2000.10 モバイル機器あれこれ

わーくすてーしょんのあるくらし (34)

2000-10 大橋克洋

電子機器は小型化・高性能化するとともに、どんどん身近なもの になって来つつありますね。 身につけるコンピュータ(ウエアラブル・コンピュータ)などとい う言葉も見かけるようになりました。果してそれが実現されても、 コンピュータと言う呼びかたがふさわしいかどうかは別として、少 しずつそれに近い方向へ向かっているのは確かです。

私が考えるそれらの未来の姿は、データ自体を持ち歩く必要はな いが、身につける機器自体は自分のデータは勿論、世の中にある膨 大なデータを、あたかも肌身離さず持ち歩いてでもいるかのように 利用できるようになっているはずです。 今月は、そのような時代にたどり着く前の、私のモバイル(?)機 器の話題です。

○ 腕時計をめぐる変遷

先日、腕時計をどこかへ落してしまいました。私にとって腕時計 はステータスシンボルでもアクセサリーでもないので、あくまでも 実用第一と考えています。

私が欲しい機能は、当然ながら実用上十分な程度の正確さをもっ た時刻を、見やすく表示してくれること。あらかじめ設定した時刻 を教えてくれるアラーム機能。旅先や昼寝の目覚し、先方へ電話を する時刻を教えてくれるなどに使います。時報も音で知らせてくれ ると便利です。めったに使う事はありませんが、時間を測定するた めのストップウオッチ機能。最近映画館には滅多に入らなくなりま したが、暗い所でも時刻が読める機能があると便利です。装着感が ないほど軽いこと。デザインはなるべくシンプル。そして最後に、 電池を入れ換えたりする手間のいらない太陽電池。

列挙してみると、かなりの項目になりましたが、いままで使って きた腕時計は暗い所でのライトアップ機能以外はすべて備えていま した。 これを購入する前はカード型電卓の時計機能を使っていました。 これも結構便利で、もちろん腕への装着感がないのは当り前ですが 、手帳とともに胸ポケットに入れておいて、会議中や相手と会話中 にさりげなく手帳を見るようなふりをして時刻を確認できます。

会話中に時計を見るのは、相手をせかすようでいやなものです。 ところが最近は、時計機能つきのカード電卓を探しても売ってい ないのです。やっとみつけても、どういうわけか昔より厚手になっ ていたりします。 ということで、その後愛用してきた腕時計は、秋葉原でみつけた わずか3000円前後の腕時計です。安物だけに軽くて装着感が余 りないし、黒で統一されているのでそうチャチっぽくない(自分だけ がそう思っているのかも知れない)。上に挙げた条件をほとんど満た しているので、とても気に入って使っていました。

で、早速、秋葉原へ同じような腕時計を買いに行きました。しか し、どこを探してもそのようなものは「無い」のです。その類のも のはもっとギンギラしたものや厚ぼったいカサばるものばかり。 うーん、参った。前述のカード型電卓の場合も同じかも知れませ んが、このようなものは儲けがほとんどないので、作らなくなって しまったのでしょうか。

○ 携帯に腕時計も兼ねさせてしまえ

ということで、現在は携帯電話に腕時計も兼ねさせることにして います。どうせ外出する時は、i-mode の携帯を身につけているので 考えてみれば2つも同じ機能を持つことはない。無いのは滅多に使 わないストップウオッチだとか時報くらいで、ちゃんとライトアッ プもできるし、時刻がずれていそうなら 117 へ電話して確かめるこ ともできます。

そういえば、私の次女は以前から客先へ電話する時刻などを携帯 のアラームに設定して使っていたのを思いだしました。会議の時に 背広の内ポケットからちょっと携帯を出して時刻を見たりできるの で、カード電卓タイプと同じ使い勝手ができます。 先日の電子カルテ研究会の座長をやった時、机の上に携帯を置い て、その時刻を見ながら進行をしました。見ていると、他にも私と 同じように講演中に携帯で時刻を確認している演者があり、誰も同 じことを考えるんだなと思いました。 最近は枕元に充電器を置き、そこに携帯をさしてあるので、完全 に目覚し時計としても機能しています。

○ 携帯の身のおきどころ

携帯をどうやって身につけるかで、結構悩んでいます。 シャツの胸ポケットにさすのが一番使い勝手が良いのですが、胸 にはいつも手帳が入っており携帯を更に入れるのはちょっと苦しい のです。無理に入れても、斜めに傾くのが気に入りません。 上着の季節なら、内ポケットがまあまあの位置ですが、これも中 で斜めになったり横になったり、お行儀が良くありません。

