1988.07 ワークステーションをより使いやすく

わーくすてーしょんのあるくらし (19)

1988-07 大橋克洋

< 1988.06 これがワークステーションだ | 1988.08 ワークステーションと文書作成機能 (1) >

先月号でPC-98用のイーサネット・ボードを購入し、イーサネット に繋げようとしたが、トランシーバをイーサネット・ケーブルに接 続するタップの先を接続作業中につぶしてしまい、代わりのタップ を再注文したところまで書いた。 その後新しいタップが届いたので再度挑戦したのだが、何とまた 失敗してつぶしてしまったというお粗末。

結局A社のトランシーバでなくJ社のものを注文することにし、届 いたのを見ると、こちらのトランシーバは現在 Sun に接続している やつと同様の見るからにしっかりしたもので、タップも特殊工具を 使わなくてもそれ自身にネジが切ってあって、そのままねじ込んで いけばよい。

今度は一発でうまくいった。PC-98からネットワーク通信用のツー ルである telnet を立ち上げると、画面に無事 login のメッセージ が返ってきた。万歳、いつもながらコンピュータを扱っていると出 会う感激の一瞬である。 と同時に、こういう事は経験してみないとなかなかわからない面 があって、いつも結構高い授業料を払うことになる。今回もその良 い例であった。

○ イーサネットに繋いだPC-98

さて、イーサにPC-98をつないだ使い心地はというと、極めて快適 である。単に端末としてだけ使うなら、今までのようにシリアルラ インで繋いでおいて、cterm でもあまり不便は感じなかったのだが 、とくに ftp コマンドによるファイル転送は大変速やかで、早速そ ろそろあふれそうになっている Sun のデイスクから、細かいファイ ル類を PC に移してフロッピーに保存し始めた。

机の引き出しと同様、ワークステーションのハードデイスクの中 というのも時間が経つうちに自然とゴミやいろいろなガラクタであ ふれてくる。 その多くはドキュメントやプログラムのソース類で、必ずしも常 時ハードデイスクに乗せておいてアクセスできなければならないと いうわけでもない。

最近は原稿から何からすべてワークステーションの中で書くので 、こうして書いているインフォメーションの原稿などは、まず一番 にフロッピーへ落としておくことになる。 PC-98 をイーサに繋いでエデイタなどを使ってみると、Sun の画 面よりもスクロールがずっと早いのにびっくりした。まさにシング ルプロセスの MS-DOS の世界である。これは考えてみれば当たり前 の話で、もちろんシリアルラインの 9600 bps で cterm を使うより は早いのだが、Sun のウインドーでは表示されるキャラクターを一 度ビットマップ上に展開してから標示しているのに対し、こちらは 直接キャラクター表示しているからである。

○ エプソンの PC28V

今まで使っていた NEC の PC-9801F は 640K にするためにメモリ ーカードを2枚、2 HD のフロッピーを読むため2 HD ドライブカー ド1枚、ハードデイスク用カード1枚と4つの拡張スロットすべて を使っているので、イーサネット・カードをさすにはどれか1つを 捨てなければならない。

仕方なく、2HD ドライブカードをとりあえず抜いて、イーサネッ ト・カードをさしたのだが、最近のメデイアはほとんどが 2HD で、 それを読むたびにカードを差し替えるなんて冗談じゃないよと思っ ていたところ、エプソンの互換機 PC286V の中古がみつかり、手持 ちの PC98LT を下取りにしてかなり安く手に入った。

さっそく、イーサネット・カードをさして LAN を起動してみるが 動かない。PC286Vの場合CPUが速すぎて駄目なことがあると聞いてい たので、クロックを 10メガヘルツから8メガにしてみたが駄目、ギ ャっと思って6メガに落としておそるおそる祈るような気持ちでリ セットしてみると、LAN のメッセージが出た。やれやれ。 LAN は抜きにしてパソコンの感想を述べると、286Vはなかなか良 い。CPUは速いしデイスク・アクセスも速くて静か、キーボードもカ チャカチャする98Fよりずっと良い。

今までPC-98は本体だけ純正を買い、プリンター、CRT、HDなど周 辺機器はすべて他社の方が良いと思って使ってきたが、もう本体ま で純正でない方が良くなってしまった。

○ Sun 上の MacPaint

この間、Sun の上で動くお絵描きソフトが欲しい、米国には必ず あるはずだがと書いた。ところがやはりあった。早くもそれが手に 入ってしまった。

UNIX ネットワークで流れてきた touchup という名前のもので、 Sun の上で動く MacPaint が欲しいなあ、というのを聞いた仲間が 、それありますよ、ということで早速メールで送ってくれた。 UUCP (UNIX to UNIX Copy の略。電話回線などで UNIX 同士を接 続する通信システム)で送るためにcompress し、uuencode して届い たものを解いて、さらにシェル・アーカイブとなているものをバラ バラのソースファイルに分けてコンパイルした。動かしてみると実 際には細かいところで多少違うところもないではないが、ほとんど MacPaint そのものである。

しかし、そこで作った画像データは単にファイルとして吐き出す だけで、LBP(レーザ・ビーム・プリンター)に出力するところまで はサポートされていない。Laser Shot 出力用のフィルタを勉強して 自分で書かねばならないようだ。 これもついでにどこかにないかなあ、と叫んでしまおう。

○ 電子カルテの共同開発

ライフワークとして、今まで私が個人的に行ってきた電子カルテ ・システムを数人でパートに分けて共同開発することになった。そ もそもの動機は、医師自身の手で医師が便利に使える道具を開発し たい、医療における快適なコンピュータ環境を作りたい、というと ころから始まった。

産婦人科医が私をふくめて2名、小児科医1名、内科医1名の4 名のドクターによるチームである。もとはといえば、ネットワーク で知りあった仲間で、いずれも Sun-3 の上でプログラム開発をして いて、1名は私のところと同様最近院内にイーサネットを張って、 Sun を2,3台と PC-98 をぶらさげて使っているという、いずれ劣 らぬ UNIX のハッカーぞろいである。

私は東京だが、他のメンバーは群馬、茨城、もう1名も住まいは 東京だが勤務先の病院は神奈川と離れているので、ほとんどの連絡 やデイスカッションはネットワーク上で行っている。 さあて、このような形でどうやってひとつのシステムとして動く ものを完成させるかがこれからの課題だが、腕のふるいどころと皆 張り切っている。これがうまくいけば、ソフト開発の在宅勤務サン プルともなるかも知れない。

何せわれわれプロのソフト屋さんではないもので、ソフトを揮発 するにしても、まず基本設計をじっくりやってからコーデイングに かかるというようなことはできない。とにかく、動くものを作って みないとイメージがわかない、それから次を考えていこうというマ ニアックなパターンである。 これから1年ぐらいの間に、一応のものを完成させる予定でプラ ンニングをしているところだが、その経過についてはまたこのコラ ムのネタとして提供していきたい。

< 1988.06 これがワークステーションだ | 1988.08 ワークステーションと文書作成機能 (1) >