1998.10 軽薄短小コンピュータ

わーくすてーしょんのあるくらし (10)

大橋克洋

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この春頃から「思い切ってPowerBook G3 を買うぞー」と心に決 めていました。ちょっと値段は張るのですが、ようやく買っても良 いかなと思うスペックのノートが Apple から出たのと、G3 搭載な ら Rhapsody の開発者バージョンが使えるだろうと思っていたから です。ところが残念ながら、これはまだ PowerBook G3 では動かな いことと、秋葉原で実際に触ってみてタッチ・パッドのあたりが結 構熱くなる感じがあるので急に気持ちが萎えてしまいました。

ノートブックと言っても CPU のスピードは申し分ないし、画面 も十分大きく、開発用マシーンとして使うことを考えていたのです が、「まだ開発に使えないのなら急いで買うこともないか」と考え て、待つことにしました(待てば待つほど強力なマシーンがより安 く手にはいるはずですし)。

しかし、ここのところ色々なところで講演を頼まれるので、携帯 用のハンデイーなマシーンが是非欲しいのです。OPENSTEP の動く SPARC互換機 Leia2 はとても良いのですが、重量3KG はちょっと 重いです(まあ PowerBook G3 もそうですが)。 最近はコンピュータに接続できるエプソンの液晶プロジェクター を担いで行脚することが多くなったので、電源アダプターなどを入 れると総重量10KGを担ぐのは、体力トレーニングには良いので すが疲れている時などはかないません。

○ SHARP の薄型ノート

SONY の VAIO にはとても魅力を感じていました。あれで OPENSTEPが動けば言うことなしなのですが、OPENSTEP 用のデイス プレイ・ドライバーがないので、現状では動いても情けない画面し か出ません(OPENSTEP は XGA 以上の解像度だと快適)。

そんなところへ新聞広告でシャープから薄型ノートが新発売に なった記事を目にしました。スペックを見るとその時点では VAIO のスペックより上です。「よーし、携帯用と割り切って大嫌いな Windows を目をつぶって使おう」と決心しました。 早速秋葉原へ走り、Mebius Note PJ を手に入れました。買って くるとまずチェックしたのは、液晶プロジェクターへスンナリ出力 できるかどうかです。「おう、よしよし」全く問題なく出力できま した。これで第一目的の持ち歩きプレゼン用は達成したわけです。

次が LAN に IP 接続して Mail や Web が使えるかのチェックで す。これも苦労せず繋がりました。何しろ Windows を本当に使う のは初めてなものですから、ファイル構成その他のみこむのに ちょっと時間をとりましたが(昨年、東芝リブレットを買ったが ちょっと使っただけで、とても使う気がせず NEXTSTEP に転装。そ の後 TRON を載せてモバイルに使っているが、キーボードが小さく 会議の議事録をこれでとるのはあきらめた)。

比較的簡単に LAN へ IP 接続で Web、e-mail、ftp、telnet が 使えるようになりました。内蔵モデムも難なくコントロールでき て、一般電話回線を通じての remote login なども OK です。 Windows の超ダサイ GUI はとても嫌いですが、それさえ目をつ ぶり(鼻をつまんで)使えば、やりたいことがそこそこに出来るの は確かに便利ではあるなあ、というのが感想です。 B5 サイズなのでアタッシュケースの半分を占めるだけで、書類 を重ねその上に傘まで入れられます。電源アダプターが平べったく なると更に嬉しいなあというのはちょっと欲ばり?

重量が1KGちょっとなので、持ち歩いても全然苦になりませ ん。これ以上小さくするとキーボードのブラインド・タッチができ なくなりますし(以前の東芝リブレットがそうだった)、画面の広 さなどからも、このあたりが実用上の小さくする限界のような気が します。勿論、用途によってはもっと小さくなりますが、私の目的 は会議の議事録をとったり、可能なら出先でもプログラミングをし たいなど、キーボードをガンガン使う用途なものですから。

とに角、ハードウエアとしての Mebius Note は大変気に入って います(肝心の OS を除けば)。

○ VAIO 級ノートで動く MacOS を

何とか Windows 臭を消そうと、オリジナルのスタイルをモデイ ファイしましたが、所詮は無駄なことですね。InternetExplorer の立ち上がり画面にはApple 社の HomePage が出るように設定しま した。おう、これはなかなか良い眺めです。アップルジャパンの原 田社長は、ある雑誌の対談で「SONY の VAIO の上でMacOS を使い たいという声もあるが、その必要はないと考えている」と述べてい ました。とんでもない見識違いで、断固抗議したいところです。そ のようなものが出れば、飛ぶように売れること間違いありません。