尻ポケットは駄目です。カラオケ屋で落して、もらい下げに行っ たことがあります。ズボンのサイドポケットも、座る時に落しまし た。帰宅して携帯がないのに気づき、山手線の中で座った時かなあ とあきらめ気分でした。とりあえず自分の携帯へ電話してみました 。「そちらはどなたですか?」と尋ねると、あちらも「そちらはど なたですか?」。何とラッキーなことに、当日の産婦人科の勉強会 の会場で落したのでした。私はそこの役員をしているので、後日の 理事会で無事取り戻すことができました。

腰のベルトにつけるケースを買いました。これも脇では歩行時腕 が当たるし、後や前では腰かけたとき邪魔になります。 若者がやっているようにヒモをつけて、首から下げておくのが好 みなのですが、ラフな服装でないとなかなかできません。 拳銃のホルスターのように脇の下に装着でき、さりげない形のも のがあれば良いかなあなどと考えています(外国で不用意に取り出す と、打たれそうで危険かも)。 将来、身につけるコンピュータが現れても、同じ悩みを抱えるの かも知れませんね。

○ PowerBook の HD を換装

愛用の中古 PowerBook G3 には、2GB のハードデイスクしか載っ ていません。つい2年前まで使っていた OPENSTEP のマシーンは元 々OS 自体が 2GB までしかサポートしなかったので、その範囲内で やりくりしていましたから、ノートブックにこれだけあれば十分と 自分を納得させていました。

しかし、先日 MacOS X Server の OS をバージョンアップしよう としたら、おそらくインストールのために一時的に作業エリアを確 保するためでしょうが「デイスク容量が足りなくてフルインストー ルできません」と言ってきました。 ある日秋葉原で、ガラスケースの中に PowerBook用の内蔵 HD が 並んでいるのを見つけました。6GB で15,000円程度の値段がついて いるのを見つけ、衝動買いをしてしまいました。自分で HD 換装を すると保証を受けられなくなりますが、そんなこと知ったこっちゃ ない。今まで20年近いコンピュータ歴の中で、保証を受ける必要 があったことなど数えるほどしかなかったのです。

PBG3 はキーボードを簡単にパカっと開けられます。繊細なリボン ケーブルを痛めないよう慎重に作業を進めます。開けると、右側に HD が見えますが、その左側の放熱板をはずさないとHD が取り出せ ません。放熱板は普通のプラス・ネジですが、HDの方は特殊な星型 ネジなので、星型ドライバーが必要です。秋葉原のガード下のパー ツ屋をのぞいくと、色々な道具を売っている店に、大小6本位のセ ットになったやつが売っていました。1000円以下でした。 あとは新しい HD とすげ替えて、元通り慎重に閉めます。道具さ えあればとても簡単です。

○ 外した HD の再利用

外した 2GB の HD は机の引き出しに放り込んでありましたが、 PBG3 の CD drive の代りにセットできる HD ケースを売っていると のことで、昨日、秋葉原のイケショップで買ってきました。チャチ イくせに2万円を越える値段がついているのは、どういう訳なんで しょう。店員が出してきたケースを見て「それ下さい」と言ってか ら、値札を見て内心「えー、こんな値段するの!」と思ったのです が、武士に二言はない。心の揺れを見せずに財布の底をはたいてき ました。

これは簡単でした。今まで SCSI 仕様の HD ばかり扱ってきて A TA 仕様のものは初めてなので「2台目の ID 設定はどうするんだろ う」と思ったものです。しかし HD の基板と何度にらめっこをして も、ID 設定できそうな部分は見当たりません。とりあえずそのまま セットして、PB の CD drive の代りに装着し、立ち上げて見ると何 の問題もなく2台目が見えるようになり読み書きできます。めでた し、めでたし。

これで他の PBG3 のオーナー達と大きなソフトウエアの交換を気 軽にできるようになりました。電子カルテ WINE のユーザには最近 PBG3 を持つメンバーが多いのです。今までは両者をネットワーク に繋いで転送したりしていましたが、いちいち IP アドレスを設定 し、また後で元へ戻すなど面倒でもあったのです。

○ 後日談

腕時計の紛失から2か月ほどして、当院の受付の事務員さんが、 「先生、以前腕時計していましたよね。もしかして失くしたりして ません?」と言うのです。「どこかで落したらしいけど、新しいの を探しに行っても売っていないので困っているんだよ」と言うと、 「あら、あれ先生のだったんだ」。

ん???と思っていると、彼女が私の黒い腕時計を受付から持っ てきました。曰く「待合室のトイレの洗面台の脇に置いてあるのを 患者さんが持ってきてくれたんです。患者さんが忘れて行ったのだ と思って、受付で保管していたんですが、時々、ピッピと時報を鳴 らす音を聞いているうちに、そう言えば先生の腕時計もそんな音が していたような」。

めでたく愛しの腕時計に再会できたわけですが、現在その腕時計 は棚の上で明るい方を向いたまま鎮座しています。2か月離別して いる間に、私の身体は携帯に馴染んでしまっているのです :-)

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