、それに見合う税金との関わりについて 「払うべき税金も払わず行政に過剰な期待をする間違いの横行。それは甘えを 通り越した横暴といえる」「北欧のすべてを是とはしないが、消費税率25%、所得税率60% であっても国民はそれを是としている。その結果 実現されている医療・教育などの高福祉」。 さらに「現行の高福祉・低負担の仕組みが成り立ち得ないのは自明の理だが、 至上の価値、健康や命のため目的を絞って税を構えるということすら 日本の社会ではあり得ない」「国民皆保険という誇るべき制度は、皮肉なことに 患者の増長だけをもたらし、医師の努力は恩恵とはとられず、 ただの奉仕としか受け取られない荒廃の現状」と述べています。

      • 休日診療に出動して感ずること「休日診療所を受診する人には、 どうしてこうも自分本位で居丈高の人が多いのだろう」。 その 80% は「私なら自宅で安静にして様子をみるな」という軽症ばかり。「鼻水がでるので明日までに止めて欲しい」などという無体な要求もザラ。 日頃感じてきたことを都知事の立場から正鵠を射て述べていただき大きな感銘を受けました。

○ 今月の iPhone

ところで「正鵠を射る」の語源は? と調べてみました。「鵠」とは弓矢の的の真ん中にある黒点のことだそうですが さらにその元をたどると、中国ではトビのことを「正」、 白鳥を「鵠」と言い、弓矢の的には正や鵠が描かれていたのだそうです。 的をはずさないことを「正鵠を失わず」と表現し、 反対に的を得ることを「正鵠を得る」とも表現するのだそうです。 インターネットの時代になって、速攻で調べられるので勉強になりますね。

今回はパソコンの Google で検索しましたが、 出先では胸ポケットの iPhone を取り出し 「大辞林」や「i英辞郎」などで調べます。 ど忘れ(年齢とともに頻度増大)して、 顔は思い浮かんでも名前がでない有名人なども Google 検索で、すぐ出てくるので便利です。 iPhone の Google は音声対応なので、 マイク・アイコンを押し音声で指示するだけで良いので、とても便利。 単語だけですと かなりお利口に認識してくれ、誤訂正の必要もほとんどありません。 完全に私の外部脳となっています。

iPhone の派生型とも言えるであろう アップル製タブレット型が、 1月末に発表され3月から出荷されそうな噂が流れています。 iPhone と MacBook の中間に位置し、 電子ブックやネット端末として活躍しそうです。

○ MacBook Pro

モバイルに MacBook Air を使ってきました。 そろそろバッテリーがヘタってきたものの まだ十分使えるのですが、電子カルテ NOA のオープンソース化に伴ない、 テスト環境としてのマシーンの必要性も感ずるようになってきました。 そのようなことで迷った挙句、昨年暮れ MacBook Pro 13inch を AppleStore でポチっとやってしまいました。出荷は年明け10日頃の表示だったのですが、 暮れも押し迫ったころ前倒しでの嬉しい到着。

さて、その印象です。辺縁に丸みを帯び一見 Air と殆ど変わらぬ姿ですが、 横からみると当然 Air より厚みがあります。しかし初代 MacBook よりは薄いかな。 今回はじめて SSD: Solid State Drive を組み込んだものにしました。 これは大容量のフラッシュメモリーを Hard Disk の代わりにしたものです。 HD より軽いはずですが、体感的にはメリットを感じません。 しかし OS の立ち上がりが 目に見えて早くなった気がします。 容量は 128GB、いまどきのノートにしては少ないですが、 ノートブックで持ち歩くデータはテンポラリーなものだけにしていますので、 これで十分過ぎるくらい。

早速、年明けの都医理事会で使ってみました。 Air では理事会後半になるとバッテリーが不安になるので、 こまめにディスプレーを暗くしていたのですが、その必要もなさそうです (他の理事たちは電源アダプターやマウスを携えて理事会に臨みますが、 私はノートブックひとつで完結したい)。Air に比べ ダントツに安心とまでは行きませんが、 やはり減りが遅いのでちょっと安心かなと、、

厚さ以外は目立って Air と変わるところはないので 格別の感激はありません。 あ、そうそう、大きく異なる点がありました。 無線 LAN の感度が Air より格段に良くなりました。 外出時の大きなメリットかも知れません。 Air の今後ですが、NOA のテスト環境として、 また荷物の重量を最小限にしたい時のモバイル用として 生きて行くことになります。

○ iPad 登場

待ちにまった28日朝、CNET ニュースに Apple 社 Jobs CEO による発表が載っていました。 何という名前で登場するかにも興味があったのですが、 記事中の iPad の文字を iPod と読んでしまい 「あれえ、新製品の名前は?」と読み返し、 ようやく iPad であることがわかりました。 このネーミングは事前の噂にあったもののひとつですね。

外観については MacBook Air の液晶パネルだけのもの を想像、というより「そうだったら良いな」と思っていましたが 大当たりでした。 仕様についてもほぼ予想の域内でしたが Jobs のプレゼンや記事を読むと、 やはり他社のものより魅力的です。Amazon の Kindle もなかなか良くできていそうですが、Jobs の作ったものは さらに快適であること間違いないでしょう。

「バッテリーが10時間もつ」「電子ブックリーダー装備」 「フルサイズのソフトウエア・キーボード装備」 「スピーカーやマイク装備」「Wi-Fi と 3GS で接続可能」 「VGA で液晶プロジェクターなどに出力可能」などなど魅力的です。 気になっていたサイズですが、 ほぼ B5 サイズのようです。これが大きいか小さいかは 用途によると思いますが、数年前 SONY の CLIE の画面で Web のフルブラウザーに感激していたことを思えば、これで十分でしょう。 手に入れられるのは6月頃かなと思います。 待ち遠しいところです。