こうやって、薄くて軽いハイスペックのノート上で Apple の画 面を眺めていると、「これで MacOS が動けば最高だがなあ」と思 うことしきりです。 私の過去の経験からいえば、可能不可能は考えずに「こういうも のが欲しいぞー」と叫んでいると必ず実現されます。「VAIO の上 で動くOPENSTEP が欲しい」と、毎晩願うことにしましょう。 実際に使ってみて、ハードウエア的には十分満足しています。 SHARP を買って数日後に東芝から同じようなノートが出ました。

考えてみると、初代ダイナブックと昨年のリブレットなど、携帯 型に関して私は東芝製品が多いようです。東芝の作りはがっちりし ていてとても好きです(日産に吸収合併されてしまったプリンス自 動車の作りがそうでした)。この夏にかけて同じようなノートが各 社から続々とでるという話は聞いていたのですが、やはり早まって しまったかなとも思いました。しかし、よくスペックを比較してみ るとシャープ製の方が、周辺機器との接続など充実していますし、 画面も一回り大きいなど、これで良かったと自分を納得させていま す。

Mebius Note で唯一あまり好きになれないのは、銀色の外装と裏 面の作りのチャチなことです(裏側まで考えた PowerBook のデザ インを見てしまったせいもあるかも知れません。昔からお洒落は裏 地に凝ったりしましたが、こうありたいものです)。アタッシュ ケースに入れて持ち歩くうち、銀色の表面にいくつか浅い傷ができ ていますが、まあこれは実用品だからと気にしないことにしました (これが Mac や NeXT だと、もっと気になるのでしょうが。 そこが Windows 製品との違いでしょうか。道具としての愛着が薄 いということです)。

○ いよいよ液晶デイスプレイの時代へ

連載第4回目でしたか、「衝動買いの液晶デイスプレイ」という のを書きました。昨年暮れに「広告で 13.5万円のものを見つけ半 分衝動買いをしてしまったが、どう調整しても画面のチラチラがと れず目が疲れて使えないので、たまにしか使わないサーバ・マシー ン用にしてしまった」というレポートでした。

そして、その最後に「1998年は液晶デイスプレイ普及時代に 入るとほぼ確信できそうです。私の買い物はちょっと失敗でした が、これにめげずこれからデイスプレイを購入する場合はちょっと 奮発しても液晶にすべきであろうと思います」と書きました。

あれから半年、再度液晶デイスプレイに挑戦しました。これは Mebius のような携帯型ではなく、デスクトップ用の話です。 で、今度は大成功でした。前回の失敗に懲りて、今度は秋葉原の LAOX コンピュータ館で沢山の液晶デイスプレイの並んでいるとこ ろを実際に見て決めました。それも一回で決めず、機会あるごとに 何度か足を運び、熟考して決めたのが正解だったようです。

今度は成功を期したいので、やや値段は張っても評価の高い EIZO のデイスプレイにしようかと考えていたのですが、予定して いた予算より安い値段で、かなり発色の良いデイスプレイが目にと まりました。パナソニックの TXD5L31AJという機種です。ステレオ のスピーカーがついているのと、値段が17万8千円というので決 めました(EIZO のように2つの画像入力ができると、Mac, OPENSTEP 2台のコンピュータを切り替えて使えて便利なのです が、これは今回あきらめました)。

アナログ接続のもので OPENSTEP に接続して使っていますが、今 度はバッチリです。ちらつきもありませんし、明るく鮮明で文句無 しです。XGA 相当の解像度で表示できるので、OPENSEP で使っても 快適です(もう一段上の解像度が出ると更に良いのですが、そのよ うなものはまだかなり値段が高いようです)。 たった半年の間に4万程の価格差で、2回りも大きい(通常のデ イスプレイの17インチに相当)デイスプレイが手に入るようにな るとは、このあたりの技術革新と価格低下には(予想していたとは 言え)めざましいものがあります。

これで自信をもって「こらから買うなら液晶デイスプレイにしな さい」と言えます。机の上はずっと広くなりましたし、とても快適 で十分満足しています。この調子だと、おそらく今年の暮れには十 万円代前半でこの程度のものが手に入るでしょう。 スピーカー内蔵なので、DOS/V マシーンに接続しても別売のス ピーカーを用意する必要がないのも省スペースに貢献しています。

○ NEXTSTEP から OPENSEP へ

5月号で、開発環境は OPENSTEP だが、診療所は NEXTSTEP であ ると書きました。7月から診療所も OPENSTEP にグレードアップし ました。OPENSTEP の上では NEXTSTEP 上のアプリケーションがそ のまま動きますから、もっと前にグレードアップしても良かったの ですが、OPENSTEP にしてしまうと、診療の合間に NEXTSTEP で開 発したアプリケーションのメインテナンスができないからでした。

しかし、もう古いアプリケーションのメインテナンスは辞めにし ました。メインテナンスする必要があれば、ちょっと手間はかかり ますが OPENSTEP に移植して機能アップすることにしました。とい うことで、このエッセイ末尾にある私の紹介文の中の NEXTSTEP は OPENSTEP に変わります。

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