悩みそうなのは 3GS を載せた機種にするかどうかですが、 iPhone は手放せそうもありませんし、 Wi-Fi だけの機種で良いのかなと思っています。 維持費の安いのが一番の理由。 その他、気になるのは 「日本ではどの程度の書籍が閲覧可能になるのか」 ということ。これも結構重要です。書店で販売されている書籍を 1,2割安くした価格程度で読めると、 とても嬉しい。文庫本などはすべて読めるようにして欲しい。 その方が「衝動買い」も増えるはずと思っています。 iTunes の楽曲や iPhone アプリがそうですもんね。

iPad の CPU は以前買収したチップ・メーカーによる Apple 独自開発のものとか。なーるほど、 バッテリーが10時間もつのも、このためですね。 iPad に特化されたチップということで、 かなりのパフォーマンスが期待されます。 ということは、いずれ MacBook の CPU もこちらに替わって パフォーマンスやバッテリーのもちが格段に良くなることが期待されます。 「うーむ、MacBookPro 購入もう少し待った方がよかたのかな」 とも思いますが、これは毎度のこと、 悔やんでもきりがありません。 「買いたいときが買い時」と考えるしか、、

○ 今月の歩術

今年の冬は例年より冷えるのも事実だろうと思うのですが 「耐寒能力がちょっと落ちた?」という感じが気になります。 何故だろうと考えてみました。昨秋の耳疾患の影響でしょうか。 その後は普通に歩いているし、運動量もさして変わらないと思うのですが、 外を歩いていても何となく いつもより寒さを感じます。ここ数年「冷たい」という感覚はあっても 「寒い」という感覚は余りなくなっていたのですが。体温低下があるのだろうと思います。

あるいは血圧との関係もあるかも知れません。 今まで就寝前しか降圧剤を服用していなかったのですが、 昨秋の入院で検温と血圧測定を受けてみて、どうも効果がやや不足のようです。 就寝前に加え起床後も服用するようにしました。 血圧が正常になって体温が下がったのだとすると、それはそれで良いことなのですが、 ちょっと複雑な気持ち。

毎日の運動メニューは昨年と殆ど変わりません。 「電車の中で掴まらずに立つ」を始めたころは、 電車の揺れを予測し対応しようとしていましたが、 ようやく当初から目指してきた「無意識の境地」に近づきつつあるようです。 最近は「膝を緩め動揺を吸収する」から、 「股関節を緩め吸収する」方法に意識して換えつつあります。 ベリーダンスの柔軟な腰の動きを、武術にも取り入れてみようと考えるようになったからです。 と言って、ベリーダンスのような腰の動きをする訳ではありません。

「股関節周囲を柔らかくする」ことが、 次の重要なトレーニングと考えるようになりました。 これができると、両脚を比較的まっすぐ伸ばしたままで電車の動揺を吸収できそうです。 これが実はなかなか難しいんですね。 下肢や上体は かなり柔軟になってきたのですが、股関節周りというのは 電車の動揺に対しカチンコチンです。 「これは余裕が無いことだな」と思っています。 股関節周りに余裕をもたせるトレーニングがこれからの目標。 股関節が柔軟になれば、歩行速度にも影響があるはずで、 武術としても これが より柔軟・敏速な動きの基礎になるはずです。

耳疾患のため「寒い」と「ふらふら感」を一層強く感じます。 しかし、上記トレーニングのお陰で 歩行時にふらつくことはありません。「ふらふら感」は、 今後も治らないであろうと覚悟しています。 よく「それは辛いでしょうね」と言われるのですが、私としては むしろ「ふらふら感」を それなりに楽しんでいて、 強がりではなく 本当に何も辛いことはないのです。

○ 十訓へのレスポンス

昨年の1月このコラムに、居酒屋のコースターにあった「健康十訓」を 自分なりにアレンジした「幸せな人生を送るための十訓」を載せました。 今年の年頭に配布される東京産婦人科医会の会報へ、 副会長として年頭の言葉を依頼され、 固いことばかり書いても面白くないので、 型通りの記述の後半に この十訓を載せました。

会報が配布されて数日も経ないうち、 日本産婦人科医会で一緒に幹事をしていた清川先生から 船橋市医療センター産婦人科開設10周年記念号(1993年発行)が届きました。 会誌冒頭に「健康十訓」が載っています。 当時86歳だった清川先生のお父上の書によるものだそうです。 もらってきたコースターは無くなってしまい比較できませんが、 おそらくこちらがオリジナルと思います。

私が慈恵医大馬術部の頃、清川先生も東京医大の馬術部でした。 30年ほど前、私が日本産婦人科医会の広報委員になった時、 清川姓の幹事がいるのを知り、もしやと思ったら数十年ぶりの再会という縁の先生です。 会報に添えられたカードには、 馬術のことも書き添えられていました。私が会報に十訓を載せたのを見られ、 17年前のお父上の書を想い出し送って頂いたもの。 清川先生も数年前に大病をなさり 「今年は先生の十訓を実践したいと思います」と結ばれていました。 私の拙文に感激して頂いて、こちらも大変感激です。 この十訓にそって日々の生活を送っているつもりですが 「時々は見返してみなければな」と思っています。

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これは日々の生活で感じたことを書きとどめる私の備忘録です